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第四章 二人だけの秘め事
4-3.繋がり合う気持ちⅠ※
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「どうしてあんな嘘をつくの?」
家に着き、エリアスの部屋の前でレイヤは訝しげに彼を見上げていた。
「あれは、モーゼフさんに言われた合い言葉だよ。つまり、二人きりで過ごす為の口実さ」
……やはり、まだ何か企んでいた。レイヤは眉を寄せると「ごめんごめん」と彼はレイヤの肩を撫でる。
そうして彼に導かれ、部屋に入るとようやく繋いだ手を解かれた。しかし、今度は背後から覆い被さるように抱き締められ、レイヤは少し驚嘆して慌てて彼を振り返った。
「こうでもしないと、二人きりになんてなれないだろって。モーゼフさんが気を遣ってくれたからね。だから厚意に甘えることにしたんだよ」
「だけど……ラウラおばさんに嘘吐いて、何だかこんなの悪いような気がするよ」
思ったままを伝えると、彼はクスクスと軽い笑いを溢す。
「そうだね。レイヤは何も知らなかったんだもの。僕とモーゼフさんでしっかりと謝るよ」
だから気負わないで。と優しく宥められ、レイヤは戸惑いつつも頷いた。
しかし本当に二人きりだ。開いた窓の外は未だ薄明るいが、外から人の声もしない。周囲はひっそりとした静謐に包まれており、背後から自分を抱き締めるエリアスの吐息の音だけが響くもので、妙に胸が早鐘を打つ。
──二人きり。昨日の続き。今は阻む者は誰もいない。
これからするであろう事が必然的に連想出来るもので、レイヤの頬はほんのりと薔薇色に色付いた。別に拒むような事でもないし、嫌ではないと思う。しかし、交接は子を宿す行為だ。
自分達は旅人だ。身重になってしまえば困難でないか不安を思い出し、レイヤは後ろから抱き締める彼を見上げた。
「ねぇ、エリアス。続きってその、するんだよね。私……エリアスの子供なら産んだっていいって思うけど……赤ちゃんが出来ちゃったら旅が大変になっちゃいそう……」
率直に告げると、エリアスは目を丸くした。やがて彼の頬には朱が帯びて、口をモゴモゴと動かしつつ、何度も目をしばたたく。
「どうしたの……」
「ん……。僕の子供なら産んだっていいって、嬉しくて。僕のお嫁さんになったって良いって事なんだなって思うと、どう形容して良いか分からない程に幸せだなって思って……」
そう思ってくれて、ありがとう。と、彼は穏やかに告げると、レイヤの膝に手を入れてふわりと抱き上げる。
「絶対って保証は無いだろうけど、君が身籠もらないように僕が善処するよ。それにね、レイヤは知ってるかな……こういう行為は子供を作るだけの目的だけじゃないんだよ」
エリアスは丁寧な所作でレイヤをベッドに下ろす。意味が理解出来ず首を傾げると、エリアスはレイヤの顔を覗き込んで、優しい笑みを向けた。
「言葉にするとちょっと恥ずかしいけど……愛を確かめ合うとか一緒に快楽を共有するとでも言えばいいかな。もう我慢出来ない程、君が欲しくて堪らないから……抱きたいって思うのはダメかな?」
ちゅ。と、愛おしげに瞼や頬に口付けて言われたものだから、レイヤはこそばゆさに身じろぎする。愛おしいという言葉が温かく嬉しくて堪らない。レイヤは戸惑いつつも頷いた。
「恥ずかしいかもしれないけど、怖い事はしないって約束するよ。それに僕だって恥ずかしい場所を晒すし、君に見られるだろうから……既に恥ずかしいしすごくドキドキしてる」
