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第五章 慟哭
5-2.守りたい愛しき人※
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夕食を済ませた後、ルードヴィヒは入浴を済ませた。〝湯浴みをしたらまた戻って来る〟と言ったので、本でも読んで過ごしていると思ったが──部屋に戻ればイルゼが緊張した面でベッドの上にちょこんと座っていたので、何事かとルードヴィヒは目をしばたたく。
「え、どしたのイルゼ……」
いったい何が何だか。と、いった具合で尋ねれば、彼女はあわあわと小さな唇を動かして頬を赤らめた。
「あ、あの……」
「ん。どうした?」
「夜伽、今日もするのかなって思っただけで……」
確かに一昨日に初めて彼女を抱いて、昨日も一緒に床を共にした時、堪らなくなって思わず手を出してしまったが……。
しかし、自分でも猿かと思う程の欲情ぶりである。娼婦に無理矢理組み敷かれたって性的興奮なんて、ろくに覚えもしなかった癖にイルゼを相手にすればこうだ。
ベッドの上で膝を抱えて座る彼女の膝小僧を一瞥しただけで、妙に腹の奥に疼くものを直ぐに自覚した。
……猿は言い過ぎかもしれないが、一般的にいう思春期さながらの反応だろう。もうそんな時期とっくに過ぎ去っているにも関わらずなぜこうか。そんな自分に呆れつつ、ルードヴィヒはこめかみを揉んで、ふるふると首を横に振るう。
「……いや。夜伽じゃないけど。俺、言ったじゃん。イルゼの恋人だって。イルゼを好きだからキスするんだし、その先だってしたくなっちゃうし……だから合意得て抱いてるだけなんだけど?」
自分で言葉にしていて、妙に気恥ずかしくなる。どうにもイルゼが健気で初すぎる所為もあるだろう。ルードヴィヒは熱を帯びた頬を冷ますように、何度もゆるゆると首を振るう。しかし、イルゼが更に紅潮する様を見ていると妙に嗜虐心も疼いてくる。
……昨日も彼女の脚の間に散々に顔を埋めて味わうように貪った。
(そしたら、お漏らししそうだから止めてって泣かれたんだっけか……)
皺が寄る程にシーツを掴んで、胸を上下させる様。自分のものを嵌め込んだ時、薄い腹が僅かに膨らむ様……そんな事を思い出してしまうとみるみるうちに欲が膨れてくる。ルードヴィヒは深く息を吐いて、ベッドの縁に腰掛けた。
「いい? そもそも夜伽ってゆーのは対等な関係じゃ成り立たねーから。夜伽っていうのは、男が気持ち良ければ終了なの。分かる?」
背後で座るイルゼの方を向いて言うと、彼女はおどおどとしつつも頷いた。
「だけど……その……」
未だ何か言いたげだ。神妙に思って、ルードヴィヒもベッドに上がってあぐらをかくと、イルゼはもじもじと詰め寄ってきた。
「私ばっかり気持ち良くなって……その、ルイが……満足してなかったら心配で」
そう言われて、ルードヴィヒは驚嘆のあまりに唇を開き、目を大きく瞠った。
しかし、こんな事を言うのは、どこからの入れ知恵に違いない。否、彼女と深く関わる者といえばメラニーしか居ない。
……イルゼとの関係なんて報告なんてしていないが、彼女がシーツの洗濯をしているのだ。破瓜の血の残骸は見ただろうし、こういった吹き込みは、あの女ならやりかねないだろうとは思った。
何せ元盗賊だ。手癖が悪いだけでなく、盗む為なら手段を選ばず、娼婦に化けて近隣領地の娼館の金をちょろまかして逃げたなんて武勇伝も聞いた。絶対そうだろう。間違いない。……と、思ったものの、ベッドサイドに置かれた本を見て、メラニーではないだろうと直ぐに思い正した。
自分の入れ知恵の所為か、イルゼはよく読書をするようになった。中でもどうやら詩集や恋愛物語が気に入ったようで、決まって部屋にはその手の本が積まれている。
