上 下
1 / 2

しおりを挟む

「エリー様、結婚式のご希望はございますか?」

 目の前でニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべるのは、私の婚約者になってしまったヘンリーだ。

 家柄から、父が勝手に見つけてきてしまったお相手だ。
 
 育ちは良いのだろうけれと、正直生理的に受け付けない。


「何でも良いですわ」

 私が適当に返すものの、ヘンリーはそんな私の様子をまるで気にしていないようだ。

 吐き気のするような笑みを崩さずに、結婚式についてああだこうだと一人で勝手に話を進めている。


「結婚、か……」


 本当なら、自分が選んだ心から愛せる人と結ばれたかった。

 こんな私でも、そんな少女のような気持ちを持っていたことに驚く。


「エリー様、何か言いましたか?」

「いえ、何も……」


 このままこいつと結婚して、人生が終わる。

 そんなのごめんだ。

 でも父の立場上、私からこの婚約を破棄することはできない。

 だから何としてでもヘンリーにこの婚約を破棄にさせるようにうごかないといけないのに、ヘンリーは私がどんな態度を取ろうと、決して婚約を破棄しようとしないのだ。


 もうこうなれば、姿を眩ますしかないのか……。


 父には悪いけど、もう逃げ出したくてたまらなかった。




 その日の夜。私はお城を逃げ出すことに成功した。

 逃げ出せば、私からヘンリーを拒む姿勢を見せることなくこの婚約を破棄できるだろうと思ったのだ。

 お父様、お母様、ごめんなさい。
 でも私には無理です!!!


 お城の見張りをすり抜けて、外の世界に出る。
 
 その後、どうしようなんて考えていなかったけど、何とかなるだろう。

 私はこうして自由の道へと一歩踏み出したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

暗殺目的で結婚に挑んだ王女は、敵国の王子に溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
敵国の王クラウドとの政略結婚が決まった王女アリー。 しかしから母から下されたのは、クラウド暗殺指令だった。 というのも、アリーの父親はクラウドの手下によって殺されていたからだ。 憂鬱な気持ちのまま、けど、やれば自国に帰れると自分に言い聞かせてクラウドの元へ。 しかし、予想に反して、アリーはクラウドに溺愛されてしまい!?

公爵令嬢、独立目指して頑張ります!

下菊みこと
恋愛
恋を叶えるために頑張るお話。 アルファポリス様でも投稿しています。

異世界で目覚めたら、王子に溺愛される悪役令嬢になってました。

香取鞠里
恋愛
異世界で目覚めたら、王子に溺愛される悪役令嬢になってました。

婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします

tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。 だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。 「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」 悪役令嬢っぷりを発揮します!!!

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?【カイン王子視点】

空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。 身に覚えのない罪状をつらつらと挙げ連ねられて、第一王子に婚約破棄された『精霊のいとし子』アリシア・デ・メルシスは、第二王子であるカイン王子に求婚された。 そこに至るまでのカイン王子の話。 『まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/368147631/886540222)のカイン王子視点です。 + + + + + + この話の本編と続編(書き下ろし)を収録予定(この別視点は入れるか迷い中)の同人誌(短編集)発行予定です。 購入希望アンケートをとっているので、ご興味ある方は回答してやってください。 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScCXESJ67aAygKASKjiLIz3aEvXb0eN9FzwHQuxXavT6uiuwg/viewform?usp=sf_link

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

処理中です...