彼はレイヤの手をやんわりと掴んで胸に導いた。確かにドクドクと彼の胸が高鳴っている事が分かる。端正な面に差した朱も先程より濃くなっており、真摯に見つめる瞳も潤って揺れており途方もない色香があった。それに触発されるように、ドッとレイヤの頬にも熱が帯びた。
それでも視線が逸らせない。食い入るように見つめてしまうと、彼は少しばかり照れくさそうに笑んで、レイヤの頬を撫でる。
「恥ずかしいのお互い様かもね? ちょっと不安なのが、君に少し痛い思いさせちゃうかもしれないけど」
「痛いのは、別に大丈夫だと思う……」
「そう。だけど多分、止めれる自信が無いんだよ?」
──大丈夫。と言う前に、微かに震えた唇を塞がれた。
角度を変えて何度も食まれ、次第にその口付けは濃厚なものに変わり果てる。
ヌルりとした熱い塊──彼の舌が唇の隙間から滑り込んで、レイヤは肩をプルプルと震わせる。それを宥めるように、エリアスは肩や背を撫でて更に口付けを深くした。
舌を見つけて、やんわりと絡ませると、次第にピチャピチャとした水音が頭の中いっぱいに鳴り響く。それが酷く淫靡に思えてしまい、強い羞恥にレイヤが身を引こうとすれば、彼は背に回した腕の力を強めて更にきつく抱き寄せる。〝逃がさない〟と言わんばかりに口蓋を舐られると、頭の中で星がまたたく心地がした。
「はぅ……んぅ、んぅ」
吐息は次第に甘いものに変わり果て、薄くレイヤが睫を持ち上げると、間近に彼の顔が映る。彼も彼で薄く瞼を開いており、極光に似た色の瞳は悦楽に蕩けており、普段微塵も感じさせない劣欲を強くたたえている。
「はっ……ん、えりあ、す……」
僅かに開いた隙間で彼を呼ぼうとした途端、肩を押されてやんわりとベッドに押し倒された。その上に彼は覆い被さり、角度を変えて何度もレイヤの唇の中を貪り続けた。頭に響く淫靡な水音に支配され、やがて頭がぼんやりとしてきたと同時だった──肩に置かれた手が、デコルテを下り胸の僅かな膨らみに辿り着いたと同時、レイヤは大きく背を震わせた。
「あっ……ぅ、えりあ、す!」
慌てて唇から逃げると、エリアスは舌を出したまま名残惜しそうな視線でレイヤを見据える。
「ん……胸、触られるの嫌?」
決してそうではないが……。彼はレイヤの胸に手を置いたまま、少しばかり心配気に訊いた。
「そうじゃ……なくて、その私……そこ、小さいから」
恥ずかしい。と言えば、彼は形の良い唇に弧を描く。
「ん……僕は可愛いと思うよ。掌に収まって柔らかくて……」
その存在を確かめるように、丸く捏ねられると何とも言えぬ甘やかな感触が背筋に這う。恥ずかしいが心地良い。まるで宙を彷徨う心地になった矢先──彼がぷちぷちとブラウスのボタンを外し始めるものだから、現に戻ったレイヤは首を横に振った。
「まって……」
慌てて彼の腕を掴むと、彼は少し困ったような表情を浮かべつつも笑む。
「君の全部見たいもの。そうだね。君が恥ずかしくないように僕も脱ぐよ」
そう言って彼は、レイヤから手を引くとシャツのボタンを二つ外して捲り上げるように脱ぐ。
彼は縦に細長い体躯だ。筋肉なんか皆無に等しいと思っていたが、シャツの下に秘められた肉体は意外にも逞しかった。胸板は厚くないものの、腹筋が割れており、引き締まった体躯は神聖な彫刻のように見えてしまう。レイヤは目を丸くして思わず彼に見入ってしまった。
「うん、なんか分かるかも……あんまり見られたら恥ずかしいかも」
少しばかり照れくさそうに言って、エリアスは再びレイヤのブラウスに手をかけた。しかし、ブラウスを脱がすだけに留まらず、丁寧な手つきでショーツとアンダードレス一枚に剥がれてしまった。
