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「幼馴染のリリアと婚約するから、お前との婚約は破棄する」
私、サリーは二十歳を目前として、突然婚約者の公爵子息デニスに婚約破棄を告げられた。
いきなり私と同級生の侯爵令嬢のリリアとともに現れてそんなことを言われても、私の頭はすぐにはついていかなかった。
「どうして? そんな急に……」
半ば困惑しながら聞き返す。
けれど、リリアが一緒という時点で、嫌な予感しかしない。
「どうして? よくそんなこと聞けるよな? お前、実はいろんな男と体の関係を持って遊び呆けていたんだろ? 危うく騙されたまま結婚してしまうところだった」
「はぁ!? そんなことするはずないでしょう!?」
嫌な予感はしていたものの、これは完全にありもしない浮気の罪を着せられたといってもいいだろう。
全く身を持って心当たりのない私は、すぐにデニスのとなりに立つリリアの仕業だと思い、彼女を思わず睨み付ける。
「じゃあ違うっていう証拠はあるのかしら? 遊び呆けて浮かれていたあなたは気づいてなかったんでしょうけれど、社交界の間であなたの男遊びの話は有名よ?」
リリアはトドメとばかりに私に告げて、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「どういうこと? リリア、あなた一体何を……っ!」
私が詰めよったところで、私はデニスに肩を押されてよろける。
「リリアに乱暴はよせ。そういうことだから、君との婚約はなかったことにしてほしい。サリーの浮気が原因となっているから、当然婚約破棄に伴う慰謝料はなしだ」
「何よ。デニスは、リリアの話を信じるのね?」
親同士の決めた婚約なだけあって、デニスのことが特別好きだったわけではないが、信じてもらえないのはつらい。心がえぐられるようだった。
けれど、もう一度デニスの表情を確認した私は、静かに彼の申し出を受け入れた。
「……わかりました。いいですよ、婚約破棄を受け入れます」
デニスとの婚約が破棄になったことについては、残念と思う気持ちはあるが、それ以上の感情はない。
姉が公爵家の子息と結婚して安泰であることから、私にはそこまで重圧はないのだから。
そして、学園を卒業してからもリリアと張り合うつもりは私にはない。
リリアは以前私たちが通っていた学園で常に成績トップだが万年二位。いつも一位の座を譲らなかった私は目の敵にされていた。
学園生活の間の恨みを晴らされたというところだろう。
デニスと婚約が成立することで彼女が満足して私にちょっかいを出してこなくなるなら有りだろう。
少なくとも、婚約者だった私の話すら聞かず、私のことを信じすらしない彼は私には不要だ。
「せいぜいお幸せに」
私は二人にそう告げると、二人に背を向けて、ニヤリと笑った。
私、サリーは二十歳を目前として、突然婚約者の公爵子息デニスに婚約破棄を告げられた。
いきなり私と同級生の侯爵令嬢のリリアとともに現れてそんなことを言われても、私の頭はすぐにはついていかなかった。
「どうして? そんな急に……」
半ば困惑しながら聞き返す。
けれど、リリアが一緒という時点で、嫌な予感しかしない。
「どうして? よくそんなこと聞けるよな? お前、実はいろんな男と体の関係を持って遊び呆けていたんだろ? 危うく騙されたまま結婚してしまうところだった」
「はぁ!? そんなことするはずないでしょう!?」
嫌な予感はしていたものの、これは完全にありもしない浮気の罪を着せられたといってもいいだろう。
全く身を持って心当たりのない私は、すぐにデニスのとなりに立つリリアの仕業だと思い、彼女を思わず睨み付ける。
「じゃあ違うっていう証拠はあるのかしら? 遊び呆けて浮かれていたあなたは気づいてなかったんでしょうけれど、社交界の間であなたの男遊びの話は有名よ?」
リリアはトドメとばかりに私に告げて、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「どういうこと? リリア、あなた一体何を……っ!」
私が詰めよったところで、私はデニスに肩を押されてよろける。
「リリアに乱暴はよせ。そういうことだから、君との婚約はなかったことにしてほしい。サリーの浮気が原因となっているから、当然婚約破棄に伴う慰謝料はなしだ」
「何よ。デニスは、リリアの話を信じるのね?」
親同士の決めた婚約なだけあって、デニスのことが特別好きだったわけではないが、信じてもらえないのはつらい。心がえぐられるようだった。
けれど、もう一度デニスの表情を確認した私は、静かに彼の申し出を受け入れた。
「……わかりました。いいですよ、婚約破棄を受け入れます」
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そして、学園を卒業してからもリリアと張り合うつもりは私にはない。
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少なくとも、婚約者だった私の話すら聞かず、私のことを信じすらしない彼は私には不要だ。
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