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第三章 繋がる記憶
3-6 繋がりあう幸福※
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──城に戻って直ぐ夕食となった。それから、一人で入浴を済ませ、部屋に着いて早々、シュリーは目を白黒とさせていた。
「い、いぃ……イシャン! な、何で?!」
何があったかと言えば……部屋に着くなり彼に突然抱えられたのである。彼も彼で入浴を済ませて来たのだろう。服装も寝間着に変わっており、何だか髪から良い匂いがした。しかし、唐突な行動に吃驚したのは言うまでもない。部屋に入って早々だ。もはや待ち伏せと言って過言で無いだろう。
だが彼は『抱っこしたいだけ』と背筋が凍る程甘やかに言うのだった。
しかし、こういう言い方をする時は……彼が何を淫靡な事をしようとする時で……。
そうして案の定──寝台の上に下ろされ、あれよあれよという間に組み敷かれて現在に至るのだ。
「何でって……お前、正妻になる事を承諾しただろ? その晩だ。このくらいの覚悟はしてなかったのか?」
言われてシュリーは真っ赤になって固まってしまった。
……今更のように思い出すと、着替えとして用意されていた下着はいつものものに比べたら妙に派手だとは思った。それも結び目が横にあるもので……。引っ張ってしまえば簡単に脱げてしまうだろうとは思った。しかし渡された下着に文句など言えやしない。シュリーは特に何も考えずにそれを履いてきた。
「……て、ないわ」
あわあわと口を動かして言うとイシャンは首を捻る。
「何だ?」
「そ、そんな覚悟出来てないわ! た、確かに今日の下着……ちょっと派手だなって思いやしたけど……」
あまりに動揺して言うと、彼はたちまち目を細くてシュリーの腰周りに視線を落とした。
「ほぉ……」
「い、いや。見ないでよ。恥ずかしいから……!」
「俺、今までにもっとシュリーの恥ずかしい場所を見てきてるんだが……」
何ら悪びた様子もなくイシャンは平坦な調子で言うが、シュリーはたちまち真っ赤になって身悶えた。
「やっと俺だけのシュリーになった。だから抱きたいとは思ったんだが」
それも、真っ正面から言われてシュリーは言葉を失った。
そんなに真摯に言われたら、どう答えて良いかなんて分からなかった。しかし、こうもジッと見つめられるのも恥ずかしい。いたたまれない程に顔を赤々と染めたシュリーは、イシャンから視線を反らした。
「……そんなに嫌なら止めとくか。そっちの世界、婚前に関係を持つのは不浄とさえ言われてるらしいしな」
イシャンはそう言って、身を引こうとした。だが、シュリーは咄嗟に彼のクルタの袖を掴んだ。
「あの、別にね。嫌とかそういうのじゃないのよ。確かに婚前の関係は不浄よ。だけど、私は神聖娼婦だったから結婚って概念が無いわ。だからそれは適合されない。……ただいきなりで驚いたのと……その……」
恥ずかしい。と、本心を包み隠さず告げると、彼は安堵したのか深く息をつく。
しかし──「シュリーが恥ずかしがる方が俺もすげぇ興奮するんだけどな……」と、しれっと言う。この人は綺麗な顔であっさりと、何て事を言うのだろう……。シュリーは幾度も目をしばたたく。
シュリーは顔を真っ赤にしたまま口を噤んでしまう。方やイシャンは隣に寝転んで、シュリーの髪を梳くように撫で始めた。皮肉にも、その手つきが意外にも心地よい。ジトとシュリーが目を細めると彼は苦笑いを浮かべた。
「……初日にも言ったが、お前が正妻になるってはっきり認めない限り、最後までする気なんか無かったもんでな」
……つまり、風呂から戻ってきた途端に完全に我慢の限界だった。と、ばつが悪そうにイシャンは白状する。続け様に「先走ってごめん」なんて謝られるが、どう返して良いものか……。シュリーは暫く黙考した。
「でも、どうしてそこまで私を大事にしたの……」
