ラディアント魔宝石学園へようこそ

nika

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大丈夫。ちゃんとイケメンは出てきます。

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この世界には、人間以外の全ての自然物……たとえば、通りすがりの猫、道端に咲く花、落ちている小石にだって、魔力が秘められている。

その魔力を引き出して起こす様々な現象を、
私たちは魔法と呼んでいる。
魔力がない代わりに私たち人間は魔法が使えるんだって。



『ラディアント魔宝石学校へようこそ』



季節は冬も終わりに差し掛かった頃。
夕食を食べ終えた我が家では父、母、姉二人を交えた家族会議が行われている。

喉を鳴らしてお茶を一気飲みした後、私は家族四人の顔を見て大きく息を吸った。
ある事実を伝えるために。

「私、学校を退学させられる事になっちゃった」

私のその発言は、その場の時間を数秒止めた。
そのうちに真っ先に反応したのは、次女の琥珀ねぇだった。

「え?みかげ、悪い。もっと詳しく言って」

琥珀ねぇはサッパリした言葉遣いをする。
けれどそれは、レイヤーの入ったショートカットの黒髪にキリッとした顔立ちの琥珀ねぇにとても似合っていると思う。

「私、五歳から通ってた、ここから電車で三時間のロイヤル魔法学校中等部を辞めさせられる事になりそう」
「みかげちゃん。そうじゃなくて、事の顛末をね?退学の理由を教えてちょうだい」

今度は長女の瑠璃ねぇが困ったように尋ねた。
瑠璃ねぇは琥珀ねぇと同じ黒髪黒目だけれど、優しい顔立ちと長い髪は上品なお嬢様のようで話すだけで空気が和らぐ。
私は、落ち着いて今日あった出来事を話す事にした。

それは今日の五時間目の授業の時のこと。
寒空の下、学期末の試験が行われていた。

「えー、中等部三年生は主に浮遊の魔法を勉強しましたね。なので今日はこのツバメの羽の持つ魔力を使って、ここに並べてあるものをどれか一つ浮かせてもらいます」

優しそうな中年おじさんの先生はそう言って、テーブルの上に色んな大きさのボールを並べる。
生徒達は、空高くボールをあげてみたり、ふわふわと楽しそうに浮遊させてみたり思い思いの通りに魔法を使った。
試験は順調に進んでいき、とうとう一番最後、私の番がやってくる。

「はぁぁーーーい!じゃ!!三日月みかげさーーーん!!お願いしまーーす!!」

先生はいきなり五十メートルくらい離れた。
遠いな?
先生だけじゃなくて生徒達も同じくらい遠巻きに私を見ている。
おかしいな!?
なんでみんなは、離れるの!?
思わず川柳になってしまった。

ま、いいや!
それはいつものことだ。

私は魔法を使おうと手を上げた。

よし、いくぞ!!

「あーーー!?!?待って!!」

その瞬間、先生が私を止める。
首を傾げると先生は大声を出すのに疲れたのか、どこからかメガホンを取り出した。

「魔法を使う時は、いきまーすとか、合図を言ってくださーい」
「分かりましたー」
「え?聞こえな」
「いきまーーーす!!!」

ツバメの羽から魔力を引き寄せる。
指先にざわざわとした強いエネルギーを感じる。
それは一瞬で嵐のような風を吹かせはじめて、私はその膨大な量の何かをボールに向かって振りかけた。

ボールよ、飛べ!

ボールが勢いよく弾けて辺りが真っ白になる。
その瞬間轟音が聞こえて、私はハッと目が覚めると保健室にいた。

「あら、起きた?」

マダムのような風貌の保健室の先生がカーテンを開ける。
私は頭をくらくらさせながらベッドから起き上がった。

「あの、先生……私はまた……」
「うん、魔法を爆発させたみたい。保健室の窓から見えてたわ。目が覚めたら職員室に来なさいって担任の松田先生が言ってたわよ」
「はい」

あ、良かった。
今日は髪の毛焦げてないや。

私は肩にかかる茶色い髪を指で弾いた。

「あ、そうそう。今日は交流会で外部の学校から先生や生徒がきてるから、すれ違ったら挨拶はしっかりね」
「はーい」

紺色のセーラー服をはたいて保健室を出た私は職員室へ向かった。
放課後の学校は部活動をする生徒たちで賑やいでいて、静かな廊下にも遠くから明るい声がかすかに届いていた。

窓から見えるサッカー部の試合を見つめながを角を曲がる。
すると、急に目の前が真っ暗になって体に何か衝撃が走った。

「わっすみません!」

誰かにぶつかった!?

数歩下がって謝ると、目の前には髪も目も薄い金色の超美青年が立っている。
ボリュームのあるアイスブルーのトップスに黒いスキニーを履いていて、ミディアムなウルフカットの髪型は中性的な魅力を引き出していた。

うわぁ!!綺麗な子ー!!
キラキラしてて月の光みたい。
誰だろう?
あ、さっき先生が交流会があるって言ってたから他校の子かな!?

「大丈夫か?」

ヴァイオリンのような透き通る音色が聞こえた。
声まで綺麗だから私は緊張してしまって、ペコペコと謝りながらその場を去った。

「大丈夫です~~!!えへえへあはは~!」

芸能人みたいだったな~!

小走りしながら職員室へ入って、慣れた手順で松田先生と個人面談室に向かった。
呼び出されるのはもう数え切れないくらい。
だけど部屋に入るといつもと違ってデプッとした校長先生が待ち構えていたので、私はさっきの出来事を忘れてしまうくらい動揺した。

なんで校長先生までいるんだろう!?
嫌な予感がする。
あ、そうだ。
進路志望の紙をまだ出してなかったから、きっとその話だ!

「松田先生。高等部への進学の件ですけど、私は宝石師になりたいので魔宝石コースに進みます!」

私は先手を打った。

ちなみに”魔宝石”とは、魔法で作ったクォーツっていう鉱物に、材料から引き出した魔力を込めて作るアクセサリーのこと。
込められた魔力によって便利な道具になったり、身につけると能力が上がったりする。

人間は魔法が使えると言っても上手に使いこなせる人は極わずか。
確率で言うと、微力な魔法が使える人が千人に一人。
様々な魔法を使いこなせるとなると、十万人に一人程度になる。
だからそれ以外のみんなは、”宝石師”と呼ばれる特別な人たちが作った魔宝石を使って便利に暮らしてるんだ。

魔宝石はその名の通り宝石みたいに美しい。
それを自分の手で生み出す宝石師になるのは、小さい頃からの私の夢だった。

「あ、えっと。宝石師になるにはまず魔法師の資格を取る必要があるのは知ってるよね?」

松田先生は私に尋ねた。

「はい。そのあと宝石師学校に通って試験を受けるんですよね?」
「そうそう。宝石師は魔法師の上級職だからね。だけど魔法師になるにも世の中のありとあらゆる魔法をマスターしないといけないし、宝石師学校は国のスカウトがなければ行けないから、かなり狭き門」

オホン。と校長先生が咳払いをして、松田先生の話を遮った。

「松田先生、それより本題に入ってください」
「あ、そうでしたね。三日月さん、ショックを受けるかもしれないけど単刀直入に言ってもいいかな?」
「え!?こわ!なんですか!?嫌です!」
「うん、じゃあ言うね」

嫌って言ったじゃん!
聞いちゃいないよ!
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