堪らぬ羞恥にカッっと頬を赤く染めると、彼は額に瞼に甘やかなキスの雨を降らせた。
「恥ずかしいかな。でも、君が売られていた時の格好の比じゃないと思うよ?」
宥めるように言われて、レイヤはおどおどと頷いた。確かにそうだ。あの時と言えば、身体全てが透けてしまいそうなワンピースを着せられていたのだ。
「だけど今の方が、恥ずかしい……」
「そうかもね。この後全部脱がせちゃうし、ドキドキしてるの伝わってくるもの」
囁くように告げて直ぐ。彼の吐息が外耳を擽った。すると、瞬く間に耳の中いっぱいに浅ましい水音が響き渡る。昨晩されたのと同じ──耳を舐られている。脳裏を揺さぶる官能にレイヤは折り曲げた膝をガクガクと戦慄かせる。
「はぅ……ぁぁ、んぁああ! えりあ、す……! だめ、んぁ、あああ!」
「だめ? こんなに可愛い声が漏れてるのに?」
囁かれる声が酷く鼓膜を揺さぶった。それもゾッとするほどに甘やかなものだったので、レイヤは目を固く瞑りピクピクと震え上がる。
「──っあ!」
ピチャリと耳の輪郭を舐られると、またもあられもない声が漏れそうになってしまった。レイヤは慌てて唇を手で押さえるが、彼はやんわりとその手を振り解いて繋いでしまう。
「……昨晩、舐めた時思ったけどさ。レイヤって耳が弱いよね。胸を触っても反応が可愛いし、どこもかしこも弱いのかな。可愛い声もっと聞きたいよ」
甘やかに強請られ、火をつけたようにドッと身体中が熱くなる。
「ま、待って……」
しかし、次の瞬間──再び頭いっぱいに浅ましい水音が響き初め、レイヤの唇からは甘い声がひっきりなしに漏れた。
「はぅ、あ! ぁああ! んぁああ!」
身を捩ろうとするが、全身が蕩けたかのよう。力が上手く入らない。やがて、デコルテに置かれた彼の手が再び胸に辿り着き、形を確かめるように丸く揉み始めた。
「あんっ……ぁあ! あぁぅ……」
一際甘い声が漏れたと同時だった。彼は胸の頂の飾りをクニクニと転がし始めたのだ。それはもう、布越しでも指紋が擦り付きそうな程に執着的に……。
何とも言えぬ甘美な痺れが背筋に滞る。頭の中がぼんやりと靄がかかりはじめ、腹の奥が酷く熱くなってきた。レイヤが膝を摺り合わたと同時、彼は耳への愛撫を止め、首筋から胸元に向かって舌を這わせ始めた。それが妙にこそばゆく感じて身じろぎするが、アンダードレスのボタンを弾かれ、秘された胸部が露わになったと同時──甘やかな官能が走ってレイヤは目をきつく瞑った。
さらりとアンダードレスを剥ぎ取られ、怖々と目を開くと、彼が胸の飾りに舌を絡めているのが見えてしまった。
乳輪全体を食むように吸われたかと思うと、唇の中でねっとりと熱い舌に突起が転がされるのが分かり、レイヤは目を瞠ってガタガタと全身を戦慄かせる。
胸を吸うなど、赤ん坊のような事を。立派な大人である彼がこんな事をするなど、信じられない。しかし、その様があまりに淫靡に思えてしまい、レイヤは与えられる官能に首を横に振って悶える。
「あんっ……ぁ、あああ! えり、あす! わたし、おっぱい、でないよ、だめっ! あっ」
「妊娠してないからそりゃそうだよ。ここだって女の子が気持ち良い場所らしいけど……レイヤ気持ち良さそうだね?」
胸の突起を食みつつ言われるが、その息が更に神経をより過敏にさせた。腹の奥の熱がまるで氷を溶かすように何かが滴り始めた事を感じて、レイヤは膝を摺り合わせる。それに気付いたのか彼は膝に手を置き、大腿の内側を摩るように撫で始めた。
「はっ……んぅ、ぁああ! えり、あす……ぁあ……」