”自分は無価値”と、思わず溢しそうになるが、シュリーは直ぐに口を噤んだ。自己卑下は罰せられる。今この状況下だ。どんな淫靡な辱めを受けるかだって分からなかった。彼はシュリーの眉間に寄った皺を指でつつく。
「それくらいしないと誠意なんか証明出来ないだろ? 何度も言うが、そもそもお前って貞操概念がかなりぶっ壊れてるし」
……男のそこを舐めて奉仕して挿れるだ言われたし……。なんて、過去を掘り返して言われるものだから、シュリーの頬は瞬く間に紅潮した。
「ま、まって……でもそれはイシャンがおかしいと思うわ? だって、そういう行為って子供を宿す為の行為とは言え、基本的には男性を悦ばせる為にあるものじゃない? 普通はそういう……」
認識じゃないのか。と、言い切る前に彼は「いいや」と、口を挟んだ。
「……俺は変態かも知れないが、別におかしくはないとは思う。そもそもだ。そんなの対等じゃないだろ? まぁ……そんなにシュリーが俺のものを可愛い舌で舐めたいっていうなら……」
うんざりしたように言って直ぐ。イシャンが寝たまま下衣のボタンを外し始めたものだから、シュリーは慌てて彼の手を掴んでしまった。
「ま、ま、待って……!」
「お前、本当に待ってが多いな……」
イシャンは呆れた視線でシュリーを射抜いた。
「か、可愛い舌って……そ、そんな急には、私にだって心の準備くらい……!」
ふるふると首を横に振って、慌ててシュリーが捲し立てると、イシャンは深い吐息をついた。
「……と、いうのか。シュリーはそもそも男のものなんて見た事無いだろ? 多分、初見でビビると思うし。舐めたいだの絶対思わんと思うがな」
──半ば冗談だった。なんて彼が、幼子でもあやすようにポンポンと前髪を撫でてくるものだから、シュリーは思わずムキになってしまった。
「弟が沢山いたんだからあるわ! そ、それと寺院に祀られてる破壊を司る男神のものならば」……見たことある。と、言わんとすれば、直ぐにイシャン言葉を割った。
「それ、お前が子供の頃の話だろ? 大人と子供じゃ全く違げぇからな。あと、破壊を司るって多分それ……ルドラの血筋に当たる。っていうか……どう考えてもルドラのもんに当たる」
見たもんは今すぐに忘れとけ。と、きっぱりと言われてシュリーは顔面を真っ赤に染めて唖然とした。
──国教は多神信仰。その中でも維持を司る男神と破壊を司る男神の二つが絶大な信仰を集めており、維持派と破壊派と宗派さえある。
力関係で言えば、維持を司る男神が強いそうだが、破壊を司る男神は負けず劣らずの人気だ。そして何故か……破壊を司る男神は、男根として祀られているもので、本当にそこらじゅうにある。生命を生み出し、そして破壊する。この世の根源。或いは原理を男根として表しているらしいが……。
しかし考えると、妙に腑に落ちる。族長のイシャンが維持。そして副族長のルドラが破壊と言うのなら……。
シュリーがようやく頷くと、彼は納得したのか満足げに頷いた。
「まぁ……仕置きだなんだって、散々俺ばっかりが触ってたしな……」
そう言って彼は、シュリーの手をやんわりと掴むと下衣の上から中心を触れさせた。
そこは既に怒張しており硬かった。今までは陰部に押し当てられただけ。だが、手に触れて初めて分かった。とてつもなく太く大きいと……。
しかし、何故にもうこんな事になっているのか。そもそも、男の中心部を触っている事にも羞恥が募る。シュリーは顔を紅潮させてプルプルと小刻みに震えた。
「な、なんで……こんなに! 私、何も……」
──していないのに。と、シュリーが言うや否や、彼はククと笑いを溢した。
「……言っただろ? 変態だって。厭らしい話題をしたのもそうだが、お前の反応だとかで直ぐこうなる。ムキになってプリプリ怒るシュリーも可愛いがな」
あっさり言われるが、いよいよどう反応して良いかも分からない。黙りしてしまうと、彼は身体を起こし上げてシュリーに覆い被さった。
「それをシュリーの中に嵌めるんだよ」
