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短編版
閑話 魔女達の晩餐
しおりを挟む「だから抱かせろ」
「だから無理です!」
――――とコーディーがドレイクに迫られ、必死に攻防している頃。
魔塔では、五人の魔女達が円卓のテーブルを囲み、王城から運ばれた夕食を仲良く食べていた。
◇◇
「そーいえば、今日はどうしてドレイクの話をしてたのー?」
ゴールウェイは赤ワインが入ったグラスを口にしながら、思い出したように三人の魔女に尋ねた。だが、ローストビーフを食べていたエニスがすぐに嫌そうな顔を見せる。
「おい、ゴールウェイ。あいつの話をするな」
「なぁに? エニスはドレイクの事、嫌いなの?」
「ハッ、嫌いだね。あんな下半身で生きているような男」
「あら、でもいい男じゃない~?」
ゴールウェイが笑って言うとエニスはジロリと睨んだ。
「顔はいいかもしれないが、私は性に合わない」
「そうー? 顔が良ければ私は結構オッケーだけど。でも、話がズレたけど、どうしてみんなでドレイクの話をしてたの?」
ゴールウェイは話を戻して、もう一度尋ねた。すると今度はポトフを食べていたキラーニがぼそっと答える。
「コーディーが、エニスに聞いた」
「え、コーディーが? へぇー。……でもなんで急にコーディーが聞いたのかしら? 面識あるように思えないけど。そもそもタイプも違うのに」
「声、かけられたって」
「声を? ドレイクがコーディーに? ますます謎ね~」
キラーニに教えてもらったゴールウェイは不思議そうに首を傾げ、焼きたてのふわふわパンを手にしていたダブリンもその意見に同調した。
「それは私も不思議に思ったのよねぇ。一体どうしてドレイクがコーディーに声をかけたのかしら? コーディー、午後は上の空だったし。何を言われたのか……ちょっと心配ねぇ」
ダブリンは頬に手を当てて呟く。
すると今まで黙って話を聞いていたドローエダがぽつりと言った。
「ドレイクの本命がコーディーだったりしてな」
その言葉にエニスとゴールウェイが同時に大きな声を上げる。ただしエニスは怒った声で、ゴールウェイは面白そうに。
「なんだって!?」
「なんですって~!」
二人は呟いたドローエダを見つめ、そして大声を上げた二人にダブリンは注意した。
「あらあら、二人とも食事中に大きな声は駄目よ」
魔女の長であるダブリンに注意されて二人は口を噤むが、じっとドローエダを見つめる。なのでドローエダはため息交じりに。
「私はただそうかもしれないな? と思っただけだ」
そう告げたが、エニスとゴールウェイの二人の反応は見事に真っ二つだ。
「コーディーがあんな下半身野郎にッ!」
「やだ~。なにそれ! めちゃめちゃ面白いんだけど~っ!」
エニスは苛立ちを露わにし、ゴールウェイはキャッキャッと楽しんでいる。それをキラーニは眺め、ダブリンは「あらあら」と困ったように呟いた。
なので、ドローエダはシェパーズパイを食べながら密かに思った。
……まさか、先程ドレイクと偶然会って、帰ったコーディーをドレイクが追いかけていった。なんて、口が裂けても言えないな。
と―――。そしてドローエダもまさか、コーディーが今まさにドレイクに迫られ、貞操の危機に遭っているなんて予想だにしていなかった。
……まあ、本命かもしれないというのは冗談で言ったんだが。ドレイクもコーディーに何か用事だったんだろう。……ん、今日のシェパーズパイは一段とうまいな。
そう呑気に思うほどには――――。
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