堪らなくなって、彼の頭を胸から剥がそうとした途端、ちらりと視線が合わさった。その面を見た途端、レイヤはゾッとしてしまった。
家に着き、エリアスの部屋の前でレイヤは訝しげに彼を見上げていた。
「あれは、モーゼフさんに言われた合い言葉だよ。つまり、二人きりで過ごす為の口実さ」
……やはり、まだ何か企んでいた。レイヤは眉を寄せると「ごめんごめん」と彼はレイヤの肩を撫でる。
そうして彼に導かれ、部屋に入るとようやく繋いだ手を解かれた。しかし、今度は背後から覆い被さるように抱き締められ、レイヤは少し驚嘆して慌てて彼を振り返った。
「こうでもしないと、二人きりになんてなれないだろって。モーゼフさんが気を遣ってくれたからね。だから厚意に甘えることにしたんだよ」
「だけど……ラウラおばさんに嘘吐いて、何だかこんなの悪いような気がするよ」
思ったままを伝えると、彼はクスクスと軽い笑いを溢す。
「そうだね。レイヤは何も知らなかったんだもの。僕とモーゼフさんでしっかりと謝るよ」
だから気負わないで。と優しく宥められ、レイヤは戸惑いつつも頷いた。
しかし本当に二人きりだ。開いた窓の外は未だ薄明るいが、外から人の声もしない。周囲はひっそりとした静謐に包まれており、背後から自分を抱き締めるエリアスの吐息の音だけが響くもので、妙に胸が早鐘を打つ。
──二人きり。昨日の続き。今は阻む者は誰もいない。
これからするであろう事が必然的に連想出来るもので、レイヤの頬はほんのりと薔薇色に色付いた。別に拒むような事でもないし、嫌ではないと思う。しかし、交接は子を宿す行為だ。
自分達は旅人だ。身重になってしまえば困難でないか不安を思い出し、レイヤは後ろから抱き締める彼を見上げた。
「ねぇ、エリアス。続きってその、するんだよね。私……エリアスの子供なら産んだっていいって思うけど……赤ちゃんが出来ちゃったら旅が大変になっちゃいそう……」
率直に告げると、エリアスは目を丸くした。やがて彼の頬には朱が帯びて、口をモゴモゴと動かしつつ、何度も目をしばたたく。
「どうしたの……」
「ん……。僕の子供なら産んだっていいって、嬉しくて。僕のお嫁さんになったって良いって事なんだなって思うと、どう形容して良いか分からない程に幸せだなって思って……」
そう思ってくれて、ありがとう。と、彼は穏やかに告げると、レイヤの膝に手を入れてふわりと抱き上げる。
「絶対って保証は無いだろうけど、君が身籠もらないように僕が善処するよ。それにね、レイヤは知ってるかな……こういう行為は子供を作るだけの目的だけじゃないんだよ」
エリアスは丁寧な所作でレイヤをベッドに下ろす。意味が理解出来ず首を傾げると、エリアスはレイヤの顔を覗き込んで、優しい笑みを向けた。
「言葉にするとちょっと恥ずかしいけど……愛を確かめ合うとか一緒に快楽を共有するとでも言えばいいかな。もう我慢出来ない程、君が欲しくて堪らないから……抱きたいって思うのはダメかな?」
ちゅ。と、愛おしげに瞼や頬に口付けて言われたものだから、レイヤはこそばゆさに身じろぎする。愛おしいという言葉が温かく嬉しくて堪らない。レイヤは戸惑いつつも頷いた。
「恥ずかしいかもしれないけど、怖い事はしないって約束するよ。それに僕だって恥ずかしい場所を晒すし、君に見られるだろうから……既に恥ずかしいしすごくドキドキしてる」
彼はレイヤの手をやんわりと掴んで胸に導いた。確かにドクドクと彼の胸が高鳴っている事が分かる。端正な面に差した朱も先程より濃くなっており、真摯に見つめる瞳も潤って揺れており途方もない色香があった。それに触発されるように、ドッとレイヤの頬にも熱が帯びた。