……それで、子供を宿す場所に俺の精を受け止めてもらう。と、耳元で囁かれた言葉にシュリーは火を付けたようにドッと紅潮した。
「もう二度と離したりしない。なぁ、やっぱり抱かせてくれないか」
甘やかに囁かれ、シュリーは彼を不安げに見つめたままゆっくりと頷いた。
やがて、燭台のあかりに映し出された二つの影は一つに重なり合った。
優美な白檀の香りに混じって麝香の甘い香りがする。寝台の横に設置された几の上に置かれた香炉から白い煙をゆったりと上がっていた。
しかし、匂いはそれだけじゃない。香の匂いに混じって淫靡な香りと汗が少しだけ混ざっていた。
「は……ん、ぁ……ぁああ……やっ……」
シュリーは、眦に大粒の涙を溜めて、与えられる快楽と羞恥に悶えていた。
もう何度かこの行為をされているが、何度目になっても慣れやしない。自分の脚の付け根で舌を這わせるイシャンと視線が交わり、堪らずシュリーがきゅっと目を瞑る。
しかし──直ぐに淫芽に熱い息が吹きかかった。
執拗にねっとりと舐られて、既に何度も達した場所に息が吹きかかるだけで途方も無い刺激となる。背筋が甘く痺れて、シュリーはビクリと背筋を震わせた。
「俺の方ちゃんと見な。視線は反らすな」
「む……無理……」
──恥ずかしい。と、告げる前だった。ジュッ……と蜜を啜る音と共に、途方も無い悦楽が突き抜け、ほんの僅かな圧迫感を覚えた。同時に響き渡る音はグチュグチュとした粘り気を含んだ浅ましい水音で……。シュリーは直ぐに目を瞑った事を後悔した。目を瞑れば、耳が研ぎ澄まされ音がより烈しく聞こえてくる。
「あんっ……やっ……んぁああ!」
堪らず目を開けば、直ぐに彼と視線が合う。
「いい子だ。そのままもう一回達しな」
僅かに唇を離してそう言って。彼は抉るようにねっとりと淫芽を再び舐る。卑しい音は止まらぬまま。ジュ……っと強く吸われたと同時。背筋に甘い痺れが暴れ周り、シュリーの脳裏は白々と霞んだ。
「──ぁあああああ!」
悲鳴にも近しい嬌声を上げ、達したシュリーは完全に力を失った。しかし、間もなくだった。脚を抱え直されたと思った時、再びシュリーの意識ははっきりとした。
ぼんやりとした視界──やがて焦点が定まって、はっきりと映し出されたものにシュリーの血の気は一気に引いた。
初めて見た、大人の男の中心部──怒張したそれは凶悪としか形容出来ない。自分の想像よりもずっと大きかっただろう。否や、彼のものが異様に大きいのか……。
「充分に解れたし大丈夫だと思うが。挿れるから……」
そう言って、蜜口に押し当てられるものだが、シュリーはぶんぶんと首を横に振り腰を引いた。
「む、無理よ……! そんなに大きいの絶対無理!」
もはや今にも泣き出しそうな程。シュリーが震えて言うが、彼は呆気に取られた面でポカンと口を開いていた。
「は……? そ、そうか? 俺の多分、そこまで大きい方でもないとは思うが……」
いったい何を基準に言っているのだろう。しかし、どことなく嬉しそうに彼は笑う。
だが、その途端──割れ目に添ってくちくちと雄芯を擦りつけるものだから、シュリーの背筋には再び途方も無い快楽が突き抜ける。
「……ぁ、ん! ぁ、あああ!」
直ぐに漏れ出る嬌声を絡め取るように彼の舌が口腔へと滑り込む。だが、一拍も経たぬうち……蜜口にピタリと彼の雄芯が宛がわれ、シュリーはピクリと震えた。
「いいかシュリー、俺の言う通りにしろ」
僅かに出来た隙間で彼は言う。ただ接吻に集中しろと……。そう告げた須臾だった──ミチミチと媚肉を掻き分け、とんでもない質量が自分の中に浸食してくる感覚を覚えた。だが、ある一点でそれはピタリと止まる。
「ん……ふっ」
溺れる程の接吻を与えつつ、幾度も彼は浅く抽送する。だが、その途端だった。ミシッ……と何かが軋む感覚とほんの僅かな痛みを覚えてシュリーの背が魚のように撥ねた。
そして幾何か。浅い抽送を繰り返し、彼の雄芯が奥へ奥へと辿り着いた。
「ほら、全部……挿った」
接吻を解き、彼は穏やかに語りかける。──痛くないか。と、やや心配気に付け添えて顔を覗き込まれるものだから、シュリーは何度も頷いた。
