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炎の被害者
2話 探偵への依頼は少女によって
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少女が目を覚ますと、そこは見覚えのない天井だった、周りを見回すと事務所らしき場所のソファーに寝かされているらしかった。
起き上がろうとふと体を見ると傷は治療されていて、痛みも引いてきている。
「おっ、やっと起きたか。
かれこれ半日くらい寝てたからな、心配してたんだぞ?」
そう言いながら、見知らぬ男が部屋に入ってくる。
いや、見知らぬ男では無い。先程自分を助けてくれた男だと少女は思い出す。
「あ、ありがとうございます。私を助けてくださって。どうお礼したら良いか...」
「あー、いいよそういうのは」
男はメアリーの正面に座り続けた。
その男はジャケットにカーゴパンツという、3年ほど前から新しく出た服を着ていた。
「俺もアイツらに迷惑してたし、アンタを助けたんじゃない、ただ偶然そこにいたから治療しただけさ」
「分かりました...」
そう言うと、少女は男に付いて聞き出す。
「あの、もう一度貴方のお名前を聞かせてくれませんか?それと...それでここは何処なのでしょうか...」
少女の問いに、男は答える。
「オーケー、まずは改めて自己紹介からだな。俺はレイだ、よろしく。ここは俺が寝泊まりしてる自宅兼事務所だな」
「事務所?」
「ああ、俺は普段探偵業を営んでいてな。ここで猫探しやら不倫の調査、後は人探しなんかを行ってる」
「人探し...」
訳ありそうに呟く少女を尻目に、レイと名乗った男は強引に話を進めた。
「それで、次はアンタの番だ。何て名前なんだ?」
レイの問いに、少女は恐る恐る答える。
「わ、私はメアリー・パウエルと申します」
「パウエルつったら...そこそこいい所のお嬢様じゃないのか?何であんな状態に...」
メアリーは俯き、あまり言いたくなさそうにしている。
「...ま、誰にだって事情はあるか」
少し話を進めるようにメアリーは問いかけた。
「あの...まだ聞きたい事があるのですが...」
「ん?」
「何故......貴方はそんなにも強いのですか?彼らは傭兵団に属する人達、簡単にやられるとは思えません」
「ん?あー...それはまあ...企業秘密って事で」
「秘密...ですか...でも、私は貴方のような人にお願いがあるんです」
「お願い?」
「お願いというより...依頼でしょうか...」
「...聞こうか」
「私...父に先程の襲撃者の親玉を探し...」
「悪いが、面倒な依頼なら受けるつもりはない」
レイは言葉を遮るように彼女の頼みを断る。
「な、何故です!?」
「まぁ...その...理由はいろいろあるが...そもそも君に報酬を払えるようには見えない。それに俺はもう面倒な依頼を受けたくないんだ」
「そん...な...」
メアリーは顔が青ざめていき、あせるように捲し立てる。
「いえ......申し訳ございません、忘れてください」
そう言い、押し黙ってしまう。
沈黙とおもい空気が二人を包むなか、不意にレイはメアリーの持つ懐中電灯に気付く。
「その懐中時計...竜頭が壊れてるのか」
「ええ...ハンドメイドの珍しい物だと父が言っておりました、大切なものだったのですが...」
「その模様、家紋か?なんだっけか...どっかで見た事ある植物なんだが...」
「カポック、という植物らしいです。」
「カポック、ねぇ...」
また二人の間には沈黙が流れ、何を話せばいいか分からなくなっていた。
そんな状態に耐えられず、レイが思い出したかのように口を開く。
「あっそうだ、ちょっと待ってろ」
「...?」
そう言うとレイはソファから立ち上がり、部屋の中にある戸棚から大きめの皿を取り出し、オーブンから料理を引き出す。
「アンタ腹が減ってると思ってな、久しぶりにパイを焼いてみたんだ、食うか?」
目の前に出された大きなアップルパイを前に、涙を流しそうになるメアリー。
そんな彼女の様子を見て、レイは不安そうに聞く。
「な、何か不味かったか?もしかしてリンゴアレルギーとか...」
メアリーは口を開く。
「いえ...違います...昔、何度も母が作ってくれたのを思い出して...」
目から零れ落ちそうな涙を堪えながら、メアリーはアップルパイを口に運ぶ。
「美味しい...美味しいです...とても...」
そんなメアリーの様子を見て、レイは覚悟を決めたように尋ねる。
「何があったんだ?」
「受けてくれるのですか!?」
「別に受けるといったわけじゃない、ただ話を聞くだけだ...そうお父さんにも言っておいてく...どうした? そんな暗い顔して......」
「父は、死にました...母も屋敷のみんなも......すごく優しい両親だったのですが...傭兵に、どうしたんですか?」
メアリーが顔をあげるとレイは目をうつむいて頭を抱え明らかに動揺していた。
「ひとつ聞く、お前の父親の名前はサクマ・パウエルで間違いないな」
「ええ、そうですけど、なぜ父の名を」
するとレイの目つきが変わり。
「メアリーさんだっけ、依頼は襲撃者の依頼主の特定で良いのか?」
「は、はい。私は、父と母の命を奪った方々が許せないのです」
