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2.心の葛藤

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 私の婚約者になったウインド公爵家の子息のライアンは、私より一つ年上の22歳だ。

 このライアン、かなりのイケメンではあるが、同時にかなり冷酷だと悪評だっている。

 かなり優秀であるらしいが、舞踏会ではいつも人を寄せ付けない空気を醸し出し、声をかけたところ冷たくあしらわれたという令嬢の愚痴をいくつも聞いたことがあるくらいだ。


 私も遠目から見たことがあるが、背が高くて整った顔の青年だったことを覚えている。
 そして、とても綺麗な人だったが、同時に人を寄せ付けないオーラを醸し出していたことを思い返す。


 ウインド公爵家との交流が全くなかったわけではないけれど、私自身幼い頃から今までほとんどライアンとは接点が無かった。

 そのためほぼ初対面なのだ。

 いくら借金を肩代わりしてもらった見返りとはいえ、どうしてウインド公爵はライアンの嫁を求めてきたのだろう。
 もっといい家柄の令嬢なんて、たくさんいるだろうに。

 そもそもライアンは私と結婚して幸せなのだろうか。契約結婚なのだから、私と結婚したいと思っているとも到底思えない。

 さらには、風の噂で聞くライアンの性格から、とてもじゃないけれど打ち解け合えるとは思いにくい。

 それゆえに愛されることはほぼないのだろうし、ウインド公爵家が嫁にほしいという要望を出した理由によっては、それこそ形だけのお飾りの妻となってしまうだろう。

 いくらウインド公爵家のおかげで私たち家族が救われたからと、何度も自分に言い聞かせるけれど、改めてそう考えると胸がちくんと寂しく痛む。

 その上、跡継ぎがほしいだなんて言われたら……!?

 そこまで考えて、思わずありもしない映像を想像してしまった。

 えええええー!
 そんなの無理無理無理!

 余計なことまで考えてしまって一瞬顔が熱くなるが、その直後冷静に考えて青ざめる。

 私ったら何余計なことを考えているの……っ!


「とりあえずは顔合わせの日をどう乗り越えるかだな~」
 

 肩代わりしてもらった借金のこともある。万が一ライアンへの私の印象が悪く、やっぱり婚約はなかったことにしようだなんて言われたら、両家に関わることだ。

 何が何でも失態を犯さないようにしなければならない。

 とりあえずの顔合わせの日程を伝えられたが、不安は一層つのるばかりだった。

 そうしているうちに私とライアンの顔合わせの日がやってきてしまった。

 やれやれ、果たしてどうなることやら……。
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