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第四章 熱情
4-4.絡まる熱情Ⅰ※
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そうして甘く啄むだけの口付けを繰り返す事幾許か。イルゼは息が上がり始めていた。
唇を食まれ始めれば、頭が酷く呆然としはじめて、吐息と共に僅かに唇が開いてしまう。すると、それを見計らうように、ヌメリとした熱い塊が滑り込んで来たのだ。
それが彼の舌と、直ぐには理解出来るが、自分の舌にねっとりと絡み始めると背筋が甘く痺れ、膝ガクガクと震え始めた。
立っているのも、ようやくなほど。慌てて彼のシャツを掴むと、ルードヴィヒはイルゼの腰に腕を回し〝逃がさない〟とばかりにきつく抱き寄せた。
彼の舌の味はほんのり甘酸っぱい。恐らくレモン水の残り香だろうか。夢の中とは違って彼の口付けには味がある。たったそれだけで現実と受け止めると、幸せに思える反面で夥しい羞恥が攻め寄せ、イルゼの頬はいたたまれない程に紅潮した。
──義姉リンダに口封じを強いられて、客の男に犯されそうになった時、口付けをされた事があったが、こんなではなかった。
同じように口の中を蹂躙されているに変わりないが、不快さは一切無く寒気も感じない。それどころか、優しく撫でるように舌を絡められると腹の奥から切ない熱が燻り始める。
「はぅ……んっ、う」
だがやはり、どこで息をしたら良いのか分からない。喘ぐような息を漏らしてしまうと、ルードヴィヒは僅かに唇を離してくれた。
「可愛い顔。ねぇ、イルゼもっとキスしたくなっちゃった。今日は一緒に寝よ?」
相変わらずな軽い調子で言うが、彼の瞳には今までに見た事も無い熱の色が強く含まれていた。それも酷く艶っぽく映ってしまい、イルゼが思わず見とれてしまうと、またも軽いキスをされた。
「じゃあ、お姫様。ベッドに行こう?」
ルードヴィヒは背を折り曲げてイルゼの膝の裏に手を通すと易々と抱え上げる。
こんな甘やかな事を言われる事に驚いてしまったが、ベッドに行くとは……。つまり、この先は交接以外に結び付かない。
だが彼は〝勃たない〟と言っていた気がするが……。
そうして、ベッドの上に丁寧に下ろされて直ぐ。ルードヴィヒはイルゼを組み敷くように覆い被さるが、イルゼは驚嘆が隠しきれず、またも口付けを与えようとする彼の肩を軽く押した。
「ま、待ってルイ……その」
「ん? 俺の事怖くなっちゃった?」
そうでないと首を横に振るうと、彼は神妙な面で小首を傾げる。
「その……ルイって、そういう欲……無いん筈じゃ……」
庭園の見張り塔の中で昼寝した時の記憶も未だ新しい。イルゼがおどおどと訊くと、彼は困ったような面を浮かべて、苦笑いを溢す。
「ん。だねぇ……直接愛撫とかされてねーのにね。この辺り俺、すげぇ淡白と思ってたから、正直自分が一番驚いてるし。というか、恥ずかしいけどキスだけでもう、先走りでベタベタになるくらい勃ってるし……」
先走り……と言われてもイルゼはよく分からない。それでも、とんでもなく淫靡な状況説明をされたのだろうと分かる。顔色一つも変えないルードヴィヒに対して、イルゼは頬を真っ赤に染めてあわあわと唇を動かした。
……つまり、今はしっかり欲情しているのだと。そしてベッドに来たという事は交接する気なのだろうと。僅かな緊張にイルゼは身構えると、彼はヘラリとした笑みを浮かべてイルゼの髪を撫で始めた。