それでも視線が逸らせない。食い入るように見つめてしまうと、彼は少しばかり照れくさそうに笑んで、レイヤの頬を撫でる。
「恥ずかしいのお互い様かもね? ちょっと不安なのが、君に少し痛い思いさせちゃうかもしれないけど」
「痛いのは、別に大丈夫だと思う……」
「そう。だけど多分、止めれる自信が無いんだよ?」
──大丈夫。と言う前に、微かに震えた唇を塞がれた。
角度を変えて何度も食まれ、次第にその口付けは濃厚なものに変わり果てる。
ヌルりとした熱い塊──彼の舌が唇の隙間から滑り込んで、レイヤは肩をプルプルと震わせる。それを宥めるように、エリアスは肩や背を撫でて更に口付けを深くした。
舌を見つけて、やんわりと絡ませると、次第にピチャピチャとした水音が頭の中いっぱいに鳴り響く。それが酷く淫靡に思えてしまい、強い羞恥にレイヤが身を引こうとすれば、彼は背に回した腕の力を強めて更にきつく抱き寄せる。〝逃がさない〟と言わんばかりに口蓋を舐られると、頭の中で星がまたたく心地がした。
「はぅ……んぅ、んぅ」
吐息は次第に甘いものに変わり果て、薄くレイヤが睫を持ち上げると、間近に彼の顔が映る。彼も彼で薄く瞼を開いており、極光に似た色の瞳は悦楽に蕩けており、普段微塵も感じさせない劣欲を強くたたえている。
「はっ……ん、えりあ、す……」
僅かに開いた隙間で彼を呼ぼうとした途端、肩を押されてやんわりとベッドに押し倒された。その上に彼は覆い被さり、角度を変えて何度もレイヤの唇の中を貪り続けた。頭に響く淫靡な水音に支配され、やがて頭がぼんやりとしてきたと同時だった──肩に置かれた手が、デコルテを下り胸の僅かな膨らみに辿り着いたと同時、レイヤは大きく背を震わせた。
「あっ……ぅ、えりあ、す!」
慌てて唇から逃げると、エリアスは舌を出したまま名残惜しそうな視線でレイヤを見据える。
「ん……胸、触られるの嫌?」
決してそうではないが……。彼はレイヤの胸に手を置いたまま、少しばかり心配気に訊いた。
「そうじゃ……なくて、その私……そこ、小さいから」
恥ずかしい。と言えば、彼は形の良い唇に弧を描く。
「ん……僕は可愛いと思うよ。掌に収まって柔らかくて……」
その存在を確かめるように、丸く捏ねられると何とも言えぬ甘やかな感触が背筋に這う。恥ずかしいが心地良い。まるで宙を彷徨う心地になった矢先──彼がぷちぷちとブラウスのボタンを外し始めるものだから、現に戻ったレイヤは首を横に振った。
「まって……」
慌てて彼の腕を掴むと、彼は少し困ったような表情を浮かべつつも笑む。
「君の全部見たいもの。そうだね。君が恥ずかしくないように僕も脱ぐよ」
そう言って彼は、レイヤから手を引くとシャツのボタンを二つ外して捲り上げるように脱ぐ。
彼は縦に細長い体躯だ。筋肉なんか皆無に等しいと思っていたが、シャツの下に秘められた肉体は意外にも逞しかった。胸板は厚くないものの、腹筋が割れており、引き締まった体躯は神聖な彫刻のように見えてしまう。レイヤは目を丸くして思わず彼に見入ってしまった。
「うん、なんか分かるかも……あんまり見られたら恥ずかしいかも」
少しばかり照れくさそうに言って、エリアスは再びレイヤのブラウスに手をかけた。しかし、ブラウスを脱がすだけに留まらず、丁寧な手つきでショーツとアンダードレス一枚に剥がれてしまった。
堪らぬ羞恥にカッっと頬を赤く染めると、彼は額に瞼に甘やかなキスの雨を降らせた。
「恥ずかしいかな。でも、君が売られていた時の格好の比じゃないと思うよ?」