破瓜は痛みを伴う。そう聞いていたが、想像よりも全く痛くなかった。確かに少しだけピリっとした感覚はあったものだが……。
「だいじょぶ、うそ、みたい。あんな大きいの全部、私に……」
──挿っちゃったんだ。と、接吻の余韻で蕩けた面のままシュリーが言えば、彼は目を瞠り、その頬にはたちまち朱が帯びる。
「おい……そんな顔で、そんなの言うのは……」
──反則だ。と、余裕無く言われ、抽送はいよいよ始まった。
それは決して烈しいものでは無い。浅くゆるゆると緩やかな動きだが、ある一点を掠めると途方も無い悦楽が生まれシュリーはピクピクと震え上がる。
指で何度か擦られた事もあるだろう。先程だって舐めながらそこを執拗に押すように撫でられたもので……。
「ひ、んぁ……ああ。いしゃ、ん。そ、こ……」
何か変。と告げるなり、彼はシュリーの腰を抱えて膝立ちになる。
その須臾──擦れていた場所への刺激は烈しいものに変わり果て、シュリーは大きく目を瞠る。
「ひっ……んぁ、ああああ!」
「ここだな? 初めてなのに中で感じられて厭らしいなシュリーは」
意地悪く言って、彼はほくそ笑むが、それでも抽送は優しくゆったりとしたまま。
「ぁ、違っ……厭らしくなんか……」
「ん、厭らしいだろ? さっきまで処女だった癖に」
またも意地悪く言われて、シュリーがふるふると首を横に振ると、彼は覆い被さり頬に瞼に唇を寄せた。
「……そういうとこひっくるめて全部が可愛いんだがな」
甘やかにそう告げて、彼はシュリーの唇に烈しい接吻を与えた。
──やがて、ゆるゆるとした抽送はやがて烈しさを増した。
皮膚がぶつかりあう音が響く都度、身体の奥がジンと蕩けそうな途方の無い快楽。そして、彼の息づかいに間近に聞こえる胸の高鳴り。自分の胎内に飛沫を感じたと同時、白い波に攫われるようにシュリーの意識は遠のいた。
「い、いぃ……イシャン! な、何で?!」
何があったかと言えば……部屋に着くなり彼に突然抱えられたのである。彼も彼で入浴を済ませて来たのだろう。服装も寝間着に変わっており、何だか髪から良い匂いがした。しかし、唐突な行動に吃驚したのは言うまでもない。部屋に入って早々だ。もはや待ち伏せと言って過言で無いだろう。
だが彼は『抱っこしたいだけ』と背筋が凍る程甘やかに言うのだった。
しかし、こういう言い方をする時は……彼が何を淫靡な事をしようとする時で……。
そうして案の定──寝台の上に下ろされ、あれよあれよという間に組み敷かれて現在に至るのだ。
「何でって……お前、正妻になる事を承諾しただろ? その晩だ。このくらいの覚悟はしてなかったのか?」
言われてシュリーは真っ赤になって固まってしまった。
……今更のように思い出すと、着替えとして用意されていた下着はいつものものに比べたら妙に派手だとは思った。それも結び目が横にあるもので……。引っ張ってしまえば簡単に脱げてしまうだろうとは思った。しかし渡された下着に文句など言えやしない。シュリーは特に何も考えずにそれを履いてきた。
「……て、ないわ」
あわあわと口を動かして言うとイシャンは首を捻る。
「何だ?」
「そ、そんな覚悟出来てないわ! た、確かに今日の下着……ちょっと派手だなって思いやしたけど……」
あまりに動揺して言うと、彼はたちまち目を細くてシュリーの腰周りに視線を落とした。
「ほぉ……」
「い、いや。見ないでよ。恥ずかしいから……!」
「俺、今までにもっとシュリーの恥ずかしい場所を見てきてるんだが……」
何ら悪びた様子もなくイシャンは平坦な調子で言うが、シュリーはたちまち真っ赤になって身悶えた。
「やっと俺だけのシュリーになった。だから抱きたいとは思ったんだが」
それも、真っ正面から言われてシュリーは言葉を失った。
そんなに真摯に言われたら、どう答えて良いかなんて分からなかった。しかし、こうもジッと見つめられるのも恥ずかしい。いたたまれない程に顔を赤々と染めたシュリーは、イシャンから視線を反らした。
