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第4話 第二写(下)でも、この写真をどうやって……
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翌日、双葉が再び写真館にやってきた。
「写真、できていますよ」
そう言って店主は双葉にソファーを勧め、自分のスマホを取り出した。
「わざわざまたお越しいただくこともないかと思ったのですが、スマホの操作に自信がなくて……えっと、こうするのか。トークというのかな、見ていただけますか」
双葉も自分のスマホを取り出し、店主とのトークを確認した。
「あ、写真が来ています。男女の後ろ姿が写っています」
「大きく開いてみて下さい。」
「これ、私たちです!それもあの花火大会の時の!」
神社の祭礼の幟がはためく中の、浴衣の男女の後ろ姿。女性の顔は見えないが、花火を見ているのか、少し上を見ている。男性の方は花火ではなく女性の方を向いて、ちょっと緊張した面持ちで、何かを話しかけようとしている。
「わかりますか」
「ええ、この場所、よく覚えています。そしてこの浴衣、私のです。彼の浴衣にも見覚えがあります。これは確かに、彼が『来年も再来年もこの花火を一緒に見たい』と言ってくれた時です」
昨日の思い詰めた表情とはうって変わり、双葉はまさに喜色満面という笑顔を見せた。
「ああよかった。デジタル写真はまだ自信が全然なくて」
「ありがとうございます!あの日はお互いを撮ったり、花火を撮ったりしたのですが、今思えば大切な日なのに、二人の写真を撮り忘れていたんです。でも、この写真をどうやって……」
「それはお聞きにならないで下さい。でもこれは確かにあった光景なのですよ。彼氏さんには、友達が偶然撮った写真を、今になって送ってきたとでもおっっしゃって下さい」
「わかりました。それで、代金はいくらお支払いすればよろしいですか」
「それが困ったことに、スマホに写真を送った時の料金は決めていないのです。そうですね、三百円でいかがでしょうか」
「三百円ですか」
「デジタルなのでちょっと手間取った分少し高めにさせていただいたのですが、高かったでしょうか」
「いえ、こんな大切な写真を三百円では申し訳ないです」
「いえいえ、他店様でもデジタルプリント一枚でそんなにいただいていないので、それ以上いただく訳にはいきません。それよりも、早く彼氏さんにこの写真を見せてあげて下さい」
「わかりました。お言葉に甘えます。その代り、卒業記念の写真はここでお願いします」
「それはどうもありがとうございます」
写真館を辞した双葉は、さっそくラインで彼、関口孝次に「会いたい」とメッセージを送った。すぐに既読が付き、三十分後、大学近くのいつもの喫茶店に孝次がやって来た。
「急にごめんね」
「いいけど、どうしたの」
「同じゼミの友だちがね、こんな写真を送って来たの。スマホの機種変更の前に写真を整理していて見つけたって」
双葉はスマホを孝次に見せた。
「花火大会の写真の中にあったけど、この浴衣姿、双葉じゃないかって」
「これ、あの時か!わかる、わかるよ。それに、隣にいるのは俺だ。まさか二人の後ろ姿を撮られていたとはなあ」
孝次は驚きの声を上げた。
「なんか恥ずかしいな。双葉に、来年も再来年も一緒に花火を見ようって言った時だ。双葉が『はい』って言ってくれて、とっても嬉しかったなあ」
そう言って孝次は少し考え込んだあと、双葉の目をしっかり見てこう続けた。
「双葉、俺、最近もやもやしていて、双葉に心配かけたよな。双葉に心配かけているってわかってはいたんだけど、気持ちの整理がつかなくて」
「ううん、私は大丈夫」
「この写真を見て、あの時の気持ちを思い出したよ。あの時の嬉しさは、忘れちゃいけないよな」
「私も嬉しかったし、忘れてないよ」
「そうだよ。俺にとって一番大切なことは、双葉と一緒にいるってことだ」
「私もだよ」
「双葉、十年後、二十年後、いや、五十年後、六十年後も一緒にいてくれるかい」
「はい!」
「ありがとう。本当にありがとう」
