婚約者は幼馴染みを選ぶようです。

香取鞠里

文字の大きさ
上 下
7 / 7

しおりを挟む
 ハクトに執着されるだけでもうんざりなのに、そんな中、シリアまで突撃してきた。

 もう、私の心は折れかけていた。

 せめてもの救いは、ジャックが味方で居てくれることだ。

 そんなある日のこと、毎日のように続いていたハクトの訪問がなくなった。

 今日だけかもしれないし、違うかもしれない。

 何となく不安に思っていると、ジャックが現れた。


「エリー!」


 馬に乗って現れたジャックは、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。


「ジャック! どうしたの?」

「僕と結婚してくれ」

「ええっ!?」


 嬉しい……! けれど、話の成り行きについていけない。


「僕の父に兄のことを相談していたんだ。その時に僕とエリーのことも話した」

「え……」

「兄のエリーへの問題行動を把握した父は、僕に伯爵家の継承権を与えたんだ。そして、僕とエリーが恋仲にあると知った父は、エリーのお父様と話し合った結果、僕とエリーの婚約を認めている」

「えええ!?」


 いつの間に……!
 私がお父様に相談できないと悩んでいた間に、ジャックは着々と事を進めてくれていたんだ!


「もしかして、迷惑だったかな?」

「そんなことない。嬉しい……!」


 けど、ジャックの兄はハクトだ。
 ジャックと結婚した後、また何か問題がおこるのだろうか。

 嬉しい反面、少し心配になっていると、まるで私の心配を払拭するようにジャックは私に告げた。


「兄さんのことなら心配要らないよ。今回のことで、あいつは両親に勘当されて屋敷を追い出されて、今頃遠くの島に修行の旅に連れていかれたから」

「え……」

「シリアも。ハクトに執着していることが婚約者にバレて婚約破棄されて家を追い出されたらしいよ」

「そうなんだ……」

 思わずホッとする。
 せっかくのジャックとの結婚が叶っても、近くにハクトやシリアが居たり、不安を抱えて生活したりするのは嫌だったから。

「じゃあ、エリー、僕と結婚してくれる?」

「もちろん!」

 何て幸せなのだろう。

 私とジャックは固く抱き合った。


 後日談として、家を追い出されたシリアは島に修行に出たハクトを一人で追いかけて行ったらしい。

 そんなことしても生きてハクトに会えるかどうかわからないのに、シリアの執着心には驚かされる。

 けれど、家を追い出されて周囲から信頼を失った今、彼女にとって頼れるのはハクトしか思い浮かばなかったのだろう。

 そのハクトさえ厳しい修行の旅に出てどうなったかわからないのだから、シリアがハクトと合流できる可能性なんて限りなく低いのだろう。

 全てを失ってしまった二人の末路は、以前の二人からは全く想像できないものだ。

 どうしようもない二人だったけど、ハクトが婚約破棄をしてくれたおかげでジャックと一緒になれたのだ。

 そんな中、私とジャックは正式に結婚した。

「エリー、愛してる」

「私も。愛してるよ」

 たくさんの人に祝福される中、私は幸せな未来に期待を膨らませた。



 ●おしまい●
しおりを挟む
感想 13

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(13件)

小澤りかこ
2024.11.04 小澤りかこ

最後まで書き上げるのが大変だと思うので
これからもドンドン書いていくのが良いと思います
頑張って下さい

解除
こぎつねコンコン
ネタバレ含む
香取鞠里
2021.04.24 香取鞠里

感想をありがとうございます。
確かに挙げていただいた点はちょっと違和感あったかもしれないです。今後に活かせるように頑張ります。
あらすじの方は修正してきました。ご指摘ありがとうございます。

解除
八つ刻
2021.04.23 八つ刻
ネタバレ含む
香取鞠里
2021.04.24 香取鞠里

感想をありがとうございます。
そう言っていただけて嬉しいです!

解除

あなたにおすすめの小説

婚約者に親しい幼なじみがいるので、私は身を引かせてもらいます

Hibah
恋愛
クレアは同級生のオーウェンと家の都合で婚約した。オーウェンには幼なじみのイブリンがいて、学園ではいつも一緒にいる。イブリンがクレアに言う「わたしとオーウェンはラブラブなの。クレアのこと恨んでる。謝るくらいなら婚約を破棄してよ」クレアは二人のために身を引こうとするが……?

【完結】夫が私を捨てて愛人と一緒になりたいと思っているかもしれませんがそうはいきません。

マミナ
恋愛
ジョゼルは私と離婚を済ませた後、父様を説得し、働いている者達を追い出してカレンと一緒に暮らしていたが…。 「なんでこんな事になったんだ…。」 「嘘よなんでなの…。」 暮らした二人は上手くいかない事ばかりが続く。 新しい使用人が全く入って来ず、父様から急に伯爵の地位を親族の1人であるブレイルに明け渡すと告げて来たり貴族としての人脈作りは上手くいかず、付き合いのあった友人も離れていった。 生活は苦しくなり、父様に泣きついたが、頑なに援助はしないと突っぱねられたので何故そうするのかジョゼルは父様に訪ねると…。

愛人のいる夫を捨てました。せいぜい性悪女と破滅してください。私は王太子妃になります。

Hibah
恋愛
カリーナは夫フィリップを支え、名ばかり貴族から大貴族へ押し上げた。苦難を乗り越えてきた夫婦だったが、フィリップはある日愛人リーゼを連れてくる。リーゼは平民出身の性悪女で、カリーナのことを”おばさん”と呼んだ。一緒に住むのは無理だと感じたカリーナは、家を出ていく。フィリップはカリーナの支えを失い、再び没落への道を歩む。一方でカリーナには、王太子妃になる話が舞い降りるのだった。

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

10年前の婚約破棄を取り消すことはできますか?

岡暁舟
恋愛
「フラン。私はあれから大人になった。あの時はまだ若かったから……君のことを一番に考えていなかった。もう一度やり直さないか?」 10年前、婚約破棄を突きつけて辺境送りにさせた張本人が訪ねてきました。私の答えは……そんなの初めから決まっていますね。

侯爵令嬢は限界です

まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」 何言ってんだこの馬鹿。 いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え… 「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」 はい無理でーす! 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。 ※物語の背景はふんわりです。 読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!

私には婚約者がいた

れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・? *かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#) *なろうにも投稿しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。