「……そんなに嫌なら止めとくか。そっちの世界、婚前に関係を持つのは不浄とさえ言われてるらしいしな」
イシャンはそう言って、身を引こうとした。だが、シュリーは咄嗟に彼のクルタの袖を掴んだ。
「あの、別にね。嫌とかそういうのじゃないのよ。確かに婚前の関係は不浄よ。だけど、私は神聖娼婦だったから結婚って概念が無いわ。だからそれは適合されない。……ただいきなりで驚いたのと……その……」
恥ずかしい。と、本心を包み隠さず告げると、彼は安堵したのか深く息をつく。
しかし──「シュリーが恥ずかしがる方が俺もすげぇ興奮するんだけどな……」と、しれっと言う。この人は綺麗な顔であっさりと、何て事を言うのだろう……。シュリーは幾度も目をしばたたく。
シュリーは顔を真っ赤にしたまま口を噤んでしまう。方やイシャンは隣に寝転んで、シュリーの髪を梳くように撫で始めた。皮肉にも、その手つきが意外にも心地よい。ジトとシュリーが目を細めると彼は苦笑いを浮かべた。
「……初日にも言ったが、お前が正妻になるってはっきり認めない限り、最後までする気なんか無かったもんでな」
……つまり、風呂から戻ってきた途端に完全に我慢の限界だった。と、ばつが悪そうにイシャンは白状する。続け様に「先走ってごめん」なんて謝られるが、どう返して良いものか……。シュリーは暫く黙考した。
「でも、どうしてそこまで私を大事にしたの……」
”自分は無価値”と、思わず溢しそうになるが、シュリーは直ぐに口を噤んだ。自己卑下は罰せられる。今この状況下だ。どんな淫靡な辱めを受けるかだって分からなかった。彼はシュリーの眉間に寄った皺を指でつつく。
「それくらいしないと誠意なんか証明出来ないだろ? 何度も言うが、そもそもお前って貞操概念がかなりぶっ壊れてるし」
……男のそこを舐めて奉仕して挿れるだ言われたし……。なんて、過去を掘り返して言われるものだから、シュリーの頬は瞬く間に紅潮した。
「ま、まって……でもそれはイシャンがおかしいと思うわ? だって、そういう行為って子供を宿す為の行為とは言え、基本的には男性を悦ばせる為にあるものじゃない? 普通はそういう……」
認識じゃないのか。と、言い切る前に彼は「いいや」と、口を挟んだ。
「……俺は変態かも知れないが、別におかしくはないとは思う。そもそもだ。そんなの対等じゃないだろ? まぁ……そんなにシュリーが俺のものを可愛い舌で舐めたいっていうなら……」
うんざりしたように言って直ぐ。イシャンが寝たまま下衣のボタンを外し始めたものだから、シュリーは慌てて彼の手を掴んでしまった。
「ま、ま、待って……!」
「お前、本当に待ってが多いな……」
イシャンは呆れた視線でシュリーを射抜いた。
「か、可愛い舌って……そ、そんな急には、私にだって心の準備くらい……!」
ふるふると首を横に振って、慌ててシュリーが捲し立てると、イシャンは深い吐息をついた。
「……と、いうのか。シュリーはそもそも男のものなんて見た事無いだろ? 多分、初見でビビると思うし。舐めたいだの絶対思わんと思うがな」
──半ば冗談だった。なんて彼が、幼子でもあやすようにポンポンと前髪を撫でてくるものだから、シュリーは思わずムキになってしまった。
「弟が沢山いたんだからあるわ! そ、それと寺院に祀られてる破壊を司る男神のものならば」……見たことある。と、言わんとすれば、直ぐにイシャン言葉を割った。
「それ、お前が子供の頃の話だろ? 大人と子供じゃ全く違げぇからな。あと、破壊を司るって多分それ……ルドラの血筋に当たる。っていうか……どう考えてもルドラのもんに当たる」
見たもんは今すぐに忘れとけ。と、きっぱりと言われてシュリーは顔面を真っ赤に染めて唖然とした。
──国教は多神信仰。その中でも維持を司る男神と破壊を司る男神の二つが絶大な信仰を集めており、維持派と破壊派と宗派さえある。
