暗殺目的で結婚に挑んだ王女は、敵国の王子に溺愛されました。

香取鞠里

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「あ、あったわ……!」

 無事に中腹にたどり着いた私は、黄金の花をすぐに見つけられた。
 それを手に取るが、問題はここからふもとまで降りる方法だ。

 ロープ、足りるかなぁ?

 何となく不安に思いながら、けれどここで立ち往生していても仕方ない。
 服はすでにボロボロになっているが、ふもとに降りたら私の仮住まいの部屋が近いし、どうにかなるかな。

 楽観的に構えて再び崖を下る。
 しかし、楽観的過ぎた私は、中腹とふもとの間で宙ぶらりん状態になってしまったのだ。

 縄を切るには位置が高い。けれど、このままぶら下がっているのも限界があるだろう。
 もし崖の上の木が限界を迎えたら、侍女にも危害が加わるかもしれない。
 けど……。


「アリー!!」

 そのとき、下から私を呼ぶ声が聞こえた。
 クラウドだ。

「今すぐ応援を呼ぶ」


 けれどそのとき、ブチッと音を立てて私を宙に留めていたロープが切れた。


「───っ」


 ズザザザっと音を立てて、私は地上に落ちた。うっすら目を開けると、近くにクラウドの姿が見えた。まさか、数メートルの高さから落ちた私を受け止めてくれたのだろうか。


 クラウドは大丈夫だったのか、少し痛そうな顔をしていたものの、私を見るなりすぐに怒鳴った。


「バカかお前は! 何も考えずに崖を下るなんて、死ぬ気か!?」

「何よ! この花を取ってこいと言ったのはあなたじゃない!」

 私は何とか死守していた黄金の花をクラウドの前につき出す。


「もう、伝わったから。証明してくれてありがとう……」


 私はきつくクラウドに抱きしめられた。
 その後交わしたキスは、これまでのクラウドとのキスの中で一番甘くて優しかった。



 翌日、無事に私とクラウドの挙式が行われた。母親からは後日私への謝罪とお祝い、そして気持ちは複雑ではあるが私たちの結婚への理解を示した文書が届いた。

 これからは、クラウドとともに両国の隔たりを解消して、より良い関係を築けるように努めていきたい。


 ●おしまい●
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