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ジャックにハクトとの婚約破棄についての愚痴やつらい心境を聞いてもらいながら、街中をまわる。
美味しいご飯をごちそうになったり、買い物をしたり思いの外楽しい時間を過ごせた。
気さくなジャックは話しやすく、遊び人と聞いていたが私に何かをしてやろうという雰囲気は全くなく、純粋に私のことを心配してくれている風なのが嬉しい。
この日、確かに私はジャックに救われたのだ。
ジャックはそれからというもの、毎日私の住むお屋敷にひょっこり姿を現すようになった。
時には部屋でお茶をして、時にはこの前のような街に繰り出して、ジャックと過ごすうちにいつの間にかハクトとの婚約破棄により傷ついた心が癒えていくようだった。
「エリー、今日はどこ行く?」
「そうね。天気が良いし、広場でゆっくりお茶をしましょう」
私はバスケットに焼きたてのパンを入れて、ジャックの手を取る。
決して恋仲になったわけではないが、親睦を深めた私達はそれに近しい関係になっていた。
広場で一緒に過ごしたあと、自然と会話が途切れる。
綺麗な夕陽を見つめながら、心からこの時間が幸せだと感じた。
自然と触れあった指先に驚いてジャックを見ると、目があって、私達はごく自然に唇を重ねた。
「ねぇ、エリー。君さえよければ、僕達結婚する?」
「素敵ね」
「ありがとう。また改めて君のお父様にお話させてほしい」
こうして晴れて恋人同士になった私達は、すんなり結婚へのステップが踏めると思っていた。
ハクトと婚約は破棄されてしまったが、家同士の仲は悪くなっていなかったからだ。
この夜は幸せな気持ちで眠りに就いた。
次の日の朝、来客の訪問に、またジャックが会いに来てくれたのだとステップを踏んで外に出る。
けれど、私は目に見えた人物に目を疑った。
だって、そこに立っていたのは、私と婚約破棄したはずのハクトだったのだから。
どうしてハクトがここにいるの……!?
今更私に何の用があるの!?
それに、ハクトのせいで体を負傷してしまったためにそばにいたいと言っていたシリアは!?
わからない。
今すぐ逃げ出したいのに、こちらに近づいてくるハクトから逃げることができなかった。
「エリー、久しぶり」
穏やかにかけられた声に、私の体はさらに強ばった。
美味しいご飯をごちそうになったり、買い物をしたり思いの外楽しい時間を過ごせた。
気さくなジャックは話しやすく、遊び人と聞いていたが私に何かをしてやろうという雰囲気は全くなく、純粋に私のことを心配してくれている風なのが嬉しい。
この日、確かに私はジャックに救われたのだ。
ジャックはそれからというもの、毎日私の住むお屋敷にひょっこり姿を現すようになった。
時には部屋でお茶をして、時にはこの前のような街に繰り出して、ジャックと過ごすうちにいつの間にかハクトとの婚約破棄により傷ついた心が癒えていくようだった。
「エリー、今日はどこ行く?」
「そうね。天気が良いし、広場でゆっくりお茶をしましょう」
私はバスケットに焼きたてのパンを入れて、ジャックの手を取る。
決して恋仲になったわけではないが、親睦を深めた私達はそれに近しい関係になっていた。
広場で一緒に過ごしたあと、自然と会話が途切れる。
綺麗な夕陽を見つめながら、心からこの時間が幸せだと感じた。
自然と触れあった指先に驚いてジャックを見ると、目があって、私達はごく自然に唇を重ねた。
「ねぇ、エリー。君さえよければ、僕達結婚する?」
「素敵ね」
「ありがとう。また改めて君のお父様にお話させてほしい」
こうして晴れて恋人同士になった私達は、すんなり結婚へのステップが踏めると思っていた。
ハクトと婚約は破棄されてしまったが、家同士の仲は悪くなっていなかったからだ。
この夜は幸せな気持ちで眠りに就いた。
次の日の朝、来客の訪問に、またジャックが会いに来てくれたのだとステップを踏んで外に出る。
けれど、私は目に見えた人物に目を疑った。
だって、そこに立っていたのは、私と婚約破棄したはずのハクトだったのだから。
どうしてハクトがここにいるの……!?
今更私に何の用があるの!?
それに、ハクトのせいで体を負傷してしまったためにそばにいたいと言っていたシリアは!?
わからない。
今すぐ逃げ出したいのに、こちらに近づいてくるハクトから逃げることができなかった。
「エリー、久しぶり」
穏やかにかけられた声に、私の体はさらに強ばった。
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