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5.甘く厳しい訓練の日々
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「おいおい、大丈夫か? そんなんで。ほら、もう一回最初からやり直しだ」
「そんな……」
こちらがギブアップの目を向けるも、私の騎士としての教育を行ってくれているルキは、全く私の声なんて聞こえていないかのように、重たいため息を吐き出す。
「もう出来損ないって言われるのが嫌なら立て」
「えええー」
けれど、ルキの言うとおりなので立ち上がって、再びルキに教えてもらった型を取る。
ルキの特訓は容赦なかった。
朝から晩までみっちり二人で特訓を行うこと3日。
ていうか、ずっと私の特訓に付きっきりだけど、ルキは自分のことはしなくていいのだろうか?
そんなことを考えながら剣を振っていると、不意にルキに頭をペチッと叩かれる。
「いったぁ! 何すんのよ!」
「今、何考えてた?」
「な、何って……! ルキは、私の特訓が始まってからずっと私の特訓につきっきりだけど、自分のことしなくていいのかなって……」
するとルキはにやぁっと嫌な笑みを浮かべてこちらに顔を突き出した。
「へえ~、俺のことが気になっちゃってるの?」
「そんなわけ無いでしょうが!」
思わずルキに向かって怒っちゃったけれど、私の胸はドキドキと激しく鼓動を刻んでいる。
あれ? 私、どうしてこんなにドキドキしてるんだろう……?
こんな風に私はルキに手とり足とり、時にはからかわれたりしながら、厳しくも楽しい時間を重ねていった。
厳しい訓練を重ねること、約一年半が経過する。
「おお! イルア、かなり良くなったな!」
「本当!?」
出来損ないと言われていたのが嘘のように、私は着実に実力を上げていた。
「ああ。イルアって、実は剣術の方に能力が長けていたのかもな。以前までのお前が嘘みたいだ」
「もう、誰にも出来損ないとは言わせないね」
「俺もそう思う」
一通り練習を終えてルキの方へ話しながら歩み寄る。
そのとき、思わず私はなにもないところでつまずいてしまった。
「うわっ」
こういうところは、以前の出来損ないのときと変わらないなと思う。
「おい、大丈夫か!?」
違うのは、そばで私の身体を支えて、心配してくれる人が今はいるということだ。
「ありがとう、ルキ……」
思わずルキと一緒に居るときに突如心臓が暴れ出すのは、今も変わっていない。
思わず顔まで熱くなってくるのだから、困ったものだ。
「本当、剣術の腕はかなり上げたけど、そういうところは抜けてるままだよな」
「も、もう……!」
「そろそろ団員と一緒の稽古にも入れてもらえることが決まってるんだから、変なところで怪我するなよ?」
「もちろんよ」
そのとき、夕陽に照らされた空間の中、異様な空気のまま私とルキはいつの間にか見つめあっていた。
ルキの手がふわりと私の頬に触れる。
「……えっと、ルキ……?」
いつもと違う、何となく漂う甘い空気に耐えきれずに思わず口を開く。
「イルア……、俺……」
私を見つめたまま、少し思い詰めたようにルキが口を開きかけたとき、突如街の方から悲鳴のような声が聞こえた。
「そんな……」
こちらがギブアップの目を向けるも、私の騎士としての教育を行ってくれているルキは、全く私の声なんて聞こえていないかのように、重たいため息を吐き出す。
「もう出来損ないって言われるのが嫌なら立て」
「えええー」
けれど、ルキの言うとおりなので立ち上がって、再びルキに教えてもらった型を取る。
ルキの特訓は容赦なかった。
朝から晩までみっちり二人で特訓を行うこと3日。
ていうか、ずっと私の特訓に付きっきりだけど、ルキは自分のことはしなくていいのだろうか?
そんなことを考えながら剣を振っていると、不意にルキに頭をペチッと叩かれる。
「いったぁ! 何すんのよ!」
「今、何考えてた?」
「な、何って……! ルキは、私の特訓が始まってからずっと私の特訓につきっきりだけど、自分のことしなくていいのかなって……」
するとルキはにやぁっと嫌な笑みを浮かべてこちらに顔を突き出した。
「へえ~、俺のことが気になっちゃってるの?」
「そんなわけ無いでしょうが!」
思わずルキに向かって怒っちゃったけれど、私の胸はドキドキと激しく鼓動を刻んでいる。
あれ? 私、どうしてこんなにドキドキしてるんだろう……?
こんな風に私はルキに手とり足とり、時にはからかわれたりしながら、厳しくも楽しい時間を重ねていった。
厳しい訓練を重ねること、約一年半が経過する。
「おお! イルア、かなり良くなったな!」
「本当!?」
出来損ないと言われていたのが嘘のように、私は着実に実力を上げていた。
「ああ。イルアって、実は剣術の方に能力が長けていたのかもな。以前までのお前が嘘みたいだ」
「もう、誰にも出来損ないとは言わせないね」
「俺もそう思う」
一通り練習を終えてルキの方へ話しながら歩み寄る。
そのとき、思わず私はなにもないところでつまずいてしまった。
「うわっ」
こういうところは、以前の出来損ないのときと変わらないなと思う。
「おい、大丈夫か!?」
違うのは、そばで私の身体を支えて、心配してくれる人が今はいるということだ。
「ありがとう、ルキ……」
思わずルキと一緒に居るときに突如心臓が暴れ出すのは、今も変わっていない。
思わず顔まで熱くなってくるのだから、困ったものだ。
「本当、剣術の腕はかなり上げたけど、そういうところは抜けてるままだよな」
「も、もう……!」
「そろそろ団員と一緒の稽古にも入れてもらえることが決まってるんだから、変なところで怪我するなよ?」
「もちろんよ」
そのとき、夕陽に照らされた空間の中、異様な空気のまま私とルキはいつの間にか見つめあっていた。
ルキの手がふわりと私の頬に触れる。
「……えっと、ルキ……?」
いつもと違う、何となく漂う甘い空気に耐えきれずに思わず口を開く。
「イルア……、俺……」
私を見つめたまま、少し思い詰めたようにルキが口を開きかけたとき、突如街の方から悲鳴のような声が聞こえた。
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