「別に怖いとか、嫌だったら無理しないで良いよ。何より、婚前だし。こういう事って普通は結婚してからするもんでしょ」
サラリと言われるが、確かにそれも一理ある。婚前の交接は不浄なものとされている。
だが、自分の場合は一生そんなものに縁なんて無いと思っていたので、この辺りの貞操概念はしっくりこない。
「だって嫌がるイルゼを抱きたいとは思わないし。俺、変人かもしれないけど、別にそういう趣味はねーし。こーゆーのって、自分本位な事はしたくないしさぁ」
いっぱいキスして、一緒に眠れるだけで充分。と、告げるなり、彼は髪を撫でていた手を引っ込めようとする。しかし、イルゼは咄嗟に彼の手を握ってしまった。
まるで引き留めるかのような行動に驚いたのだろう。ルードヴィヒは目を丸くしてぽかんと半分口を開けていた。
「……あの、その。私、結婚なんて今まで考えた事も無いから、その辺りよく分からないのと、嫌とか怖いじゃなくて」
こういう事は初めてだから、恥ずかしい。それに、今日は未だ入浴をしていない。と、恥じらいつつ口にすれば、彼はなんとも形容出来ないムズ痒そうな顔をする。その一拍後、彼は額を押さえて、やれやれと首を横に振った。
「……なーんか、どーもイルゼの反応っていちいち可愛くて、ムラムラしてくる。嗜虐心を煽るってゆーか」
ジトと目を細めて言われるが、いったい、今のやりとりにどう欲情を煽ったかは分からない。不思議そうにルードヴィヒを見上げると、彼は一つ熱っぽい吐息をついてイルゼに視線を向けた。
「風呂は後で入れてあげる。ま、出来るだけ優しくするように善処するよ」
そう告げて直ぐ。再び端正な面が近付きイルゼが瞼を伏せるも束の間──今度は噛みつくように唇を塞がれ、強引に舌を口の中にねじ込まれた。
「──んぅ、う、うう!」
まさか、こうもいきなり烈しくされるなんて思いもしなかった。目を白黒とさせたイルゼはきゅっと目を固く瞑る。
まるで別の生き物が口の中を這っているかのよう。それはイルゼの舌を見つけると表に引きずり出し、やんわりと手を繋ぐように甘やかに絡まった。
ぷちゅ。ちゅ。じゅう……と、粘り気を存分に含んだ卑しい水音が頭いっぱいに反響する。それが恥ずかしくて堪らない。次第に腹の奥を燻っていた熱がカッと上昇し、堪らずイルゼが膝を擦り寄せると、それを見計らったようにルードヴィヒはイルゼの耳をやんわりと塞ぐ。
その途端に頭の中に響いていた淫靡な水音はより鮮明となった。どちらのものかも分からぬ唾液が頤を伝い、首筋に滴り落ちる感触さえも彩度を増す。
「はっ……ん、ぅ……」
「ん……かぁいい。イルゼの舌、美味しいね」
まるで舌を味わうよう。彼は唇で食みつつ、じゅ……と、甘く吸い上げる。
次第に頭も呆然と宙を彷徨うような心地になった。まるで体中の力を奪われてしまったかのよう。擦り寄せていた膝を投げ出すと、彼はそこでようやくイルゼの耳から手を離した。
「わぁ……凄いトロトロな顔してる。可愛いね」
少し悪戯気に笑った彼の唇はヌラヌラと怪しく光っていた。それをペロリと舌なめずりで舐め取って、ルードヴィヒはイルゼの膝を抱えて脚の合間に身体をねじ込んだ。
その途端にグリ……と、硬質な感触をショーツの上で覚え、イルゼはハッと目を瞠る。
……間違いなく彼の肉欲の化身に違いない。
「ル……ルイ」
戸惑いつつイルゼが彼を見上げると、ルードヴィヒは薄く笑んで、再びイルゼの上へ覆い被さった。
「……ね? 俺が興奮してるのよく分かるでしょ? イルゼが可愛くて、こんなになってるんだよ?」
