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5. なぜか熱烈に求められてしまいました

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 ライアンは、まさか私と形だけの夫婦としてやっていくつもりはないということだろうか。

 反発や抵抗する気持ちはあったはずなのに、すぐに口内に侵入してきた舌に蕩けさせられるようにして、私の思考は停止させられてしまった。


 とてもまだ昨日顔を合わせたばかりだと思えないくらいの濃厚なキスを交わす。


「……っはぁ」


 ようやく唇が開放されてライアンを見れば、ライアンは涼しげな顔で私を見つめている。

 けれど、またすぐに深いキスを落とされる。


「……んんっ」


 キスだけなのに息が切れる。
 抵抗するにもできずにいると、私の体をなぞるように触れていたライアンの手が、私の胸元に触れた。


「ちょっと……!」

「……何?」


 思わず再び開放された口から抗議するような声を上げると、まるでなにか手順を間違えてましたかとばかりの瞳を向けられる。

 むしろこれから襲ってやろうとか悪意を感じる瞳で見られているとばかり思っていたから、ちょっとだけ拍子抜けする。

 けれど、今、ライアンにされていることを総合的に考えても、私はそんなライアンに怯んではいけないのだ。


「何をしようとしているの?」

「嫌……?」

「嫌とかそうじゃなくて、まだ私たち……っ」

「出会ったばかりだからとか言うつもり? そうかもしれないけど、俺ら夫婦になるんだから、必要なことでしょ?」


 そうしているうちに、胸を揉まれて、自分の意思に反して甘い声が漏れる。


「んん……、でも……」

「それに、マリア、意外と嫌がってないし、むしろ俺のこと受け入れてくれてるじゃん」

「そんなことな……あっ」


 体に敏感に走る甘い刺激に、思わず身を震わせる。
 抵抗しようとしていたはずなのに、体に力が入らない。
 むしろライアンの言うとおり、もっと、と思っている自分は確かにいる。


 こちらを見つめる瞳は熱く、真剣そのもので、思わず胸がドキドキする。

 こんな私、可笑しいのかな……?

 可笑しいのかもしれない。
 ただ、見た目の良さにほだされているだけかもしれない。

 契約で決まった嫁だというのに、こんなに熱烈に求められるとは思わなかった。


 けど、目の前の彼がライアンだと思えないくらいに熱い瞳をぶつけて、優しく私に触れてくれるから、いつの間にか抵抗をやめた私は、すっかり彼の熱に溺れていた──。


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