インモラル・オムニバス

中城アキ

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不倫1(性描写メイン)

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 ベッドの横に座って、彼は下着だけを着て、煙草を咥えていた。私は全裸で寝転がって、彼の口から出ていく煙をぼんやりと眺める。苦い煙草の葉の匂いと、ミントのようなメンソールの匂いが混ざり合って、彼の姿が白む気がした。ラブホテルには初めて入ったが、ベッドがダブルサイズになっているだけで、普通のホテルとはそんなに変わらない。

「それ、おいしいの?」

 私が何気なく尋ねると、彼は振り向いて宙を睨む。

「別にうまいもんじゃないよ。ただ、落ち着くんだ」
「そんなもんなんだ」

 おいしいものじゃないのに、なんでそんなものを愛用しているのか、不思議だった。正直いって、この匂いは嫌いだし、服に煙が付くのも本当は嫌だった。それでも、彼から「吸っていいか?」と聞かれると、頷いていた。

「家じゃ、吸えないんだよ」

 灰皿で火をもみ消しながら彼が言う。

「嫁も吸わないし、第一娘がいるからな。だからこんな風に吸えるのはお前の前だけなんだ」

 情けなさそうに笑って、彼は私の隣に収まった。さっきの匂いが強くなって、思わず顔をしかめる。

「嫌だったか?」

 私の髪をなでて、薬指で耳を触る。そんな聞き方は、反則だった。

「わかんない」

 拗ねて、そんな返答をしてみる。私の前だけが彼にとって特別なものになっている、そんな言葉があまりに嬉しかった。だから、やめてとは絶対に言えなかった。

「そしたら、これは?」

 横向きに寝ていた私をあおむけに倒して、彼が馬乗りになる。枕元のスイッチをひねって、部屋の中が暗くなる。そのまま、彼の顔が近づいてきて、唇が重なる。彼の舌が口を割って、私のそれと絡み合う。
 メンソール煙草のフレーバーが、私の粘膜を通して侵入する。苦手なその香りを私の中身が求めている。理性よりももっといとおしい何かが、彼のすべてを受け入れたがっている。
 口の周りが、こぼれだす唾液だらけになる。それを彼はなめとって、私の中に返してく。呼吸すら忘れる激しいディープキスに、彼のこと以外のことを忘れていく。

 離れる2人の間には体液の糸がひかれる。
 彼の手が私の秘所を優しく触れる。さっきまでの情事とは違う、新しい愛液が彼のものを受け入れたがっている。クリトリスを避けるように走らされる彼の指が恨めしいほどに性欲を高める。

「いじわる、しないで?」

 彼には、私の全部を知られている。私が一番感じる部分、好きなセックス、好きなにおい、今までの彼氏としてきたこと。女としての全部を、彼は知っている。だから、こんなことをされたら、我慢ができないことも知っていた。

「ちょっと早いけど、入れようか?」

 枕の下に入れてあるゴムを彼は取り出そうとして、私は首を横に振る。

「私、ピル飲んでるから。それにあなただから、そのままして?」

 彼のパートナーに子供ができてから、夫婦間の生のセックスはないという。だからこそ、私の特別が欲しい。彼のためだけに、してほしかった。

「……いいんだな?」

 彼の目が変わった気がした。いとおしいものを見る視線から、獲物をかりとるような、そんな視線に。私は「いいよ。私が、したいから」という。その言葉に彼は私の手首を痛いくらいに掴んで答える。
 彼の亀頭を、私の陰核が感じる。カウパーが私の体に電流を走らせて、膣口から、ゆっくりと彼の陰茎が侵略していく。

「あ……んっ、ん、は……ぁっ!」

 甘い喘ぎ声が止まらない。彼のすべてを、よりリアルに感じている気がする。生とゴムの違いは分からない。だが、それ以上に、彼も、世界で一番愛している人を直接受け入れられたことに、脳内は歓喜の声をあげている。

「最高に、気持ちいいよ」

 彼の吐息とともに、耳が燃え上がったように熱くなる。もう2度と彼を離したくないと体が訴えるようにヴァギナは彼のペニスを強く締め付ける。
 彼自身が私から抜かれるたびに、彼のカリが私の中身を掻きむしって、広がるような開放感で小さな絶頂を迎える。奥を付いて、子宮口に我慢汁が浸透してくる。

「ゃっ! ん、んっ! ああ!」

 つながっているところから、とめどない快感が流れ込んでくる。彼と1つになりたい、どれだけ密着しても離れていると感じる。キスによって口が塞がれても、恐ろしいくらいに激しい気持ちよさは、喘ぎ声を止めさせてくれない。
 体が弓なりになって、彼のものをもっと深く求めようと腰が彼に近づいていく。絶頂の前触れのように、視界が彼だけになる。

「いいよ、イって?」

 一番私が弱い場所、そこを執拗に突き上げる。もう、止まらない。力が抜けて、何かが広がっていく気がする。幸せしかない場所に連れていかれる。体全体が痙攣して空に浮かんでいく。それを彼は目一杯抱きしめて、キスをする。

 この瞬間はいつまでも続いてほしい。終わることなんて、もう考えられない。彼からしかもらえない最高のプレゼントが私の中にある。

 「愛してる」と言われた気がする。この言葉は、絶対に嘘じゃない。
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