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Study7.二人きりの真冬の夜
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「じゃあ消すよー」
ラケルが告げたと同時、パチリと視界は真っ暗になる。間もなく、隣のベッドからモソモソと蠢く衣擦れの音がした──それから一拍置いた後だった。
「……ねぇ、苺ちゃんオブにばかりズルい」
呟くように言った声は本来のラケルの掠れた声だった。
「は?」
何の事だろうか……寝返りを打って、相槌を打てば、彼がフンと鼻を鳴らした。
「さっきオブにおやすみのキスしたでしょ。僕には一度もしてくれた事が無いじゃん」
「するわけないでしょ……」
何を阿呆な事を言っているのか……ストロベリーは暗がりの中キッパリと言ってやる。
すると瞬く間に、少女の啜り泣くような声が聞こえてきた。
一瞬で理解出来てしまう──嘘泣きだと。泣いている所は一度だけのは見た事があるが、地声で泣いていたのだから、これは違うと判断した須臾だった。
「──ひどい! そんなキッパリ言うなんて傷付くし! 今日は聖夜だっていうのに! 苺ちゃんの言い方ってば凄く冷たい!」
少女の声でラケルは捲し立てた。
演技だろうとは分かる。だが、癇癪を起こしたかのような悲壮な言い方が、とてつもなくストロベリーの胸に突き刺さった。
確かに聖星祭の夜だ。夕飯に七面鳥のソテーや苺のタルトと寮母の腕を振るったご馳走も食べたし、彼女に二人で選んだプレゼントも渡した。三人でテーブルを囲んでの晩餐は微笑ましく楽しいひとときだった。ここ数年の聖星祭中で一番楽しくて幸せな時間を過ごせたと素直に思えてしまった程だった。
感じ方は違うだろうが、幸せに満ちる夜は彼も同じだったのだろうか。確かに突っ撥ねるような言い方をしてしまっただろう。これでは台無しで傷付くかも知れない……。
ストロベリーは少しだけ申し訳なく思って、ベッドを降りた。
「……ねぇ。今朝、大きな声を出すなって言ったのは誰?」
境界線を跨ぎ、ストロベリーは彼のベッドの縁に腰掛ける。暗闇の中だろうが、目が慣れるのは早い。仰向けになって顔を覆うラケルの柔らかい髪をそっと撫でた後、ストロベリーは彼の額に唇を寄せた。
「ラケルおやすみなさい。今日は楽しかった。ありがとう、良い夢を見て」
唇を離してそう告げた途端だった。ムクリと唐突に起き上がった彼は、ストロベリーの頬に少しばかり乾燥した唇を寄せる。
「苺ちゃんもおやすみ。どうか今夜は良い夢を見てね」
囁く声は本来の掠れたものだった。一瞬にして顔面に熱が上り詰め、ストロベリーは直ぐさま自分のベッドに逃げるように入った。
なんて事をしてしまっただろう。そうだ、彼は男なのだ……。改めてそれを悟り、ストロベリーは頭まで布団を被ってパクパクと唇を動かす。
熱が冷めたのはそれから幾許か時間が過ぎてからだった。やがて、ストロベリーは緩やかに眠りの世界に誘われた。
ラケルが告げたと同時、パチリと視界は真っ暗になる。間もなく、隣のベッドからモソモソと蠢く衣擦れの音がした──それから一拍置いた後だった。
「……ねぇ、苺ちゃんオブにばかりズルい」
呟くように言った声は本来のラケルの掠れた声だった。
「は?」
何の事だろうか……寝返りを打って、相槌を打てば、彼がフンと鼻を鳴らした。
「さっきオブにおやすみのキスしたでしょ。僕には一度もしてくれた事が無いじゃん」
「するわけないでしょ……」
何を阿呆な事を言っているのか……ストロベリーは暗がりの中キッパリと言ってやる。
すると瞬く間に、少女の啜り泣くような声が聞こえてきた。
一瞬で理解出来てしまう──嘘泣きだと。泣いている所は一度だけのは見た事があるが、地声で泣いていたのだから、これは違うと判断した須臾だった。
「──ひどい! そんなキッパリ言うなんて傷付くし! 今日は聖夜だっていうのに! 苺ちゃんの言い方ってば凄く冷たい!」
少女の声でラケルは捲し立てた。
演技だろうとは分かる。だが、癇癪を起こしたかのような悲壮な言い方が、とてつもなくストロベリーの胸に突き刺さった。
確かに聖星祭の夜だ。夕飯に七面鳥のソテーや苺のタルトと寮母の腕を振るったご馳走も食べたし、彼女に二人で選んだプレゼントも渡した。三人でテーブルを囲んでの晩餐は微笑ましく楽しいひとときだった。ここ数年の聖星祭中で一番楽しくて幸せな時間を過ごせたと素直に思えてしまった程だった。
感じ方は違うだろうが、幸せに満ちる夜は彼も同じだったのだろうか。確かに突っ撥ねるような言い方をしてしまっただろう。これでは台無しで傷付くかも知れない……。
ストロベリーは少しだけ申し訳なく思って、ベッドを降りた。
「……ねぇ。今朝、大きな声を出すなって言ったのは誰?」
境界線を跨ぎ、ストロベリーは彼のベッドの縁に腰掛ける。暗闇の中だろうが、目が慣れるのは早い。仰向けになって顔を覆うラケルの柔らかい髪をそっと撫でた後、ストロベリーは彼の額に唇を寄せた。
「ラケルおやすみなさい。今日は楽しかった。ありがとう、良い夢を見て」
唇を離してそう告げた途端だった。ムクリと唐突に起き上がった彼は、ストロベリーの頬に少しばかり乾燥した唇を寄せる。
「苺ちゃんもおやすみ。どうか今夜は良い夢を見てね」
囁く声は本来の掠れたものだった。一瞬にして顔面に熱が上り詰め、ストロベリーは直ぐさま自分のベッドに逃げるように入った。
なんて事をしてしまっただろう。そうだ、彼は男なのだ……。改めてそれを悟り、ストロベリーは頭まで布団を被ってパクパクと唇を動かす。
熱が冷めたのはそれから幾許か時間が過ぎてからだった。やがて、ストロベリーは緩やかに眠りの世界に誘われた。
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