力関係で言えば、維持を司る男神が強いそうだが、破壊を司る男神は負けず劣らずの人気だ。そして何故か……破壊を司る男神は、男根として祀られているもので、本当にそこらじゅうにある。生命を生み出し、そして破壊する。この世の根源。或いは原理を男根として表しているらしいが……。
しかし考えると、妙に腑に落ちる。族長のイシャンが維持。そして副族長のルドラが破壊と言うのなら……。
シュリーがようやく頷くと、彼は納得したのか満足げに頷いた。
「まぁ……仕置きだなんだって、散々俺ばっかりが触ってたしな……」
そう言って彼は、シュリーの手をやんわりと掴むと下衣の上から中心を触れさせた。
そこは既に怒張しており硬かった。今までは陰部に押し当てられただけ。だが、手に触れて初めて分かった。とてつもなく太く大きいと……。
しかし、何故にもうこんな事になっているのか。そもそも、男の中心部を触っている事にも羞恥が募る。シュリーは顔を紅潮させてプルプルと小刻みに震えた。
「な、なんで……こんなに! 私、何も……」
──していないのに。と、シュリーが言うや否や、彼はククと笑いを溢した。
「……言っただろ? 変態だって。厭らしい話題をしたのもそうだが、お前の反応だとかで直ぐこうなる。ムキになってプリプリ怒るシュリーも可愛いがな」
あっさり言われるが、いよいよどう反応して良いかも分からない。黙りしてしまうと、彼は身体を起こし上げてシュリーに覆い被さった。
「それをシュリーの中に嵌めるんだよ」
……それで、子供を宿す場所に俺の精を受け止めてもらう。と、耳元で囁かれた言葉にシュリーは火を付けたようにドッと紅潮した。
「もう二度と離したりしない。なぁ、やっぱり抱かせてくれないか」
甘やかに囁かれ、シュリーは彼を不安げに見つめたままゆっくりと頷いた。
やがて、燭台のあかりに映し出された二つの影は一つに重なり合った。
優美な白檀の香りに混じって麝香の甘い香りがする。寝台の横に設置された几の上に置かれた香炉から白い煙をゆったりと上がっていた。
しかし、匂いはそれだけじゃない。香の匂いに混じって淫靡な香りと汗が少しだけ混ざっていた。
「は……ん、ぁ……ぁああ……やっ……」
シュリーは、眦に大粒の涙を溜めて、与えられる快楽と羞恥に悶えていた。
もう何度かこの行為をされているが、何度目になっても慣れやしない。自分の脚の付け根で舌を這わせるイシャンと視線が交わり、堪らずシュリーがきゅっと目を瞑る。
しかし──直ぐに淫芽に熱い息が吹きかかった。
執拗にねっとりと舐られて、既に何度も達した場所に息が吹きかかるだけで途方も無い刺激となる。背筋が甘く痺れて、シュリーはビクリと背筋を震わせた。
「俺の方ちゃんと見な。視線は反らすな」
「む……無理……」
──恥ずかしい。と、告げる前だった。ジュッ……と蜜を啜る音と共に、途方も無い悦楽が突き抜け、ほんの僅かな圧迫感を覚えた。同時に響き渡る音はグチュグチュとした粘り気を含んだ浅ましい水音で……。シュリーは直ぐに目を瞑った事を後悔した。目を瞑れば、耳が研ぎ澄まされ音がより烈しく聞こえてくる。
「あんっ……やっ……んぁああ!」
堪らず目を開けば、直ぐに彼と視線が合う。
「いい子だ。そのままもう一回達しな」
僅かに唇を離してそう言って。彼は抉るようにねっとりと淫芽を再び舐る。卑しい音は止まらぬまま。ジュ……っと強く吸われたと同時。背筋に甘い痺れが暴れ周り、シュリーの脳裏は白々と霞んだ。
「──ぁあああああ!」
悲鳴にも近しい嬌声を上げ、達したシュリーは完全に力を失った。しかし、間もなくだった。脚を抱え直されたと思った時、再びシュリーの意識ははっきりとした。
ぼんやりとした視界──やがて焦点が定まって、はっきりと映し出されたものにシュリーの血の気は一気に引いた。
初めて見た、大人の男の中心部──怒張したそれは凶悪としか形容出来ない。自分の想像よりもずっと大きかっただろう。否や、彼のものが異様に大きいのか……。
「充分に解れたし大丈夫だと思うが。挿れるから……」
そう言って、蜜口に押し当てられるものだが、シュリーはぶんぶんと首を横に振り腰を引いた。
