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Study4.初めてのおサボり
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しおりを挟む授業終了の鐘が鳴ったと同時、ストロベリーとラケルは校舎に戻った。
教室に戻ると、丁度次の授業が始まる寸前だった。本日最後の授業はレディ・アーサの裁縫の授業。だが、前の授業に無断欠席していた事は出席簿を見れば一目瞭然で──散々に怒鳴り散らされた二人は、授業を受けさせても貰えず学院長室に突き出された。
そこで言われた罰則は、本日中に反省文を三十枚。それから、二ヶ月間に及ぶ中庭清掃だった。こってり長々と学院長に説教を垂れられた後、二人は放課後の教室に向かって早速反省文に取りかかった。
「罰則、レイちゃんの読みで正解だったね」
「でしょ? でも、放課後に二ヶ月も中庭掃除なんて予想外なおまけまで来た」
机を合わせて向かい合ったレイチェルは『これから寒くなる一方だしやだねぇ』なんて苦笑いを溢しながらながらもペンを走らせる。一方、ストロベリーは鼻下にペンを起き、唇を尖らせて頬杖をついていた。
「……で、反省文って何を書けばいいの」
学院にも通うのだって初めてだ。反省文なんてものは娯楽誌の学院物語の上でしか見た事も無い。何を書けば良いものか……と、眉間に皺を寄せていると、彼はピタリと手を止めて頤に手を当てた。
「サボリはもうしません。今後は身を引き締めて……とかそんな事で良いと思うよ。多分細部まで見やしないって。これだけの枚数を消化させる事自体が罰だと思うし」
──三十枚とか短編小説のレベル。もはや作家の域。だなんて、彼は渇いた笑いを溢す。
「なるほど。でも、今更になるけどレイちゃんも馬鹿だよね……私に付き合って一緒にサボるんだもの」
「いいのいいの。ちょっとスリリングだったし、ああして苺ちゃんと一緒に居れたの凄く楽しかったから」
それだけを告げると、再び彼はペンを握って執筆を再開する。
──一緒で楽しかった。まさかそんな風に言われるだなんて思いもしなかった。誰かにそんな風に言われたのは初めてだ。それは素直に嬉しいと思えてしまうもので……。
呆然とそんな考えに更けていればラケルは再びペンを止める。
「ほら、書かないと夕飯の時間に間に合わなくなっちゃう」
さぁ書こう。と促されて、ストロベリーは真っ新な羊皮紙にペンを走らせた。
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