彼女の言葉を聞き、レイは真剣な顔になり言った。
「分かった、依頼を受けよう」
「えっ、良いんですか?」
おもいもしなかった返答に驚くメアリー。
「まずは事情聴取だ。何が起こったか聞かせてくれるか?」
起き上がろうとふと体を見ると傷は治療されていて、痛みも引いてきている。
「おっ、やっと起きたか。
かれこれ半日くらい寝てたからな、心配してたんだぞ?」
そう言いながら、見知らぬ男が部屋に入ってくる。
いや、見知らぬ男では無い。先程自分を助けてくれた男だと少女は思い出す。
「あ、ありがとうございます。私を助けてくださって。どうお礼したら良いか...」
「あー、いいよそういうのは」
男はメアリーの正面に座り続けた。
その男はジャケットにカーゴパンツという、3年ほど前から新しく出た服を着ていた。
「俺もアイツらに迷惑してたし、アンタを助けたんじゃない、ただ偶然そこにいたから治療しただけさ」
「分かりました...」
そう言うと、少女は男に付いて聞き出す。
「あの、もう一度貴方のお名前を聞かせてくれませんか?それと...それでここは何処なのでしょうか...」
少女の問いに、男は答える。
「オーケー、まずは改めて自己紹介からだな。俺はレイだ、よろしく。ここは俺が寝泊まりしてる自宅兼事務所だな」
「事務所?」
「ああ、俺は普段探偵業を営んでいてな。ここで猫探しやら不倫の調査、後は人探しなんかを行ってる」
「人探し...」
訳ありそうに呟く少女を尻目に、レイと名乗った男は強引に話を進めた。
「それで、次はアンタの番だ。何て名前なんだ?」
レイの問いに、少女は恐る恐る答える。
「わ、私はメアリー・パウエルと申します」
「パウエルつったら...そこそこいい所のお嬢様じゃないのか?何であんな状態に...」
メアリーは俯き、あまり言いたくなさそうにしている。
「...ま、誰にだって事情はあるか」
少し話を進めるようにメアリーは問いかけた。
「あの...まだ聞きたい事があるのですが...」
「ん?」
「何故......貴方はそんなにも強いのですか?彼らは傭兵団に属する人達、簡単にやられるとは思えません」
「ん?あー...それはまあ...企業秘密って事で」
「秘密...ですか...でも、私は貴方のような人にお願いがあるんです」
「お願い?」
「お願いというより...依頼でしょうか...」
「...聞こうか」
「私...父に先程の襲撃者の親玉を探し...」
「悪いが、面倒な依頼なら受けるつもりはない」
レイは言葉を遮るように彼女の頼みを断る。
「な、何故です!?」
「まぁ...その...理由はいろいろあるが...そもそも君に報酬を払えるようには見えない。それに俺はもう面倒な依頼を受けたくないんだ」
「そん...な...」
メアリーは顔が青ざめていき、あせるように捲し立てる。
「いえ......申し訳ございません、忘れてください」
そう言い、押し黙ってしまう。
沈黙とおもい空気が二人を包むなか、不意にレイはメアリーの持つ懐中電灯に気付く。
「その懐中時計...竜頭が壊れてるのか」
「ええ...ハンドメイドの珍しい物だと父が言っておりました、大切なものだったのですが...」
「その模様、家紋か?なんだっけか...どっかで見た事ある植物なんだが...」
「カポック、という植物らしいです。」
「カポック、ねぇ...」
また二人の間には沈黙が流れ、何を話せばいいか分からなくなっていた。
そんな状態に耐えられず、レイが思い出したかのように口を開く。
「あっそうだ、ちょっと待ってろ」
「...?」
そう言うとレイはソファから立ち上がり、部屋の中にある戸棚から大きめの皿を取り出し、オーブンから料理を引き出す。
「アンタ腹が減ってると思ってな、久しぶりにパイを焼いてみたんだ、食うか?」
目の前に出された大きなアップルパイを前に、涙を流しそうになるメアリー。
そんな彼女の様子を見て、レイは不安そうに聞く。
「な、何か不味かったか?もしかしてリンゴアレルギーとか...」
メアリーは口を開く。
「いえ...違います...昔、何度も母が作ってくれたのを思い出して...」
目から零れ落ちそうな涙を堪えながら、メアリーはアップルパイを口に運ぶ。
「美味しい...美味しいです...とても...」
そんなメアリーの様子を見て、レイは覚悟を決めたように尋ねる。
「何があったんだ?」
「受けてくれるのですか!?」
「別に受けるといったわけじゃない、ただ話を聞くだけだ...そうお父さんにも言っておいてく...どうした? そんな暗い顔して......」
「父は、死にました...母も屋敷のみんなも......すごく優しい両親だったのですが...傭兵に、どうしたんですか?」
メアリーが顔をあげるとレイは目をうつむいて頭を抱え明らかに動揺していた。
「ひとつ聞く、お前の父親の名前はサクマ・パウエルで間違いないな」
「ええ、そうですけど、なぜ父の名を」
するとレイの目つきが変わり。
「メアリーさんだっけ、依頼は襲撃者の依頼主の特定で良いのか?」
「は、はい。私は、父と母の命を奪った方々が許せないのです」
彼女の言葉を聞き、レイは真剣な顔になり言った。
「分かった、依頼を受けよう」
「えっ、良いんですか?」
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