その存在を知らしめるかのよう。彼はグイと腰を動かした途端──イルゼの脳にチカチカと星がまたたくような心地がした。
「はぅ……ん」
自分でもびっくりしてしまう程に、随分甘えた声が出た。慌てて唇を塞ごうとすれば、彼は意地悪く笑んでイルゼの手を掴むと指を絡めて繋がれてしまう。
「あっ……まってルイ……」
「なんで? 今の声、凄く可愛かったのに。気持ち良い部分に擦れちゃった?」
甘やかに言われるが、訊かれた事に答えられやしなかった。分からない。との意でイルゼがふるふると首を振れば、彼は少しつまらなそうな顔をする。
「嘘吐いてない? そんなに顔真っ赤にしてさ。イルゼのここ、服の上からでも熱くなってるの分かるよ? これ、俺がこのまま動いたら厭らしい液が染みてきちゃうかなぁ」
彼がそう告げて直ぐだった。彼が腰を擦り寄せ抽送まがいな行動を取った途端──途方も無い官能がチリチリと脳髄を焼くような感触が駆け抜けた。
「……あんっ、ぅ、あぁあ!」
「ほぉら、やっぱり気持ち良いじゃん」
「ま、まって……るい! ひゃ、んぅ……ぁああ」
何かが自分の中から何かがトロトロと溢れて来る心地さえもする。次第にヌチュヌチュと随分と粘着質な水音が擦られる場所から聞こえ始めてイルゼはふるふると首を横に振るった。
「処女だろうに偉いね。ちゃーんと濡れてきてるって分かるよ?」
「はっ……んぅ」
それも耳元で囁かれるように言われるのでひどくこそばゆい。思わず首を竦めると、彼はちゅっと耳朶に口付けを落とす。その感触さえも甘ったるく、自分をトロトロに溶かすような心地がした。
「直接触ってる訳でもないのに、凄く気持ち良さそ」
可愛い。と、甘ったるく言って。頬に軽い口付けを落とすと、ようやくそこで彼は退いた。
満足したのだろうか……。イルゼがほっと胸を撫で下ろすが、直ぐさま膝を抱えられた。それも、座る彼の腹に尻をつけるような、とてつもなく卑しい体勢で──ルードヴィヒはイルゼの腹に手を回しスカートを腹に向かって捲り上げると内太股に口付けを落とす。
「あっ……ルイなんで、や……」
流石にこんな体勢は恥ずかしい。イルゼが脚は宙を蹴るようにぷらぷらと動かすと彼は更に腹に回した腕に力を入れる。
「だってあのまま続けてたら、俺の服がイルゼの厭らしい蜜でグチャグチャになっちゃうし……もっと気持ち良くしてあげるだけだけど」
だから何。とでも言わんばかりの口ぶりで言うと、彼はイルゼの太股に赤々とした舌を這わせる。
薄明かりの中で朧気に映るその光景が酷く淫靡に見えてしまった。イルゼは息を飲み、あまりの羞恥に目をきゅっと瞑った途端──会陰により近い布団の付け根にヌメリとした感触を覚えゾクリと全身が粟立った。
「はぅ……ん」
女陰を舐める……。割とつい最近本で知った知識だが、本当になんともおぞましいものだと思えてしまう。しかし、未だ付け根だ。それだけでこんなに恥ずかしいのに、本当にそこを舐られたらどうなってしまうのか、いよいよ本当に分からない。
付け根と内太股。彼の舌は左右交互に行ったり来たり。時折、ピリっとした痛みを覚えて薄く目を開けると、その後には、赤い鬱血の花弁が散っていた。
未だ秘された割れ目に触れられていないが……それでもふわふわとした心地だった。だが、どこかもどかしいような心地さえする。止めどなく溢れ出した何か尻を伝いツゥ……と垂れ落ちる不快な感触が、イルゼが脚を震わせると、ルードヴィヒは太股から唇を離してイルゼに目をやった。
「凄いね。形が透けちゃうくらいに濡れちゃってるけど」
ツゥ……と、形を確かめるよう。透けてしまった割れ目に指を這わせて彼は笑む。しかし、その感触は待ち望んだものよりも弱々しい。どこかじれったさを覚えるが、羞恥が強くそんな事は言えたものでない。
堪らぬ羞恥にイルゼは思わず顔を覆うと同時──ほんの少しひんやりとした感触がした。その須臾、途方も無い悦楽が背筋を暴れ回り始めたのだ。
「あんっ! あぅ……あぁっ……」
指と指の隙間から覗く光景は、夢で見たのと全く同じ。彼がショーツを持ち上げ、割れ目にねっとりと舌を這わせているのだから。
「はぅ、んぁ……るい、ぁ、ぁあん!」
自然と逃げるように身を捩るが、更に強い力で腹と太股を掴む腕の力を強められてしまう。蜜口の周りをねっとりと舐ったかと思えば……ツゥと、上部に舌を這わせ包皮ごと淫らな芽を口に含まれる。そうして口の中で吸われつつコロコロと転がされた途端──脳裏にチカチカと星がまたたき、途方も無い官能が暴れ回った。
「──あんっ! ぅあ、あああああ!」
イルゼの唇から漏れた嬌声は、もはや悲鳴じみたものだった。
まるで魚のように背はピクピクと跳ね上がり、そのまま意識を手放しそうになる。それでもどうに持ちこたえた。胸で息をして、霞んだ視界の中の彼に目をやると直ぐにかちりと視線が絡み合う。淫蜜でべったりと口の周りを汚して、それをペロリと舐めると彼はニタリとした笑みを浮かべた。
「前に俺とえっちな事しちゃう夢を見たらしーけど、あの本の通りじゃ……こうやって……ここ、しゃぶられちゃう夢でもみたの?」
正夢になった? なんて彼は軽い笑いを浮かべつつ言うが、イルゼは一瞬にして首まで顔を真っ赤に染まった。
何より、夢と違いすぎるのはあまりに鮮烈な感触だ。それに、彼がこんなに淫靡な言葉を口走るなんて思いもしなかったからで。
「変な事、言わないで……」
羞恥のあまりじんわりと涙が浮かんで来る。すると、彼はククと喉を鳴らして未だ熱の冷めやらぬ蜜口を丸く指で撫で始めた。
その都度ヌチ……ヌチュ……と淫靡な音色が鳴り響き、あまりの羞恥にイルゼの頬は更に赤々と染まる。しかし、なぜかもどかしくて仕方ない。何かを埋め込まれたくて仕方なく思えてしまう自分は浅ましいのだろうか。思わず腰をピクリと突き上げてしまうと、彼は少しばかり神妙な面をしてイルゼに目をやった。
「でもさーイルゼのここ、凄くひくひくしてるけど。なーんか、イルゼってこういう恥ずかしい言葉に全く耐性ないどころか、恥ずかしがると余計に煽られちゃうみたいだね」
本気で嫌がったり、大泣きでもしない限り止めない事にする。と、クスリと笑んだと同時──蜜洞に僅かな圧迫感を覚えた。
ツプ……と音を立てて埋め込まれるのは彼の無骨な指。ある一点まで辿り着くと、ほんの僅か刺激があるが、さほど気にならなかった。それどころか、もっと奥へ奥へと誘うように貪欲に膣の襞が蠢く事を自覚してイルゼはゆるゆると首を横に振るった。
「はぅ……ん、ぁん……ルイ、それ……」
「ん。俺の指、咥えちゃったね。こうやってかき混ぜるの痛くない?」
蜜洞の中を探るよう。ゆるゆると彼は、優しく撫でつつ訊くが、その面はやはりどこか神妙そうだった。
圧迫感はあるが別に痛くない。「大丈夫……」と震えた声で答えれば、彼は僅かに唇の端を綻ばせる。
「沢山濡れてるからかなぁ……痛くないなら良かった」
そう言って、彼は蜜洞に指から指を引き抜くと片足ずつイルゼの脚を丁寧に下ろす。
蜜洞の圧迫感が無くなると、どこか侘しささえ感じてしまう。思わず彼の方を向くと、またも彼は少しばかり神妙な面を浮かべるものの、やんわりと笑まれた。
「ねぇ。もう服……全部脱がせちゃってもいい? 甲斐性無いけど、俺の方がもう限界に近いかも」
ルードヴィヒは余裕も無い顔で縋るように言うと、イルゼのブラウスのボタンを弾くように外し始めた。
唇を食まれ始めれば、頭が酷く呆然としはじめて、吐息と共に僅かに唇が開いてしまう。すると、それを見計らうように、ヌメリとした熱い塊が滑り込んで来たのだ。
それが彼の舌と、直ぐには理解出来るが、自分の舌にねっとりと絡み始めると背筋が甘く痺れ、膝ガクガクと震え始めた。
立っているのも、ようやくなほど。慌てて彼のシャツを掴むと、ルードヴィヒはイルゼの腰に腕を回し〝逃がさない〟とばかりにきつく抱き寄せた。
彼の舌の味はほんのり甘酸っぱい。恐らくレモン水の残り香だろうか。夢の中とは違って彼の口付けには味がある。たったそれだけで現実と受け止めると、幸せに思える反面で夥しい羞恥が攻め寄せ、イルゼの頬はいたたまれない程に紅潮した。
──義姉リンダに口封じを強いられて、客の男に犯されそうになった時、口付けをされた事があったが、こんなではなかった。
同じように口の中を蹂躙されているに変わりないが、不快さは一切無く寒気も感じない。それどころか、優しく撫でるように舌を絡められると腹の奥から切ない熱が燻り始める。
「はぅ……んっ、う」
だがやはり、どこで息をしたら良いのか分からない。喘ぐような息を漏らしてしまうと、ルードヴィヒは僅かに唇を離してくれた。
「可愛い顔。ねぇ、イルゼもっとキスしたくなっちゃった。今日は一緒に寝よ?」
相変わらずな軽い調子で言うが、彼の瞳には今までに見た事も無い熱の色が強く含まれていた。それも酷く艶っぽく映ってしまい、イルゼが思わず見とれてしまうと、またも軽いキスをされた。
「じゃあ、お姫様。ベッドに行こう?」
ルードヴィヒは背を折り曲げてイルゼの膝の裏に手を通すと易々と抱え上げる。
こんな甘やかな事を言われる事に驚いてしまったが、ベッドに行くとは……。つまり、この先は交接以外に結び付かない。
だが彼は〝勃たない〟と言っていた気がするが……。
そうして、ベッドの上に丁寧に下ろされて直ぐ。ルードヴィヒはイルゼを組み敷くように覆い被さるが、イルゼは驚嘆が隠しきれず、またも口付けを与えようとする彼の肩を軽く押した。
「ま、待ってルイ……その」
「ん? 俺の事怖くなっちゃった?」
そうでないと首を横に振るうと、彼は神妙な面で小首を傾げる。
「その……ルイって、そういう欲……無いん筈じゃ……」
庭園の見張り塔の中で昼寝した時の記憶も未だ新しい。イルゼがおどおどと訊くと、彼は困ったような面を浮かべて、苦笑いを溢す。
「ん。だねぇ……直接愛撫とかされてねーのにね。この辺り俺、すげぇ淡白と思ってたから、正直自分が一番驚いてるし。というか、恥ずかしいけどキスだけでもう、先走りでベタベタになるくらい勃ってるし……」
先走り……と言われてもイルゼはよく分からない。それでも、とんでもなく淫靡な状況説明をされたのだろうと分かる。顔色一つも変えないルードヴィヒに対して、イルゼは頬を真っ赤に染めてあわあわと唇を動かした。
……つまり、今はしっかり欲情しているのだと。そしてベッドに来たという事は交接する気なのだろうと。僅かな緊張にイルゼは身構えると、彼はヘラリとした笑みを浮かべてイルゼの髪を撫で始めた。
「別に怖いとか、嫌だったら無理しないで良いよ。何より、婚前だし。こういう事って普通は結婚してからするもんでしょ」
サラリと言われるが、確かにそれも一理ある。婚前の交接は不浄なものとされている。
だが、自分の場合は一生そんなものに縁なんて無いと思っていたので、この辺りの貞操概念はしっくりこない。
「だって嫌がるイルゼを抱きたいとは思わないし。俺、変人かもしれないけど、別にそういう趣味はねーし。こーゆーのって、自分本位な事はしたくないしさぁ」
いっぱいキスして、一緒に眠れるだけで充分。と、告げるなり、彼は髪を撫でていた手を引っ込めようとする。しかし、イルゼは咄嗟に彼の手を握ってしまった。
まるで引き留めるかのような行動に驚いたのだろう。ルードヴィヒは目を丸くしてぽかんと半分口を開けていた。
「……あの、その。私、結婚なんて今まで考えた事も無いから、その辺りよく分からないのと、嫌とか怖いじゃなくて」
こういう事は初めてだから、恥ずかしい。それに、今日は未だ入浴をしていない。と、恥じらいつつ口にすれば、彼はなんとも形容出来ないムズ痒そうな顔をする。その一拍後、彼は額を押さえて、やれやれと首を横に振った。
「……なーんか、どーもイルゼの反応っていちいち可愛くて、ムラムラしてくる。嗜虐心を煽るってゆーか」
ジトと目を細めて言われるが、いったい、今のやりとりにどう欲情を煽ったかは分からない。不思議そうにルードヴィヒを見上げると、彼は一つ熱っぽい吐息をついてイルゼに視線を向けた。
「風呂は後で入れてあげる。ま、出来るだけ優しくするように善処するよ」
そう告げて直ぐ。再び端正な面が近付きイルゼが瞼を伏せるも束の間──今度は噛みつくように唇を塞がれ、強引に舌を口の中にねじ込まれた。
「──んぅ、う、うう!」
まさか、こうもいきなり烈しくされるなんて思いもしなかった。目を白黒とさせたイルゼはきゅっと目を固く瞑る。
まるで別の生き物が口の中を這っているかのよう。それはイルゼの舌を見つけると表に引きずり出し、やんわりと手を繋ぐように甘やかに絡まった。
ぷちゅ。ちゅ。じゅう……と、粘り気を存分に含んだ卑しい水音が頭いっぱいに反響する。それが恥ずかしくて堪らない。次第に腹の奥を燻っていた熱がカッと上昇し、堪らずイルゼが膝を擦り寄せると、それを見計らったようにルードヴィヒはイルゼの耳をやんわりと塞ぐ。
その途端に頭の中に響いていた淫靡な水音はより鮮明となった。どちらのものかも分からぬ唾液が頤を伝い、首筋に滴り落ちる感触さえも彩度を増す。
「はっ……ん、ぅ……」
「ん……かぁいい。イルゼの舌、美味しいね」
まるで舌を味わうよう。彼は唇で食みつつ、じゅ……と、甘く吸い上げる。
次第に頭も呆然と宙を彷徨うような心地になった。まるで体中の力を奪われてしまったかのよう。擦り寄せていた膝を投げ出すと、彼はそこでようやくイルゼの耳から手を離した。
「わぁ……凄いトロトロな顔してる。可愛いね」
少し悪戯気に笑った彼の唇はヌラヌラと怪しく光っていた。それをペロリと舌なめずりで舐め取って、ルードヴィヒはイルゼの膝を抱えて脚の合間に身体をねじ込んだ。
その途端にグリ……と、硬質な感触をショーツの上で覚え、イルゼはハッと目を瞠る。
……間違いなく彼の肉欲の化身に違いない。
「ル……ルイ」
戸惑いつつイルゼが彼を見上げると、ルードヴィヒは薄く笑んで、再びイルゼの上へ覆い被さった。
「……ね? 俺が興奮してるのよく分かるでしょ? イルゼが可愛くて、こんなになってるんだよ?」
その存在を知らしめるかのよう。彼はグイと腰を動かした途端──イルゼの脳にチカチカと星がまたたくような心地がした。
「はぅ……ん」
自分でもびっくりしてしまう程に、随分甘えた声が出た。慌てて唇を塞ごうとすれば、彼は意地悪く笑んでイルゼの手を掴むと指を絡めて繋がれてしまう。
「あっ……まってルイ……」
「なんで? 今の声、凄く可愛かったのに。気持ち良い部分に擦れちゃった?」
甘やかに言われるが、訊かれた事に答えられやしなかった。分からない。との意でイルゼがふるふると首を振れば、彼は少しつまらなそうな顔をする。
「嘘吐いてない? そんなに顔真っ赤にしてさ。イルゼのここ、服の上からでも熱くなってるの分かるよ? これ、俺がこのまま動いたら厭らしい液が染みてきちゃうかなぁ」
彼がそう告げて直ぐだった。彼が腰を擦り寄せ抽送まがいな行動を取った途端──途方も無い官能がチリチリと脳髄を焼くような感触が駆け抜けた。
「……あんっ、ぅ、あぁあ!」
「ほぉら、やっぱり気持ち良いじゃん」
「ま、まって……るい! ひゃ、んぅ……ぁああ」
何かが自分の中から何かがトロトロと溢れて来る心地さえもする。次第にヌチュヌチュと随分と粘着質な水音が擦られる場所から聞こえ始めてイルゼはふるふると首を横に振るった。
「処女だろうに偉いね。ちゃーんと濡れてきてるって分かるよ?」
「はっ……んぅ」
それも耳元で囁かれるように言われるのでひどくこそばゆい。思わず首を竦めると、彼はちゅっと耳朶に口付けを落とす。その感触さえも甘ったるく、自分をトロトロに溶かすような心地がした。
「直接触ってる訳でもないのに、凄く気持ち良さそ」
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満足したのだろうか……。イルゼがほっと胸を撫で下ろすが、直ぐさま膝を抱えられた。それも、座る彼の腹に尻をつけるような、とてつもなく卑しい体勢で──ルードヴィヒはイルゼの腹に手を回しスカートを腹に向かって捲り上げると内太股に口付けを落とす。
「あっ……ルイなんで、や……」
流石にこんな体勢は恥ずかしい。イルゼが脚は宙を蹴るようにぷらぷらと動かすと彼は更に腹に回した腕に力を入れる。
「だってあのまま続けてたら、俺の服がイルゼの厭らしい蜜でグチャグチャになっちゃうし……もっと気持ち良くしてあげるだけだけど」
だから何。とでも言わんばかりの口ぶりで言うと、彼はイルゼの太股に赤々とした舌を這わせる。
薄明かりの中で朧気に映るその光景が酷く淫靡に見えてしまった。イルゼは息を飲み、あまりの羞恥に目をきゅっと瞑った途端──会陰により近い布団の付け根にヌメリとした感触を覚えゾクリと全身が粟立った。
「はぅ……ん」
女陰を舐める……。割とつい最近本で知った知識だが、本当になんともおぞましいものだと思えてしまう。しかし、未だ付け根だ。それだけでこんなに恥ずかしいのに、本当にそこを舐られたらどうなってしまうのか、いよいよ本当に分からない。
付け根と内太股。彼の舌は左右交互に行ったり来たり。時折、ピリっとした痛みを覚えて薄く目を開けると、その後には、赤い鬱血の花弁が散っていた。
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「凄いね。形が透けちゃうくらいに濡れちゃってるけど」
ツゥ……と、形を確かめるよう。透けてしまった割れ目に指を這わせて彼は笑む。しかし、その感触は待ち望んだものよりも弱々しい。どこかじれったさを覚えるが、羞恥が強くそんな事は言えたものでない。
堪らぬ羞恥にイルゼは思わず顔を覆うと同時──ほんの少しひんやりとした感触がした。その須臾、途方も無い悦楽が背筋を暴れ回り始めたのだ。
「あんっ! あぅ……あぁっ……」
指と指の隙間から覗く光景は、夢で見たのと全く同じ。彼がショーツを持ち上げ、割れ目にねっとりと舌を這わせているのだから。
「はぅ、んぁ……るい、ぁ、ぁあん!」
自然と逃げるように身を捩るが、更に強い力で腹と太股を掴む腕の力を強められてしまう。蜜口の周りをねっとりと舐ったかと思えば……ツゥと、上部に舌を這わせ包皮ごと淫らな芽を口に含まれる。そうして口の中で吸われつつコロコロと転がされた途端──脳裏にチカチカと星がまたたき、途方も無い官能が暴れ回った。
「──あんっ! ぅあ、あああああ!」
イルゼの唇から漏れた嬌声は、もはや悲鳴じみたものだった。
まるで魚のように背はピクピクと跳ね上がり、そのまま意識を手放しそうになる。それでもどうに持ちこたえた。胸で息をして、霞んだ視界の中の彼に目をやると直ぐにかちりと視線が絡み合う。淫蜜でべったりと口の周りを汚して、それをペロリと舐めると彼はニタリとした笑みを浮かべた。
「前に俺とえっちな事しちゃう夢を見たらしーけど、あの本の通りじゃ……こうやって……ここ、しゃぶられちゃう夢でもみたの?」
正夢になった? なんて彼は軽い笑いを浮かべつつ言うが、イルゼは一瞬にして首まで顔を真っ赤に染まった。
何より、夢と違いすぎるのはあまりに鮮烈な感触だ。それに、彼がこんなに淫靡な言葉を口走るなんて思いもしなかったからで。
「変な事、言わないで……」
羞恥のあまりじんわりと涙が浮かんで来る。すると、彼はククと喉を鳴らして未だ熱の冷めやらぬ蜜口を丸く指で撫で始めた。
その都度ヌチ……ヌチュ……と淫靡な音色が鳴り響き、あまりの羞恥にイルゼの頬は更に赤々と染まる。しかし、なぜかもどかしくて仕方ない。何かを埋め込まれたくて仕方なく思えてしまう自分は浅ましいのだろうか。思わず腰をピクリと突き上げてしまうと、彼は少しばかり神妙な面をしてイルゼに目をやった。
「でもさーイルゼのここ、凄くひくひくしてるけど。なーんか、イルゼってこういう恥ずかしい言葉に全く耐性ないどころか、恥ずかしがると余計に煽られちゃうみたいだね」
本気で嫌がったり、大泣きでもしない限り止めない事にする。と、クスリと笑んだと同時──蜜洞に僅かな圧迫感を覚えた。
ツプ……と音を立てて埋め込まれるのは彼の無骨な指。ある一点まで辿り着くと、ほんの僅か刺激があるが、さほど気にならなかった。それどころか、もっと奥へ奥へと誘うように貪欲に膣の襞が蠢く事を自覚してイルゼはゆるゆると首を横に振るった。
「はぅ……ん、ぁん……ルイ、それ……」
「ん。俺の指、咥えちゃったね。こうやってかき混ぜるの痛くない?」
蜜洞の中を探るよう。ゆるゆると彼は、優しく撫でつつ訊くが、その面はやはりどこか神妙そうだった。
圧迫感はあるが別に痛くない。「大丈夫……」と震えた声で答えれば、彼は僅かに唇の端を綻ばせる。
「沢山濡れてるからかなぁ……痛くないなら良かった」
そう言って、彼は蜜洞に指から指を引き抜くと片足ずつイルゼの脚を丁寧に下ろす。
蜜洞の圧迫感が無くなると、どこか侘しささえ感じてしまう。思わず彼の方を向くと、またも彼は少しばかり神妙な面を浮かべるものの、やんわりと笑まれた。
「ねぇ。もう服……全部脱がせちゃってもいい? 甲斐性無いけど、俺の方がもう限界に近いかも」
ルードヴィヒは余裕も無い顔で縋るように言うと、イルゼのブラウスのボタンを弾くように外し始めた。
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