2 / 4
2
しおりを挟む
ジャックの浮気現場といっても、詳しいことまで教えてもらえたわではない。
だから私はジャックのあとをつけることにしたのだ。
いわゆる尾行というやつだ。
その日、ジャックが街に出かけたあと、私はいつも着ている服から知り合いから借りた町娘の服に着替える。
そしてジャックの働く商店の方へ出向いだ。
ジャックは商店で絹屋を営んでいる。
私は目当ての商店に着くと、物陰からその商店の中をうかがっていた。
商店の中は人はおらず、ジャックは暇そうにしていた。
ちゃんと仕事をしているのかしら……?
思わずそんなことを思うが、尾行している自分が言えることではないだろう。
しばらくしてやっと客が入った。けれど、私は店内に入った人物の姿を見て絶句した。
その人物とは、紛れもなくジャックの幼馴染みのシェリーだったからだ。
どうして……!
ジャックとシェリーが外でも顔を合わせているのは知っているが、やっぱりちょっと異常なのではないだろうか。
めまいを覚えそうになりながら、私はこっそり店内に入る。
シェリーがお店に入ってわりとすぐに店内に忍び込んだはずなのに、そこにシェリーの姿はなかった。
どこに行ったのだろう。
出口がひとつしかないお店。今の間にシェリーが店を出ていったということはまずないだろう。
キョロキョロと物陰に隠れて店内を見回していると、奥の方からシェリーの声が微かに聞こえてきた。
それは、店内の奥にあるジャックの休憩所だ。
そこでお店の事務作業をしたり食料を取ったりしているらしい。
忙しくて泊まりこむときはここで寝泊まりしているのだと聞いたことがある。
中で話でもしているのだろうか?
「ん……っ、あ……っ」
けれど近づいて聞こえた声に、思わず身が強ばった。
違う。
これは、決定的な瞬間だと思った。
もう声だけで二人が何をしているかなんて明白だった。確認なんていらないのに確認してしまったのは、私はどこかでジャックを信じていたからなのかもしれない。
「ああっ、ジャック」
「シェリー、愛してる」
いくら浮気してるかもと事前に聞かされていたとはいえ、誰が想像ついただろう。
自分の旦那が、彼の幼馴染みと裸で抱き合っているだなんて……。
しかも愛してるって……。
反吐が出そうだ。
結局、ジャックにとって私との結婚は家同士が決めたからで、ラブラブな新婚生活はただの茶番に過ぎなかった。
この日、私の中で何かが切れた。
だから私はジャックのあとをつけることにしたのだ。
いわゆる尾行というやつだ。
その日、ジャックが街に出かけたあと、私はいつも着ている服から知り合いから借りた町娘の服に着替える。
そしてジャックの働く商店の方へ出向いだ。
ジャックは商店で絹屋を営んでいる。
私は目当ての商店に着くと、物陰からその商店の中をうかがっていた。
商店の中は人はおらず、ジャックは暇そうにしていた。
ちゃんと仕事をしているのかしら……?
思わずそんなことを思うが、尾行している自分が言えることではないだろう。
しばらくしてやっと客が入った。けれど、私は店内に入った人物の姿を見て絶句した。
その人物とは、紛れもなくジャックの幼馴染みのシェリーだったからだ。
どうして……!
ジャックとシェリーが外でも顔を合わせているのは知っているが、やっぱりちょっと異常なのではないだろうか。
めまいを覚えそうになりながら、私はこっそり店内に入る。
シェリーがお店に入ってわりとすぐに店内に忍び込んだはずなのに、そこにシェリーの姿はなかった。
どこに行ったのだろう。
出口がひとつしかないお店。今の間にシェリーが店を出ていったということはまずないだろう。
キョロキョロと物陰に隠れて店内を見回していると、奥の方からシェリーの声が微かに聞こえてきた。
それは、店内の奥にあるジャックの休憩所だ。
そこでお店の事務作業をしたり食料を取ったりしているらしい。
忙しくて泊まりこむときはここで寝泊まりしているのだと聞いたことがある。
中で話でもしているのだろうか?
「ん……っ、あ……っ」
けれど近づいて聞こえた声に、思わず身が強ばった。
違う。
これは、決定的な瞬間だと思った。
もう声だけで二人が何をしているかなんて明白だった。確認なんていらないのに確認してしまったのは、私はどこかでジャックを信じていたからなのかもしれない。
「ああっ、ジャック」
「シェリー、愛してる」
いくら浮気してるかもと事前に聞かされていたとはいえ、誰が想像ついただろう。
自分の旦那が、彼の幼馴染みと裸で抱き合っているだなんて……。
しかも愛してるって……。
反吐が出そうだ。
結局、ジャックにとって私との結婚は家同士が決めたからで、ラブラブな新婚生活はただの茶番に過ぎなかった。
この日、私の中で何かが切れた。
556
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説

あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話

父の後妻に婚約者を盗られたようです。
和泉 凪紗
恋愛
男爵令嬢のアルティナは跡取り娘。素敵な婚約者もいて結婚を待ち遠しく思っている。婚約者のユーシスは最近忙しいとあまり会いに来てくれなくなってしまった。たまに届く手紙を楽しみに待つ日々だ。
そんなある日、父親に弟か妹ができたと嬉しそうに告げられる。父親と後妻の間に子供ができたらしい。
お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。


記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる