ウラバン!~SF好色一代男~

万卜人

文字の大きさ
上 下
85 / 106
世之介の変身

しおりを挟む
 ぴちゃぴちゃと音を立て、微小機械ナノ・マシーンの群れがゆっくりと、しかし、確実に、仰向けに倒れている世之介に近づいてくる。
 世之介は顔を音の方向に捻じ向け、じっと待ち受けた。もう、指一本、ぴくりとも動かすだけの気力も、体力も失われている。
 どうなるんだ……。
 漠然とした恐怖が込み上げるが、すでに考えることも面倒だった。
 どうにでもなれ……。世之介は退嬰的な思考に陥っていることを、ぼんやりと自覚していた。
「おいっ! そこの奴! 何、ボケーッとしているんだ? とっとと立ち上がらねえと、呑みこまれるぜ!」
 表示装置の画面からは、勝又勝が目を一杯に見開き、口角泡を飛ばして叫んでいる。
 うるさいなあ……。
 世之介は大の字に寝そべって、近づいてくる微小機械の黒光りする群れを待ち受けた。
 遂に微小機械の、ぬらぬらする触手が、世之介の〝伝説のガクラン〟に達した!
 瞬間、異様な衝撃が世之介の全身を貫いていた。
 微小機械と〝伝説のガクラン〟は、元々が同じものである。微小機械から〝伝説のガクラン〟は産まれたのだ。
 二つの微小機械は、今お互いを認識しあっていた。ガクランを構成している無数の微小機械の先端が情報端末となって、溢れた微小機械の本体と接触を開始している。
 一瞬の間に、ガクランと微小機械の間で、大量の情報が遣り取りされていた。
 水槽のあった部屋で、木村省吾が用意した計算機コンピュータに向けてガクランが発信した時とは、質的に違っていた。何しろ、直接お互いの端末を接触し合い、量的にも格段の相違を持った情報量が一気に遣り取りしあっているのである。圧倒的な違いであった!
 情報の一部は、脳細胞を通じ、世之介の中にも流れ込んでいた。
 今、世之介は万華鏡カレイド・スコープのような視界を、我が物としていた。
 微小機械が支配する、番長星のありとあらゆる場所に設けられた、端末の情報が世之介の中にあったのである。
 世之介の意識は、否応無しに変貌を強いられていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

ヒナの国造り

市川 雄一郎
SF
不遇な生い立ちを持つ少女・ヒナこと猫屋敷日奈凛(ねこやしき・ひなりん)はある日突然、異世界へと飛ばされたのである。 飛ばされた先にはたくさんの国がある大陸だったが、ある人物から国を造れるチャンスがあると教えられ自分の国を作ろうとヒナは決意した。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

日露平和友好条約締結へのシナリオ

由依
SF
エゴに付いての我見です

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ
SF
 佐竹 うさぎは中学2年生の女の子。  そして、巨大ロボット、ウイークエンダー・ラビットのパイロット。  地球に現れる怪獣の、その中でも強い捕食者、ハンターを狩るハンター・キラー。  今回は、えらい政治家に宇宙からの輸入兵器をプレゼンしたり、後輩のハンター・キラーを助けたり、パーフェクト朱墨の謎を探ったり。  優しさをつなぐ物語。  イメージ元はGma-GDWさんの、このイラストから。 https://www.pixiv.net/artworks/85213585

処理中です...