54 / 100
続編
44 大丈夫だよ 後編
しおりを挟む
「あらあら、ようやく帰ってきたみたいね」
その言葉を聞いて僕も階段の方を見れば、「ただいまー」と言う声と共にエニス姉さんが戻ってきた。
「エニス姉さん、おかえり!」
「ただいま、コーディー。はぁ~、疲れたっ」
エニス姉さんはそう言うと持っていた荷物をどさっと床に置いた。ようやく、遠征からのお戻りだ。
「エニス、帰ってくるのが遅かったわね。ヒューゲル達は五日前に戻って来たのに」
「それが、途中寄った町で色々とあってさ。戻るのが遅くなっちまった」
エニス姉さんはふぅっと息を吐きながら言った。さすがにお疲れのようだ。
「エニス姉さん、お疲れ様でした。これから三時のおやつだけど、一緒にお茶する? それとも魔塔に戻って休む?」
「いや、お茶を一緒に取るよ。それから魔塔に戻ってゆっくりする」
「じゃあ、お茶を準備するね」
「ああ、ありがとう。コーディー」
エニス姉さんはニコッと笑って言った。しかし食堂にいる赤髪の子供に気が付いた。
「コーディー、あの子は?」
エニス姉さんは誰だろう? という顔で僕に聞いた。どうやら話を聞いていないようだと僕は察する。
「あー、エニス姉さん。あの子はドレイクなんだ。遠征の帰りの途中で若返りの泉の水を飲んじゃったみたいで……」
僕が説明するとエニス姉さんは当然声を上げた。
「な、ドレイクだとー!?」
それは僕が初めて小さいドレイクと会った時と同じ反応だった。
そして、お茶を交えながら僕はエニス姉さんにこれまでの事を説明することに――――。
◇◇
「――――まさか、ドレイクが若返るなんて」
エニス姉さんは円卓の席で、僕の隣に座るドレイクをまじまじと見ながら言った。その視線が怖かったのか、ドレイクは僕の服をぎゅっと握る。
「ドレイク、大丈夫だよ。エニス姉さん、ドレイクが怖がってる」
僕が注意するとエニス姉さんは「すまん」とすぐに謝った。しかしその後僕に問いかけた。
「だが、どうしてコーディーがドレイクの面倒を見る事になったんだ?」
「それはゴールウェイ姉さんの提案で……」
僕が答えるとエニス姉さんはムッとした顔をした。
「ゴールウェイめ、絶対楽しんで言ったな……。キラーニ、どうして止めなかったんだ」
エニス姉さんは仕事でこの場にいないゴールウェイの代わりに、キラーニ姉さんに尋ねた。
「止める、暇、なかった」
「それにしたってだな」
「まあまあ、いいじゃない。エニス」
ダブリン姉さんが宥めるように言うとエニス姉さんは「はぁ」と小さくため息を吐いた。そしてチラリとドレイクを見る。
「まあ、キラーニの話によればドレイクを預かるのもあと二日というところか……きちんとアスハの実は食べさせているんだろう?」
エニス姉さんに聞かれてゴールウェイ姉さんと同様、仕事で外に出ているドローエダ姉さんの代わりに僕は「うん」と答える。
「なら……まあ、いい」
エニス姉さんは腕を組んで、なんとか納得したようだ。
……まあ、エニス姉さんはドレイクの事を毛嫌いしているからなぁ。
僕はムスッとしたまま、おやつのドーナツを頬張るエニス姉さんを見ながら思う。しかしそんな僕の服をドレイクがくいくいっと引っ張った。
「ん? どうしたの?」
「コーディー、あと二日しか、一緒にいられないの?」
ドレイクは不安そうな顔をして僕に尋ねた。
「あー、二日しかいられないって言うか。アスハの実を食べたら、ドレイクは元の大人に戻るだろうから騎士寮に戻るってだけの話だよ。元々別々に暮らしていたからね」
僕が説明するとドレイクは不安そうな顔のまま聞いてきた。
「大人に戻ったら、今みたいに一緒にいれない?」
「んー、まあ、そうなるね」
……大人ドレイクだって生活があるし。
そう思って答えたけれど、ドレイクは僕の答えを聞いて黙り込んでしまった。
……どうしたんだろ? 大人の時の事を今のドレイクは覚えてないから、不安になったのかな?
