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銀河の副将軍
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助三郎と格乃進は、殺到する〝伝説のガクラン〟〝伝説のセーラー服〟を身に着けた群衆に向かって駈けていく。
群衆は皆、敵意を剥き出しにして、何か訳の判らない喚き声を上げながら二人に襲い掛かった!
「こうしちゃ、いられねえ!」
茜の兄、勝が目を剥き出し、顔には戦いへの喜びを顕わにし、くるりと背を向け走り出した。
校舎の裏手へ駆け込むと、すぐ【バンチョウ・ロボ】がどすどすと足音を響かせ、姿を現した。勝が搭乗したのだ。
「うおーっ!」と【バンチョウ・ロボ】は勝の雄叫び声を轟かせながら、全速力で二人の賽博格の戦いの中へと飛び込んでいく。忽ち【バンチョウ・ロボ】の巨体が、群がる暴徒を蹴散らし、次々と悲鳴が上がった。
「もう、お兄ちゃんったら、喧嘩となると、目がないんだから……」
茜はぼやいたが、それでも興奮に頬を染めている。
世之介は焦燥感に、じりじりとなっていた。
自分も何とかしたいと思っていたが、いかんせん世之介の本体は【リーゼント山】の制御室に横たわり、立体映像を投射しているだけである。指一本たりとも、触れることはできない。
「どうすりゃいいんだ……」
呟いた声を、水戸光邦──いや、今までと同じ光右衛門と呼ぼう──が聞き咎めた。
「世之介さん、この混乱を収めるのは、あなたしかいませんぞ!」
世之介は「えっ」と光右衛門の顔を見詰めた。光右衛門の顔には、確信が溢れている。
「どういうことでしょう」
世之介の口調は改まっていた。いくら〝伝説のガクラン〟によって性格が変わっても、江戸でたっぷりと将軍家の威光を味わっている世之介だけに、口調は改まらざるを得ない。
「省吾さんが制御室で微小機械の生産停止を命じたのに、爆嘯は止まりませんでしたな」
「はい」と光右衛門の言葉に、世之介は素直に頷いた。
「それは、風祭が……」
省吾が割り込むと、光右衛門は大いに頷く。
「そうです。風祭淳平なる者の強さへの欲望が、微小機械の停止命令を受け付けなかったのです。しかし、あの風祭は元の身体に戻り、戦いへの欲求は消えているはず。それなのに、微小機械の暴走は止まりません。どういうわけでしょうな?」
光右衛門の目には、謎掛けのような光が湛えられていた。
はて、何を言いたい……。
世之介が睨み返すと、光右衛門は真っ白な歯を見せ、笑った。
「答は一つしかありません! 世之介さん、あなたのせいなのです!」
群衆は皆、敵意を剥き出しにして、何か訳の判らない喚き声を上げながら二人に襲い掛かった!
「こうしちゃ、いられねえ!」
茜の兄、勝が目を剥き出し、顔には戦いへの喜びを顕わにし、くるりと背を向け走り出した。
校舎の裏手へ駆け込むと、すぐ【バンチョウ・ロボ】がどすどすと足音を響かせ、姿を現した。勝が搭乗したのだ。
「うおーっ!」と【バンチョウ・ロボ】は勝の雄叫び声を轟かせながら、全速力で二人の賽博格の戦いの中へと飛び込んでいく。忽ち【バンチョウ・ロボ】の巨体が、群がる暴徒を蹴散らし、次々と悲鳴が上がった。
「もう、お兄ちゃんったら、喧嘩となると、目がないんだから……」
茜はぼやいたが、それでも興奮に頬を染めている。
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「どうすりゃいいんだ……」
呟いた声を、水戸光邦──いや、今までと同じ光右衛門と呼ぼう──が聞き咎めた。
「世之介さん、この混乱を収めるのは、あなたしかいませんぞ!」
世之介は「えっ」と光右衛門の顔を見詰めた。光右衛門の顔には、確信が溢れている。
「どういうことでしょう」
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「省吾さんが制御室で微小機械の生産停止を命じたのに、爆嘯は止まりませんでしたな」
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「それは、風祭が……」
省吾が割り込むと、光右衛門は大いに頷く。
「そうです。風祭淳平なる者の強さへの欲望が、微小機械の停止命令を受け付けなかったのです。しかし、あの風祭は元の身体に戻り、戦いへの欲求は消えているはず。それなのに、微小機械の暴走は止まりません。どういうわけでしょうな?」
光右衛門の目には、謎掛けのような光が湛えられていた。
はて、何を言いたい……。
世之介が睨み返すと、光右衛門は真っ白な歯を見せ、笑った。
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