婚約破棄された私は、自由を謳歌します。

香取鞠里

文字の大きさ
上 下
4 / 6

しおりを挟む
 こんな風に、私とロバートの間は日に日に近づいていったし、私もロバートに確実に惹かれていた。


 そんなある日のこと、人の足音が聞こえたのでロバートが来たのだと思い振り向くと、思わぬ人物がそこに立っていた。


「……デニス?」

「久しぶり」

「久しぶりじゃないでしょう? どうしてあなたがここに居るのよ!」


 デニスは、私にありもしない罪により婚約破棄を言い渡してきた男だ。婚約者だった私を信じず、リリアを信じたような人だ。


「やっぱり、婚約破棄はなかったことにしてほしいんだ。サリーが浮気してたって話は、リリアのでっち上げた嘘で、僕はリリアに騙されてたんだ」

「今更? あのときひとっつも私のことを信じてくれなかったくせに、今更それはないんじゃないかしら?」

「しかもあいつ、僕の家の財産狙いだったんだ。あんなやつだと思わなかった。あいつと婚約してから、急に高いものばかりねだられるようになって、わがまま放題だし、もう最悪だよ」

「知らないわよそんなこと。だいたいリリアとは婚約どころか、結婚もしたのでしょう?」

「う……っ」


 都合の悪いところは隠すところは、デニスもリリアも同じだ。
 似た者同士仲良くすればいいのに……。


「けど、お前は僕のことが好きだっただろう? また僕と一緒になりたいとは思わないのか?」

「別に……」

「そんなことないだろう?」

「いや……っ」

 無理にでも私の口から肯定の返事をもらおうとデニスは私につかみかかってくる。
 思わず身を縮こませたとき。

「やめなよ」

 別の男性の声が後ろから聞こえた。
 ロバートだ。

「彼女、嫌がってるじゃないか」

「はあ? お前誰だよ。僕はこいつの婚約者だ」

「違うでしょう? 婚約は破棄したじゃない」

 この場に及んでもロバートに嘘をかますデニスに思わず声をあげる。

「事情は知っていますよ。サリーだけでなく、アリーナ侯爵からもうかがっているので」

 すると、ロバートは意味深な目をデニスに向ける。

「だからお前誰だよ。なんなんだよ一体」

「僕ですか? 隣国の皇太子、ロバートだけど? ちなみに今のサリーの婚約者は、君じゃなくて僕だよ。アリーナ侯爵と話をつけたところだったんだ」

「えええ!?」

 隣国の皇太子!? ロバートが!?
 確かに身なりや護衛の数から高貴な身分の方なのだとは思っていたけれど……。

 それに、婚約って!?
 私のいないところで、なんと言うことだ。
 確かに私はロバートが好きになっていたけれど、まさかいつの間にかロバートが私との婚約を父親に持ちかけていたなんて、誰が想像つくだろう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は王妃の策略にはめられたみたいです。そして彼女は呪われたそうですが。

十条沙良
恋愛
聖女の私を追い出した王妃は、不治の病になったみたいです。

「私に毒を盛る気か?」と怒鳴られて婚約破棄された聖女は、この国を追い出されました。

十条沙良
恋愛
王妃様に嫌われた私は、息子に婚約破棄されました。

【完結】婚約破棄されるはずが、婚約破棄してしまいました

チンアナゴ🐬
恋愛
「お前みたいなビッチとは結婚できない!!お前とは婚約を破棄する!!」 私の婚約者であるマドラー・アドリード様は、両家の家族全員が集まった部屋でそう叫びました。自分の横に令嬢を従えて。

君をもう愛せないので婚約破棄したい、そう話す婚約者の腕の中には義妹がいた。

十条沙良
恋愛
以前から私を悪女と疑う婚約者 愛せないから婚約破棄しよう。

王太子から愛することはないと言われた侯爵令嬢は、そんなことないわと強気で答える

綾森れん
恋愛
「オリヴィア、君を愛することはない」 結婚初夜、聖女の力を持つオリヴィア・デュレー侯爵令嬢は、カミーユ王太子からそう告げられた。 だがオリヴィアは、 「そんなことないわ」 と強気で答え、カミーユが愛さないと言った原因を調べることにした。 その結果、オリヴィアは思いもかけない事実と、カミーユの深い愛を知るのだった。

理不尽に追放された神の加護を持つ娘、隣国で幸せになる

四季
恋愛
神の加護を持つ娘フルレイヌ・アンドラは自国の王子と婚約したのだが、王子から責められ、しまいには追い出されてしまった……。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

window
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

婚約破棄されたのですが、その理由が信じられなく私は

mkrn
恋愛
ある朝、婚約者の第二王子殿下から婚約破棄を言い渡された。 「私は君のような女性とは結婚できない。婚約は破棄させてもらう!」 はぁ……!? ちょっと待って! なんで急にそうなった!? 「なぜですか!?」 「それは……」

処理中です...