宥めるように言われて、レイヤはおどおどと頷いた。確かにそうだ。あの時と言えば、身体全てが透けてしまいそうなワンピースを着せられていたのだ。
「だけど今の方が、恥ずかしい……」
「そうかもね。この後全部脱がせちゃうし、ドキドキしてるの伝わってくるもの」
囁くように告げて直ぐ。彼の吐息が外耳を擽った。すると、瞬く間に耳の中いっぱいに浅ましい水音が響き渡る。昨晩されたのと同じ──耳を舐られている。脳裏を揺さぶる官能にレイヤは折り曲げた膝をガクガクと戦慄かせる。
「はぅ……ぁぁ、んぁああ! えりあ、す……! だめ、んぁ、あああ!」
「だめ? こんなに可愛い声が漏れてるのに?」
囁かれる声が酷く鼓膜を揺さぶった。それもゾッとするほどに甘やかなものだったので、レイヤは目を固く瞑りピクピクと震え上がる。
「──っあ!」
ピチャリと耳の輪郭を舐られると、またもあられもない声が漏れそうになってしまった。レイヤは慌てて唇を手で押さえるが、彼はやんわりとその手を振り解いて繋いでしまう。
「……昨晩、舐めた時思ったけどさ。レイヤって耳が弱いよね。胸を触っても反応が可愛いし、どこもかしこも弱いのかな。可愛い声もっと聞きたいよ」
甘やかに強請られ、火をつけたようにドッと身体中が熱くなる。
「ま、待って……」
しかし、次の瞬間──再び頭いっぱいに浅ましい水音が響き初め、レイヤの唇からは甘い声がひっきりなしに漏れた。
「はぅ、あ! ぁああ! んぁああ!」
身を捩ろうとするが、全身が蕩けたかのよう。力が上手く入らない。やがて、デコルテに置かれた彼の手が再び胸に辿り着き、形を確かめるように丸く揉み始めた。
「あんっ……ぁあ! あぁぅ……」
一際甘い声が漏れたと同時だった。彼は胸の頂の飾りをクニクニと転がし始めたのだ。それはもう、布越しでも指紋が擦り付きそうな程に執着的に……。
何とも言えぬ甘美な痺れが背筋に滞る。頭の中がぼんやりと靄がかかりはじめ、腹の奥が酷く熱くなってきた。レイヤが膝を摺り合わたと同時、彼は耳への愛撫を止め、首筋から胸元に向かって舌を這わせ始めた。それが妙にこそばゆく感じて身じろぎするが、アンダードレスのボタンを弾かれ、秘された胸部が露わになったと同時──甘やかな官能が走ってレイヤは目をきつく瞑った。
さらりとアンダードレスを剥ぎ取られ、怖々と目を開くと、彼が胸の飾りに舌を絡めているのが見えてしまった。
乳輪全体を食むように吸われたかと思うと、唇の中でねっとりと熱い舌に突起が転がされるのが分かり、レイヤは目を瞠ってガタガタと全身を戦慄かせる。
胸を吸うなど、赤ん坊のような事を。立派な大人である彼がこんな事をするなど、信じられない。しかし、その様があまりに淫靡に思えてしまい、レイヤは与えられる官能に首を横に振って悶える。
「あんっ……ぁ、あああ! えり、あす! わたし、おっぱい、でないよ、だめっ! あっ」
「妊娠してないからそりゃそうだよ。ここだって女の子が気持ち良い場所らしいけど……レイヤ気持ち良さそうだね?」
胸の突起を食みつつ言われるが、その息が更に神経をより過敏にさせた。腹の奥の熱がまるで氷を溶かすように何かが滴り始めた事を感じて、レイヤは膝を摺り合わせる。それに気付いたのか彼は膝に手を置き、大腿の内側を摩るように撫で始めた。
「はっ……んぅ、ぁああ! えり、あす……ぁあ……」
堪らなくなって、彼の頭を胸から剥がそうとした途端、ちらりと視線が合わさった。その面を見た途端、レイヤはゾッとしてしまった。
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