ウラバン!~SF好色一代男~

万卜人

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番長星への墜落

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 光右衛門が立ち上がった。
「それでは、番長星とやらに、連絡を取りませんとな。ここに我らがいる、ということを報せないと」
 助三郎が首を振った。
「ご隠居様。それが、さっきから番長星と思われる惑星に向け、こちらから緊急信号を発信しているのですが、いっかな返答が御座いません。こちらの信号は充分に強力で、向こうが普通の受信設備を持っていれば、聞こえるはずなのですが、うんでもなければ、すんでもありません」
 光右衛門は眉を顰めた。
「それは、おかしい! ちゃんと宇宙図に記録されている殖民星なら、幕府の奉行所か、あるいは代官所があるはず。なのに、返答がないとは、面妖としか言い様がありません」
 世之介は、じりじりと焦ってきた。
「それじゃ、こっちから出掛けよう! ここで立ち往生している時間は、もうないんだろう?」
 客室の動力は亜光速の航行で、ほとんどが消費されている。つまり、生命維持装置を働かせる時間が、残り少なくなってきているということだ。
 格乃進は渋面を作り、首を振った。
「それが、そうはいかんのだ」
 助三郎も同意した。
「問題がある」
 また問題である! よくも次から次へと、立て続けに問題が持ち上がるものだ……。
 それでも世之介は焦燥を押し殺し、格乃進に丁寧に尋ねた。
「何が問題なんです?」
 格乃進は世之介と、光右衛門の中間を見るようにして口を開いた。
「着陸装置がない、ということなのです」
 世之介は虚を衝かれ、一瞬「えっ?」と仰け反った。格乃進の言葉を取り違えたのかと思った。
「着陸装置って?」
 助三郎が説明する。
「客室は、宇宙航行をするための設計になっていません。非常事態が起きたら、救助の手を待ち、向こうの協力で曳航されるなり、接続されるなり、という方法を前提にしています。従って惑星に直接、着陸する状況など、考えられてはいないのです」
 格乃進は腕組みをした。躊躇いがちに口を開く。
「残る手段は、一つのみ! しかし、相当に危険ではありますな」
 光右衛門が静かに尋ねる。
「どのような方法なのですかな、格さん」
 格乃進は光右衛門に顔を向けた。
「墜落するのです、ご隠居様」
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