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ハクトに執着されるだけでもうんざりなのに、そんな中、シリアまで突撃してきた。
もう、私の心は折れかけていた。
せめてもの救いは、ジャックが味方で居てくれることだ。
そんなある日のこと、毎日のように続いていたハクトの訪問がなくなった。
今日だけかもしれないし、違うかもしれない。
何となく不安に思っていると、ジャックが現れた。
「エリー!」
馬に乗って現れたジャックは、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「ジャック! どうしたの?」
「僕と結婚してくれ」
「ええっ!?」
嬉しい……! けれど、話の成り行きについていけない。
「僕の父に兄のことを相談していたんだ。その時に僕とエリーのことも話した」
「え……」
「兄のエリーへの問題行動を把握した父は、僕に伯爵家の継承権を与えたんだ。そして、僕とエリーが恋仲にあると知った父は、エリーのお父様と話し合った結果、僕とエリーの婚約を認めている」
「えええ!?」
いつの間に……!
私がお父様に相談できないと悩んでいた間に、ジャックは着々と事を進めてくれていたんだ!
「もしかして、迷惑だったかな?」
「そんなことない。嬉しい……!」
けど、ジャックの兄はハクトだ。
ジャックと結婚した後、また何か問題がおこるのだろうか。
嬉しい反面、少し心配になっていると、まるで私の心配を払拭するようにジャックは私に告げた。
「兄さんのことなら心配要らないよ。今回のことで、あいつは両親に勘当されて屋敷を追い出されて、今頃遠くの島に修行の旅に連れていかれたから」
「え……」
「シリアも。ハクトに執着していることが婚約者にバレて婚約破棄されて家を追い出されたらしいよ」
「そうなんだ……」
思わずホッとする。
せっかくのジャックとの結婚が叶っても、近くにハクトやシリアが居たり、不安を抱えて生活したりするのは嫌だったから。
「じゃあ、エリー、僕と結婚してくれる?」
「もちろん!」
何て幸せなのだろう。
私とジャックは固く抱き合った。
後日談として、家を追い出されたシリアは島に修行に出たハクトを一人で追いかけて行ったらしい。
そんなことしても生きてハクトに会えるかどうかわからないのに、シリアの執着心には驚かされる。
けれど、家を追い出されて周囲から信頼を失った今、彼女にとって頼れるのはハクトしか思い浮かばなかったのだろう。
そのハクトさえ厳しい修行の旅に出てどうなったかわからないのだから、シリアがハクトと合流できる可能性なんて限りなく低いのだろう。
全てを失ってしまった二人の末路は、以前の二人からは全く想像できないものだ。
どうしようもない二人だったけど、ハクトが婚約破棄をしてくれたおかげでジャックと一緒になれたのだ。
そんな中、私とジャックは正式に結婚した。
「エリー、愛してる」
「私も。愛してるよ」
たくさんの人に祝福される中、私は幸せな未来に期待を膨らませた。
●おしまい●
もう、私の心は折れかけていた。
せめてもの救いは、ジャックが味方で居てくれることだ。
そんなある日のこと、毎日のように続いていたハクトの訪問がなくなった。
今日だけかもしれないし、違うかもしれない。
何となく不安に思っていると、ジャックが現れた。
「エリー!」
馬に乗って現れたジャックは、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「ジャック! どうしたの?」
「僕と結婚してくれ」
「ええっ!?」
嬉しい……! けれど、話の成り行きについていけない。
「僕の父に兄のことを相談していたんだ。その時に僕とエリーのことも話した」
「え……」
「兄のエリーへの問題行動を把握した父は、僕に伯爵家の継承権を与えたんだ。そして、僕とエリーが恋仲にあると知った父は、エリーのお父様と話し合った結果、僕とエリーの婚約を認めている」
「えええ!?」
いつの間に……!
私がお父様に相談できないと悩んでいた間に、ジャックは着々と事を進めてくれていたんだ!
「もしかして、迷惑だったかな?」
「そんなことない。嬉しい……!」
けど、ジャックの兄はハクトだ。
ジャックと結婚した後、また何か問題がおこるのだろうか。
嬉しい反面、少し心配になっていると、まるで私の心配を払拭するようにジャックは私に告げた。
「兄さんのことなら心配要らないよ。今回のことで、あいつは両親に勘当されて屋敷を追い出されて、今頃遠くの島に修行の旅に連れていかれたから」
「え……」
「シリアも。ハクトに執着していることが婚約者にバレて婚約破棄されて家を追い出されたらしいよ」
「そうなんだ……」
思わずホッとする。
せっかくのジャックとの結婚が叶っても、近くにハクトやシリアが居たり、不安を抱えて生活したりするのは嫌だったから。
「じゃあ、エリー、僕と結婚してくれる?」
「もちろん!」
何て幸せなのだろう。
私とジャックは固く抱き合った。
後日談として、家を追い出されたシリアは島に修行に出たハクトを一人で追いかけて行ったらしい。
そんなことしても生きてハクトに会えるかどうかわからないのに、シリアの執着心には驚かされる。
けれど、家を追い出されて周囲から信頼を失った今、彼女にとって頼れるのはハクトしか思い浮かばなかったのだろう。
そのハクトさえ厳しい修行の旅に出てどうなったかわからないのだから、シリアがハクトと合流できる可能性なんて限りなく低いのだろう。
全てを失ってしまった二人の末路は、以前の二人からは全く想像できないものだ。
どうしようもない二人だったけど、ハクトが婚約破棄をしてくれたおかげでジャックと一緒になれたのだ。
そんな中、私とジャックは正式に結婚した。
「エリー、愛してる」
「私も。愛してるよ」
たくさんの人に祝福される中、私は幸せな未来に期待を膨らませた。
●おしまい●
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最後まで書き上げるのが大変だと思うので
これからもドンドン書いていくのが良いと思います
頑張って下さい
感想をありがとうございます。
確かに挙げていただいた点はちょっと違和感あったかもしれないです。今後に活かせるように頑張ります。
あらすじの方は修正してきました。ご指摘ありがとうございます。
感想をありがとうございます。
そう言っていただけて嬉しいです!