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4.突然ですが、騎士になります!
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「お父様、私に剣術を教えてください!」
男たちに襲われそうになった後、お屋敷で父親に顔を合わせるなり、真っ先にそう告げた。
お父様ははあ?と言いたそうに首をかしげる。
今まで出来損ないとして生きてきた私は、目の前のことをこなすので精一杯で、あまり自分から何かを率先してやろうとしたことがなかったのだから当然だろう。
「私、立派な騎士になりたいです」
「急にどうした? イルアにできるのか?」
無理だとは言ってこないが、そんなこと私にできるわけないだろうと言っているのを感じる。
「そんなことやってみないと分からないじゃないですか! 今までの私とは違います! お願いします、やらせてください!」
私はお父様に誠意を込めて懇願した。
勉強もできなかったけど、いつまでも出来損ないだとバカにされたくなかった。
今までまったくもって気に留めていなかったが、今回の件でどうしても自分で自分が許せなくなったのだ。
あまりにも真剣に頼み込む私を見てなのだろう。お父様はしばらく考えた後、承諾してくれた。
「ふむ。イルアの気持ちはよく分かった。やれるだけやってみなさい」
「ありがとうございます! やれるところまで精一杯頑張ります」
こうして私は、騎士としての訓練を始めることとなったのだった。
数日後、お父様は私にお父様の騎士団の服を調達してくれた。
「似合うじゃないか、イルア。しっかり頑張るんだぞ」
「……私が騎士団の制服を着てもいいのですか?」
正式な団員なわけではない。むしろこれから騎士になろうと訓練を始めるばかりだというのに、こんな立派な制服を私が着てもいいのだろうかと迷ってしまう。
「何を言っている。お前は騎士になるのではなかったのか? その制服に見合うだけの実力をつけられるようにするのが、お前の今の目標だ」
父親は嬉しそうに笑うと、私に一本の剣を差し出した。
「そうだ。お前が訓練を始める記念にこれをプレゼントしよう」
「え?」
目の前に差し出されて受け取ったのは、お父様の部屋に飾ってあった剣のうちの一本だった。
「こんな大切なもの、私がもらってもいいのですか?」
「当たり前じゃないか。それは練習用の剣だ。そんなに高価なものではない。私が訓練を始めた頃に使っていたものだ。記念に置いてあっただけだが、今回イルアが訓練を始めるにあたりちゃんと手入れをしておいたからすぐに使うことができるぞ」
最初こそ、私に剣術なんて難しいと言っていたお父様だったが、本当のところは私が剣術を始めたいと言い出したことが嬉しかったようだ。
お父様は私が騎士として最善の訓練を受けられるように色々と用意してくれていた。
「そうだ。お前の剣術だが、彼に見てもらえるように頼んである」
そう言ってお父様は騎士団名簿の中から、一人の男性の名前を指差した。
そこには私より一つ年上のルキという男性の名前が記されていた。
「彼はお前の卒業した学園の先輩でもある。まだ若いのに実力がかなりあり、性格も気さくで話しやすい。彼に何でも教えてもらうといい」
私の家と同じ爵位の公爵家の家のご子息だ。あまり話したことはないが、顔と名前は知っている。
お父様がこれほど褒めるとはそのルキという男性はとても実力があり人柄も優れているのだろう。
私は彼と会う日が楽しみになった。
男たちに襲われそうになった後、お屋敷で父親に顔を合わせるなり、真っ先にそう告げた。
お父様ははあ?と言いたそうに首をかしげる。
今まで出来損ないとして生きてきた私は、目の前のことをこなすので精一杯で、あまり自分から何かを率先してやろうとしたことがなかったのだから当然だろう。
「私、立派な騎士になりたいです」
「急にどうした? イルアにできるのか?」
無理だとは言ってこないが、そんなこと私にできるわけないだろうと言っているのを感じる。
「そんなことやってみないと分からないじゃないですか! 今までの私とは違います! お願いします、やらせてください!」
私はお父様に誠意を込めて懇願した。
勉強もできなかったけど、いつまでも出来損ないだとバカにされたくなかった。
今までまったくもって気に留めていなかったが、今回の件でどうしても自分で自分が許せなくなったのだ。
あまりにも真剣に頼み込む私を見てなのだろう。お父様はしばらく考えた後、承諾してくれた。
「ふむ。イルアの気持ちはよく分かった。やれるだけやってみなさい」
「ありがとうございます! やれるところまで精一杯頑張ります」
こうして私は、騎士としての訓練を始めることとなったのだった。
数日後、お父様は私にお父様の騎士団の服を調達してくれた。
「似合うじゃないか、イルア。しっかり頑張るんだぞ」
「……私が騎士団の制服を着てもいいのですか?」
正式な団員なわけではない。むしろこれから騎士になろうと訓練を始めるばかりだというのに、こんな立派な制服を私が着てもいいのだろうかと迷ってしまう。
「何を言っている。お前は騎士になるのではなかったのか? その制服に見合うだけの実力をつけられるようにするのが、お前の今の目標だ」
父親は嬉しそうに笑うと、私に一本の剣を差し出した。
「そうだ。お前が訓練を始める記念にこれをプレゼントしよう」
「え?」
目の前に差し出されて受け取ったのは、お父様の部屋に飾ってあった剣のうちの一本だった。
「こんな大切なもの、私がもらってもいいのですか?」
「当たり前じゃないか。それは練習用の剣だ。そんなに高価なものではない。私が訓練を始めた頃に使っていたものだ。記念に置いてあっただけだが、今回イルアが訓練を始めるにあたりちゃんと手入れをしておいたからすぐに使うことができるぞ」
最初こそ、私に剣術なんて難しいと言っていたお父様だったが、本当のところは私が剣術を始めたいと言い出したことが嬉しかったようだ。
お父様は私が騎士として最善の訓練を受けられるように色々と用意してくれていた。
「そうだ。お前の剣術だが、彼に見てもらえるように頼んである」
そう言ってお父様は騎士団名簿の中から、一人の男性の名前を指差した。
そこには私より一つ年上のルキという男性の名前が記されていた。
「彼はお前の卒業した学園の先輩でもある。まだ若いのに実力がかなりあり、性格も気さくで話しやすい。彼に何でも教えてもらうといい」
私の家と同じ爵位の公爵家の家のご子息だ。あまり話したことはないが、顔と名前は知っている。
お父様がこれほど褒めるとはそのルキという男性はとても実力があり人柄も優れているのだろう。
私は彼と会う日が楽しみになった。
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