本人が作者別に整理をしたので、場所も熟知しているのだだろう。今は以前彼女に勧めた過激な恋愛小説の同作者の本が三冊も置かれていた。
このうちの一冊は盗賊の男が姫君を攫う物語だ。次第に惹かれ合う純愛ではあるが、その中には男のものを口淫する……と、過激な描写が含まれる。間違いない。きっとこの所為だろう。確信しつつも困惑したルードヴィヒはこめかみを揉んで目を細めた。
「えっと、ルイ……?」
「そんなのイルゼは気にしなくて良いの。っていうか俺イルゼの中でイってるでしょ。つまり気持ち良いの」
だから満足。と言うが、それでもどこか不安そうな顔をするので、ルードヴィヒは嗜虐的な笑みを浮かべつつイルゼを抱き寄せ、啄むようなキスを落とす。
「ねー逆に聞くけどさぁ、俺の咥えて舐められる?」
勃起したペニスなんて、よく見なくたってグロテスクなのに。と、やや呆れた口調で言うと、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「その……大きいから、怖いなとは思うけど。でもルイのなら……大丈夫かもって思って。私、恋愛初めてで。こういう事ってよく分からなくて……どうしたら喜んでくれるのかなってずっと考えちゃって……」
ただそれだけで、イルゼの言わんとしている事や思考回路がなんとなく理解出来た。
つまり、分からないから本で仕入れて学んだのだろう。それを改めて理解すると、なんとも初で健気で可愛いらしい恋人なのだと思えてしまい、微笑ましさに自然と笑みが溢れてくる。ルードヴィヒが肩を揺すって笑ってしまうと、イルゼは戸惑った面を上げた。
しかし、身長差があるので、どうにも上目使いに見えてしまいこれがまた愛らしい。
「背伸びしなくたって良いんだよ?」
穏やかに言って頬や額に口付けると、彼女はこそばゆそうに身を縮める。
体躯も小さく細い所為もあるからだろう。そんな仕草が何だか小動物のように思えてしまう。唇を重ね合えば、プルプルと震える様もまさにうさぎのよう。そんなイルゼを壊してしまわぬように、ルードヴィヒは向かい合わせで座らせて彼女を優しく抱き直す。
そうして甘い口付けが深くなり、今宵も甘やかな一夜が幕を開けた。
「え、どしたのイルゼ……」
いったい何が何だか。と、いった具合で尋ねれば、彼女はあわあわと小さな唇を動かして頬を赤らめた。
「あ、あの……」
「ん。どうした?」
「夜伽、今日もするのかなって思っただけで……」
確かに一昨日に初めて彼女を抱いて、昨日も一緒に床を共にした時、堪らなくなって思わず手を出してしまったが……。
しかし、自分でも猿かと思う程の欲情ぶりである。娼婦に無理矢理組み敷かれたって性的興奮なんて、ろくに覚えもしなかった癖にイルゼを相手にすればこうだ。
ベッドの上で膝を抱えて座る彼女の膝小僧を一瞥しただけで、妙に腹の奥に疼くものを直ぐに自覚した。
……猿は言い過ぎかもしれないが、一般的にいう思春期さながらの反応だろう。もうそんな時期とっくに過ぎ去っているにも関わらずなぜこうか。そんな自分に呆れつつ、ルードヴィヒはこめかみを揉んで、ふるふると首を横に振るう。
「……いや。夜伽じゃないけど。俺、言ったじゃん。イルゼの恋人だって。イルゼを好きだからキスするんだし、その先だってしたくなっちゃうし……だから合意得て抱いてるだけなんだけど?」
自分で言葉にしていて、妙に気恥ずかしくなる。どうにもイルゼが健気で初すぎる所為もあるだろう。ルードヴィヒは熱を帯びた頬を冷ますように、何度もゆるゆると首を振るう。しかし、イルゼが更に紅潮する様を見ていると妙に嗜虐心も疼いてくる。
……昨日も彼女の脚の間に散々に顔を埋めて味わうように貪った。
(そしたら、お漏らししそうだから止めてって泣かれたんだっけか……)
皺が寄る程にシーツを掴んで、胸を上下させる様。自分のものを嵌め込んだ時、薄い腹が僅かに膨らむ様……そんな事を思い出してしまうとみるみるうちに欲が膨れてくる。ルードヴィヒは深く息を吐いて、ベッドの縁に腰掛けた。
