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目が覚めたら、信じられないことに誰かの膝の上で寝ていた。
誰……?
下から見えるのは綺麗なお顔。
見覚えがあるけれど、どこで見たのだろう?
そのとき不意に私を膝の上に乗せていた男性がこちらに視線を落とした。
「お目覚めになられましたか? 私はあなたが目覚めるのを待ってました」
その顔を見てハッと思う。
彼は、私が夜遅くまでプレイしていたゲームの王子様だ。
まさか私は、ゲームの主人公のお姫様になったのだろうか。
途端に胸がワクワクしてくる。
こちらに近づく美しい顔を眺めていると、王子はふわりと笑った。
「大丈夫ですよ、サニア姫。私が責任をもって国へお送りしますので」
サニア姫……私は自分をそう呼ぶ王子の声に驚愕した。
というのも、サニア姫はゲームの主人公のお姫様の名前じゃない。
敵役の悪役令嬢の名前だからだ。
どうしてサニア姫が隣国の王子の国に紛れ込んでるかよりも、私自身が今、悪役令嬢としてここにいることの方が重大だ。
とにかく、何としてでももとの世界に戻らなきゃ!
「あ、あの、王子、失礼します」
王子との甘い妄想に浸るわけにもいかず、私は王子の胸板を押して王子の腕の中から抜け出した。
何でこんなに焦っているのかというと、ゲーム内のサニア姫の行く末は罪を問われて殺されてしまうからだ。
さすがにまだ死にたくない。
「サニア姫、どこへ?」
慌てたように私を呼び止める声が聞こえたけれど、私は後ろを振り向かずに走った。
建物の外に出ると、芝生に覆われた広い庭に出た。
どうやらここは、王子のお城のようだ。何となくそんな気はしていたけれど。
思わず右往左往していると、不意に腕をつかまれた。
「サニア姫!」
王子だ。
どうして……!
「どうして私から逃げるのですか」
どうしてって、このまま王子といると殺されるからだ。
王子は私を熱い瞳で見つめたまま、手を離してくれそうにない。
「好きです……」
え。
「私はサニア姫が好きです」
ええええー?
そんなの聞いてない!
けれど、元々王子はゲームの主人公のことを好きだったわけでなく、選択肢を上手く駆使して気を引かせるゲームだったことを考えれば、主人公と恋に落ちる前の王子が実はサニア姫が好きだったとしても何もおかしくない。
「えっと」
さて、どうしよう。
断って逃げなければと思うのに、私自身は主人公になりきって王子に気持ちが傾いていたから逃げられそうにない。
近づく王子の顔にも抵抗することができず、気づけば私は王子と唇を重ねていた。
誰……?
下から見えるのは綺麗なお顔。
見覚えがあるけれど、どこで見たのだろう?
そのとき不意に私を膝の上に乗せていた男性がこちらに視線を落とした。
「お目覚めになられましたか? 私はあなたが目覚めるのを待ってました」
その顔を見てハッと思う。
彼は、私が夜遅くまでプレイしていたゲームの王子様だ。
まさか私は、ゲームの主人公のお姫様になったのだろうか。
途端に胸がワクワクしてくる。
こちらに近づく美しい顔を眺めていると、王子はふわりと笑った。
「大丈夫ですよ、サニア姫。私が責任をもって国へお送りしますので」
サニア姫……私は自分をそう呼ぶ王子の声に驚愕した。
というのも、サニア姫はゲームの主人公のお姫様の名前じゃない。
敵役の悪役令嬢の名前だからだ。
どうしてサニア姫が隣国の王子の国に紛れ込んでるかよりも、私自身が今、悪役令嬢としてここにいることの方が重大だ。
とにかく、何としてでももとの世界に戻らなきゃ!
「あ、あの、王子、失礼します」
王子との甘い妄想に浸るわけにもいかず、私は王子の胸板を押して王子の腕の中から抜け出した。
何でこんなに焦っているのかというと、ゲーム内のサニア姫の行く末は罪を問われて殺されてしまうからだ。
さすがにまだ死にたくない。
「サニア姫、どこへ?」
慌てたように私を呼び止める声が聞こえたけれど、私は後ろを振り向かずに走った。
建物の外に出ると、芝生に覆われた広い庭に出た。
どうやらここは、王子のお城のようだ。何となくそんな気はしていたけれど。
思わず右往左往していると、不意に腕をつかまれた。
「サニア姫!」
王子だ。
どうして……!
「どうして私から逃げるのですか」
どうしてって、このまま王子といると殺されるからだ。
王子は私を熱い瞳で見つめたまま、手を離してくれそうにない。
「好きです……」
え。
「私はサニア姫が好きです」
ええええー?
そんなの聞いてない!
けれど、元々王子はゲームの主人公のことを好きだったわけでなく、選択肢を上手く駆使して気を引かせるゲームだったことを考えれば、主人公と恋に落ちる前の王子が実はサニア姫が好きだったとしても何もおかしくない。
「えっと」
さて、どうしよう。
断って逃げなければと思うのに、私自身は主人公になりきって王子に気持ちが傾いていたから逃げられそうにない。
近づく王子の顔にも抵抗することができず、気づけば私は王子と唇を重ねていた。
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