「む、無理よ……! そんなに大きいの絶対無理!」
もはや今にも泣き出しそうな程。シュリーが震えて言うが、彼は呆気に取られた面でポカンと口を開いていた。
「は……? そ、そうか? 俺の多分、そこまで大きい方でもないとは思うが……」
いったい何を基準に言っているのだろう。しかし、どことなく嬉しそうに彼は笑う。
だが、その途端──割れ目に添ってくちくちと雄芯を擦りつけるものだから、シュリーの背筋には再び途方も無い快楽が突き抜ける。
「……ぁ、ん! ぁ、あああ!」
直ぐに漏れ出る嬌声を絡め取るように彼の舌が口腔へと滑り込む。だが、一拍も経たぬうち……蜜口にピタリと彼の雄芯が宛がわれ、シュリーはピクリと震えた。
「いいかシュリー、俺の言う通りにしろ」
僅かに出来た隙間で彼は言う。ただ接吻に集中しろと……。そう告げた須臾だった──ミチミチと媚肉を掻き分け、とんでもない質量が自分の中に浸食してくる感覚を覚えた。だが、ある一点でそれはピタリと止まる。
「ん……ふっ」
溺れる程の接吻を与えつつ、幾度も彼は浅く抽送する。だが、その途端だった。ミシッ……と何かが軋む感覚とほんの僅かな痛みを覚えてシュリーの背が魚のように撥ねた。
そして幾何か。浅い抽送を繰り返し、彼の雄芯が奥へ奥へと辿り着いた。
「ほら、全部……挿った」
接吻を解き、彼は穏やかに語りかける。──痛くないか。と、やや心配気に付け添えて顔を覗き込まれるものだから、シュリーは何度も頷いた。
破瓜は痛みを伴う。そう聞いていたが、想像よりも全く痛くなかった。確かに少しだけピリっとした感覚はあったものだが……。
「だいじょぶ、うそ、みたい。あんな大きいの全部、私に……」
──挿っちゃったんだ。と、接吻の余韻で蕩けた面のままシュリーが言えば、彼は目を瞠り、その頬にはたちまち朱が帯びる。
「おい……そんな顔で、そんなの言うのは……」
──反則だ。と、余裕無く言われ、抽送はいよいよ始まった。
それは決して烈しいものでは無い。浅くゆるゆると緩やかな動きだが、ある一点を掠めると途方も無い悦楽が生まれシュリーはピクピクと震え上がる。
指で何度か擦られた事もあるだろう。先程だって舐めながらそこを執拗に押すように撫でられたもので……。
「ひ、んぁ……ああ。いしゃ、ん。そ、こ……」
何か変。と告げるなり、彼はシュリーの腰を抱えて膝立ちになる。
その須臾──擦れていた場所への刺激は烈しいものに変わり果て、シュリーは大きく目を瞠る。
「ひっ……んぁ、ああああ!」
「ここだな? 初めてなのに中で感じられて厭らしいなシュリーは」
意地悪く言って、彼はほくそ笑むが、それでも抽送は優しくゆったりとしたまま。
「ぁ、違っ……厭らしくなんか……」
「ん、厭らしいだろ? さっきまで処女だった癖に」
またも意地悪く言われて、シュリーがふるふると首を横に振ると、彼は覆い被さり頬に瞼に唇を寄せた。
「……そういうとこひっくるめて全部が可愛いんだがな」
甘やかにそう告げて、彼はシュリーの唇に烈しい接吻を与えた。
──やがて、ゆるゆるとした抽送はやがて烈しさを増した。
皮膚がぶつかりあう音が響く都度、身体の奥がジンと蕩けそうな途方の無い快楽。そして、彼の息づかいに間近に聞こえる胸の高鳴り。自分の胎内に飛沫を感じたと同時、白い波に攫われるようにシュリーの意識は遠のいた。
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私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
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翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
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