「いい? そもそも夜伽ってゆーのは対等な関係じゃ成り立たねーから。夜伽っていうのは、男が気持ち良ければ終了なの。分かる?」
背後で座るイルゼの方を向いて言うと、彼女はおどおどとしつつも頷いた。
「だけど……その……」
未だ何か言いたげだ。神妙に思って、ルードヴィヒもベッドに上がってあぐらをかくと、イルゼはもじもじと詰め寄ってきた。
「私ばっかり気持ち良くなって……その、ルイが……満足してなかったら心配で」
そう言われて、ルードヴィヒは驚嘆のあまりに唇を開き、目を大きく瞠った。
しかし、こんな事を言うのは、どこからの入れ知恵に違いない。否、彼女と深く関わる者といえばメラニーしか居ない。
……イルゼとの関係なんて報告なんてしていないが、彼女がシーツの洗濯をしているのだ。破瓜の血の残骸は見ただろうし、こういった吹き込みは、あの女ならやりかねないだろうとは思った。
何せ元盗賊だ。手癖が悪いだけでなく、盗む為なら手段を選ばず、娼婦に化けて近隣領地の娼館の金をちょろまかして逃げたなんて武勇伝も聞いた。絶対そうだろう。間違いない。……と、思ったものの、ベッドサイドに置かれた本を見て、メラニーではないだろうと直ぐに思い正した。
自分の入れ知恵の所為か、イルゼはよく読書をするようになった。中でもどうやら詩集や恋愛物語が気に入ったようで、決まって部屋にはその手の本が積まれている。
本人が作者別に整理をしたので、場所も熟知しているのだだろう。今は以前彼女に勧めた過激な恋愛小説の同作者の本が三冊も置かれていた。
このうちの一冊は盗賊の男が姫君を攫う物語だ。次第に惹かれ合う純愛ではあるが、その中には男のものを口淫する……と、過激な描写が含まれる。間違いない。きっとこの所為だろう。確信しつつも困惑したルードヴィヒはこめかみを揉んで目を細めた。
「えっと、ルイ……?」
「そんなのイルゼは気にしなくて良いの。っていうか俺イルゼの中でイってるでしょ。つまり気持ち良いの」
だから満足。と言うが、それでもどこか不安そうな顔をするので、ルードヴィヒは嗜虐的な笑みを浮かべつつイルゼを抱き寄せ、啄むようなキスを落とす。
「ねー逆に聞くけどさぁ、俺の咥えて舐められる?」
勃起したペニスなんて、よく見なくたってグロテスクなのに。と、やや呆れた口調で言うと、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「その……大きいから、怖いなとは思うけど。でもルイのなら……大丈夫かもって思って。私、恋愛初めてで。こういう事ってよく分からなくて……どうしたら喜んでくれるのかなってずっと考えちゃって……」
ただそれだけで、イルゼの言わんとしている事や思考回路がなんとなく理解出来た。
つまり、分からないから本で仕入れて学んだのだろう。それを改めて理解すると、なんとも初で健気で可愛いらしい恋人なのだと思えてしまい、微笑ましさに自然と笑みが溢れてくる。ルードヴィヒが肩を揺すって笑ってしまうと、イルゼは戸惑った面を上げた。
しかし、身長差があるので、どうにも上目使いに見えてしまいこれがまた愛らしい。
「背伸びしなくたって良いんだよ?」
穏やかに言って頬や額に口付けると、彼女はこそばゆそうに身を縮める。
体躯も小さく細い所為もあるからだろう。そんな仕草が何だか小動物のように思えてしまう。唇を重ね合えば、プルプルと震える様もまさにうさぎのよう。そんなイルゼを壊してしまわぬように、ルードヴィヒは向かい合わせで座らせて彼女を優しく抱き直す。
そうして甘い口付けが深くなり、今宵も甘やかな一夜が幕を開けた。
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