「ドレイク?」
「うんん、なんでもない」
ドレイクはそう答えた、だから僕もそれ以上は何も声をかけなかった。
だけど、それからドレイクはキラーニ姉さんの言っていた一週間を過ぎても大人に戻らず、あっという間に十日を迎えてしまった。
◇◇
――――ドレイクが子供になってから十日目。
僕が食堂の窓から、ルーシーと魔塔の外で追いかけっこをしながら遊んでいる小さなドレイクを眺めているとダブリン姉さんが声をかけてきた。
「あらあら、どうしたの? コーディー」
「いや、ドレイクがなかなか戻らないなぁっと思って」
「そうねぇ。キラーニの話ではもういつ戻ってもおかしくないって事だけど」
ダブリン姉さんも不思議そうな顔をして呟いた。しかし僕とダブリン姉さんの話を聞いていたドローエダ姉さんが声を上げた。
「コーディー、ひとつ確認して欲しい事があるんだが」
「確認?」
僕が首を傾げながら尋ねると、ドローエダ姉さんはある事を頼んだ。
その言葉を聞いて僕も階段の方を見れば、「ただいまー」と言う声と共にエニス姉さんが戻ってきた。
「エニス姉さん、おかえり!」
「ただいま、コーディー。はぁ~、疲れたっ」
エニス姉さんはそう言うと持っていた荷物をどさっと床に置いた。ようやく、遠征からのお戻りだ。
「エニス、帰ってくるのが遅かったわね。ヒューゲル達は五日前に戻って来たのに」
「それが、途中寄った町で色々とあってさ。戻るのが遅くなっちまった」
エニス姉さんはふぅっと息を吐きながら言った。さすがにお疲れのようだ。
「エニス姉さん、お疲れ様でした。これから三時のおやつだけど、一緒にお茶する? それとも魔塔に戻って休む?」
「いや、お茶を一緒に取るよ。それから魔塔に戻ってゆっくりする」
「じゃあ、お茶を準備するね」
「ああ、ありがとう。コーディー」
エニス姉さんはニコッと笑って言った。しかし食堂にいる赤髪の子供に気が付いた。
「コーディー、あの子は?」
エニス姉さんは誰だろう? という顔で僕に聞いた。どうやら話を聞いていないようだと僕は察する。
「あー、エニス姉さん。あの子はドレイクなんだ。遠征の帰りの途中で若返りの泉の水を飲んじゃったみたいで……」
僕が説明するとエニス姉さんは当然声を上げた。
「な、ドレイクだとー!?」
それは僕が初めて小さいドレイクと会った時と同じ反応だった。
そして、お茶を交えながら僕はエニス姉さんにこれまでの事を説明することに――――。
◇◇
「――――まさか、ドレイクが若返るなんて」
エニス姉さんは円卓の席で、僕の隣に座るドレイクをまじまじと見ながら言った。その視線が怖かったのか、ドレイクは僕の服をぎゅっと握る。
「ドレイク、大丈夫だよ。エニス姉さん、ドレイクが怖がってる」
僕が注意するとエニス姉さんは「すまん」とすぐに謝った。しかしその後僕に問いかけた。
「だが、どうしてコーディーがドレイクの面倒を見る事になったんだ?」
「それはゴールウェイ姉さんの提案で……」
僕が答えるとエニス姉さんはムッとした顔をした。
「ゴールウェイめ、絶対楽しんで言ったな……。キラーニ、どうして止めなかったんだ」
エニス姉さんは仕事でこの場にいないゴールウェイの代わりに、キラーニ姉さんに尋ねた。
「止める、暇、なかった」
「それにしたってだな」
「まあまあ、いいじゃない。エニス」
ダブリン姉さんが宥めるように言うとエニス姉さんは「はぁ」と小さくため息を吐いた。そしてチラリとドレイクを見る。
「まあ、キラーニの話によればドレイクを預かるのもあと二日というところか……きちんとアスハの実は食べさせているんだろう?」
エニス姉さんに聞かれてゴールウェイ姉さんと同様、仕事で外に出ているドローエダ姉さんの代わりに僕は「うん」と答える。
「なら……まあ、いい」
エニス姉さんは腕を組んで、なんとか納得したようだ。
……まあ、エニス姉さんはドレイクの事を毛嫌いしているからなぁ。
僕はムスッとしたまま、おやつのドーナツを頬張るエニス姉さんを見ながら思う。しかしそんな僕の服をドレイクがくいくいっと引っ張った。
「ん? どうしたの?」
「コーディー、あと二日しか、一緒にいられないの?」
ドレイクは不安そうな顔をして僕に尋ねた。
「あー、二日しかいられないって言うか。アスハの実を食べたら、ドレイクは元の大人に戻るだろうから騎士寮に戻るってだけの話だよ。元々別々に暮らしていたからね」
僕が説明するとドレイクは不安そうな顔のまま聞いてきた。
「大人に戻ったら、今みたいに一緒にいれない?」
「んー、まあ、そうなるね」
……大人ドレイクだって生活があるし。
そう思って答えたけれど、ドレイクは僕の答えを聞いて黙り込んでしまった。
……どうしたんだろ? 大人の時の事を今のドレイクは覚えてないから、不安になったのかな?
「ドレイク?」
「うんん、なんでもない」
ドレイクはそう答えた、だから僕もそれ以上は何も声をかけなかった。
だけど、それからドレイクはキラーニ姉さんの言っていた一週間を過ぎても大人に戻らず、あっという間に十日を迎えてしまった。
◇◇
――――ドレイクが子供になってから十日目。
僕が食堂の窓から、ルーシーと魔塔の外で追いかけっこをしながら遊んでいる小さなドレイクを眺めているとダブリン姉さんが声をかけてきた。
「あらあら、どうしたの? コーディー」
「いや、ドレイクがなかなか戻らないなぁっと思って」
「そうねぇ。キラーニの話ではもういつ戻ってもおかしくないって事だけど」
ダブリン姉さんも不思議そうな顔をして呟いた。しかし僕とダブリン姉さんの話を聞いていたドローエダ姉さんが声を上げた。
「コーディー、ひとつ確認して欲しい事があるんだが」
「確認?」
僕が首を傾げながら尋ねると、ドローエダ姉さんはある事を頼んだ。
187
お気に入りに追加
354
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる