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Study15.王都帰省、二度目の占い
15-2
しおりを挟むその日の昼過ぎ、列車は終点の王都ブルーメの駅に辿り着いた。
革製の大きなトランクにバスケット。両手が塞がれていては動き難いから……と、先に荷物を預けに宿に赴く事になったが、宿屋に来てストロベリーは目を点にしてしまった。
宿屋。良くても学院寮のような部屋。或いは簡素な宿泊施設……と思い込んでいた。だが、やはりどう足掻こうがラケルは貴族の子息だった。
中世の屋敷を彷彿させるようなアンティークな外観の建物にご立派な庭園。内部に踏み入れば、やはりクラシックな内装で星屑を沢山散りばめたのような巨大なシャンデリアがエントランスホールに眩い程に輝いていた。
やがて、部屋に案内するとやってきた女中に荷物を奪われるように持たれ、連れて来られた部屋はまさに宮殿の如き。一人で寝るには広すぎる天蓋の付きのベッドにテーブルに、サイドテーブルには高級そうな茶菓子──と、目が眩んでしまいそうな程だった。
果たして一泊幾らかかるのだろうか。脳内に数字がぐるぐると巡るものだが、自分の仕送りされる小遣いではとても払えるようなものではないと理解出来てしまう。
それはオブも同じだっただろう。バスケットから飛び出したオブは落ち着きの無い様子で部屋の中をぐるぐると歩き回りきょろきょろと辺りを見渡していた。
ストロベリーは入り口で未だ呆然と立ち尽くしたまま。すると、後方のドアが開き、ラケルがひょっこりと姿を現した。
「四泊もするし少しケチって部屋最低ランクの一人部屋だったけど、ここで大丈夫そう? 不備とかあったら遠慮しないで言っていいからね?」
至って平坦な調子で彼は言う。しかしそこには嫌味というものが全く無いもので、これが彼にとっては普通かそれ以下なのだと思い知る。ストロベリーは戦慄さえ覚えて即座に首をブンブンと横に振った。
「まって、ラケル。私にこんなお城みたいな部屋は勿体ないってば。絶対に金額がヤバイ! 商人の娘の私には無理、絶対におかしい!」
ストロベリーがプルプルと震えながら首を横に振ると、ラケルは神妙そうに小首を傾げた。
「四泊しようが僕のへそくりが余るくらいの金額だよ。額は想像に任せるけど言うのもいちいち言うのも野暮でしょ。ただの好意だし、何も気負わないで好きに使って」
──それより、図書館に行くんでしょ? 支度出来たら案内宜しくね。去り際にウィンクを一つ。ラケルはそれだけ告げると、部屋から出て行ってしまった。
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