それから二人は出会った頃の話、そしてこれからの二人の話を続けた。コーヒーに口をつけるのもすっかり忘れて。
「写真、できていますよ」
そう言って店主は双葉にソファーを勧め、自分のスマホを取り出した。
「わざわざまたお越しいただくこともないかと思ったのですが、スマホの操作に自信がなくて……えっと、こうするのか。トークというのかな、見ていただけますか」
双葉も自分のスマホを取り出し、店主とのトークを確認した。
「あ、写真が来ています。男女の後ろ姿が写っています」
「大きく開いてみて下さい。」
「これ、私たちです!それもあの花火大会の時の!」
神社の祭礼の幟がはためく中の、浴衣の男女の後ろ姿。女性の顔は見えないが、花火を見ているのか、少し上を見ている。男性の方は花火ではなく女性の方を向いて、ちょっと緊張した面持ちで、何かを話しかけようとしている。
「わかりますか」
「ええ、この場所、よく覚えています。そしてこの浴衣、私のです。彼の浴衣にも見覚えがあります。これは確かに、彼が『来年も再来年もこの花火を一緒に見たい』と言ってくれた時です」
昨日の思い詰めた表情とはうって変わり、双葉はまさに喜色満面という笑顔を見せた。
「ああよかった。デジタル写真はまだ自信が全然なくて」
「ありがとうございます!あの日はお互いを撮ったり、花火を撮ったりしたのですが、今思えば大切な日なのに、二人の写真を撮り忘れていたんです。でも、この写真をどうやって……」
「それはお聞きにならないで下さい。でもこれは確かにあった光景なのですよ。彼氏さんには、友達が偶然撮った写真を、今になって送ってきたとでもおっっしゃって下さい」
「わかりました。それで、代金はいくらお支払いすればよろしいですか」
「それが困ったことに、スマホに写真を送った時の料金は決めていないのです。そうですね、三百円でいかがでしょうか」
「三百円ですか」
「デジタルなのでちょっと手間取った分少し高めにさせていただいたのですが、高かったでしょうか」
「いえ、こんな大切な写真を三百円では申し訳ないです」
「いえいえ、他店様でもデジタルプリント一枚でそんなにいただいていないので、それ以上いただく訳にはいきません。それよりも、早く彼氏さんにこの写真を見せてあげて下さい」
「わかりました。お言葉に甘えます。その代り、卒業記念の写真はここでお願いします」
「それはどうもありがとうございます」
写真館を辞した双葉は、さっそくラインで彼、関口孝次に「会いたい」とメッセージを送った。すぐに既読が付き、三十分後、大学近くのいつもの喫茶店に孝次がやって来た。
「急にごめんね」
「いいけど、どうしたの」
「同じゼミの友だちがね、こんな写真を送って来たの。スマホの機種変更の前に写真を整理していて見つけたって」
双葉はスマホを孝次に見せた。
「花火大会の写真の中にあったけど、この浴衣姿、双葉じゃないかって」
「これ、あの時か!わかる、わかるよ。それに、隣にいるのは俺だ。まさか二人の後ろ姿を撮られていたとはなあ」
孝次は驚きの声を上げた。
「なんか恥ずかしいな。双葉に、来年も再来年も一緒に花火を見ようって言った時だ。双葉が『はい』って言ってくれて、とっても嬉しかったなあ」
そう言って孝次は少し考え込んだあと、双葉の目をしっかり見てこう続けた。
「双葉、俺、最近もやもやしていて、双葉に心配かけたよな。双葉に心配かけているってわかってはいたんだけど、気持ちの整理がつかなくて」
「ううん、私は大丈夫」
「この写真を見て、あの時の気持ちを思い出したよ。あの時の嬉しさは、忘れちゃいけないよな」
「私も嬉しかったし、忘れてないよ」
「そうだよ。俺にとって一番大切なことは、双葉と一緒にいるってことだ」
「私もだよ」
「双葉、十年後、二十年後、いや、五十年後、六十年後も一緒にいてくれるかい」
「はい!」
「ありがとう。本当にありがとう」
それから二人は出会った頃の話、そしてこれからの二人の話を続けた。コーヒーに口をつけるのもすっかり忘れて。
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