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第九章
オタクは面倒臭い
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玄関は白い、両開きのドアになっていて、見上げるほど巨大な扉だった。
ドアに近づくと、横の壁の一部が丸く開き、そこから金属のアームが突き出された。アームの先端には同じ材質の球体が接続されている。蓋がパカッと開くと、スピーカーらしき装置になっていた。
「用件を話せ!」
スピーカーから、さっきと同じキンキン声が聞こえてきた。
突き出されたスピーカーを見上げ、良太が目を輝かせた。
「わあ! ジャバ・ザ・ハットの入り口みたいだ!」
桃華の顔色を見て、萩野谷が小声で説明した。
「〝スター・ウォーズ〟三作目の〝ジェダイの帰還〟に出てくる場面でね。ジャバ・ザ・ハットとは、有名な悪役キャラクターだ」
桃華は「なるほど」と納得した。良太はSFオタクなのだ。中学生という年齢に関わらず、驚くほど古いSF映画や、小説に詳しい。
良太はニヤッと笑いを浮かべると、妙に甲高い声でスピーカーに話し掛けた。
「贈り物をしに、参上いたしましたです。ジャバ様によしなに願います……」
萩野谷が桃華に囁いた。
「同じ場面でC3POが入り口を通過するために言うセリフだ。さて通じるか?」
萩野谷の言葉が終わる前に、巨大な扉が、静々と内側に開き始めた。萩野谷と良太は顔を見合わせ「やったね!」とばかりに満面の笑みを浮かべて頷き合った。
二人の様子を見て、桃華は「オタクは面倒臭い」と心底思った。単に訪問するだけで、お互いのオタク知識を確認し合わなければ一歩も進めないのではないか?
開いた扉を通り過ぎ、四人は室内に踏み込んだ。
目が暗さに慣れると同時に、桃華を除く三人は歓声を上げた。
「おおっ! 凄え!」
と、これは萩野谷の声。
「ビョーキよ! この家の主人は、完全におビョーキなのよ!」
腐女子の牧野が捲し立てた。
中学生の良太は、最初に歓声を上げたまま完全に茫然としていた。
桃華は良太に話し掛けた。
「何が凄いのよ? ちょっと変わっている内装だけど」
良太は呆れたように桃華を見た。
「君、〝スター・ウォーズ〟を観ていないのか?」
良太のタメ口に、ちょっとムッとなったが、堪えて、桃華は首を横に振った。見かけが小中学生に見えるため、良太はついつい桃華に対し、同世代のような口調になる。
「ここはスター・ウォーズのデス・スター内部そっくりに作ってあるんだ。まるで映画のセットみたいだ……」
説明する良太はうっとりとなっていた。
全体に金属質の壁に、床は光沢のある同じく黒々とした材質だった。壁には間隔を置いて白く光る照明を配置し、メカニックな雰囲気を放っている。
スター・ウォーズという映画を知らなくとも、この家の中がひどく金をかけ凝った作りになっていることは、桃華には判った。
廊下の一方には、デス・スターにミレミアム・ファルコン号が強制着陸されたハンガー・デッキが再現されていた。もちろんミニチュアではあるが、巧みな遠近感の再現により、迫真のセットとなっていた。
ハンガー・デッキに着陸したミレミアム・ファルコン号の周りには、帝国のストーム・トルーパーが、真っ白な装甲を身に着け、ずらりと整列している。無論、ミニチュアではあるが、精巧な作りで、まるで本物のデッキを覗きこんでいるように見えた。
ドアに近づくと、横の壁の一部が丸く開き、そこから金属のアームが突き出された。アームの先端には同じ材質の球体が接続されている。蓋がパカッと開くと、スピーカーらしき装置になっていた。
「用件を話せ!」
スピーカーから、さっきと同じキンキン声が聞こえてきた。
突き出されたスピーカーを見上げ、良太が目を輝かせた。
「わあ! ジャバ・ザ・ハットの入り口みたいだ!」
桃華の顔色を見て、萩野谷が小声で説明した。
「〝スター・ウォーズ〟三作目の〝ジェダイの帰還〟に出てくる場面でね。ジャバ・ザ・ハットとは、有名な悪役キャラクターだ」
桃華は「なるほど」と納得した。良太はSFオタクなのだ。中学生という年齢に関わらず、驚くほど古いSF映画や、小説に詳しい。
良太はニヤッと笑いを浮かべると、妙に甲高い声でスピーカーに話し掛けた。
「贈り物をしに、参上いたしましたです。ジャバ様によしなに願います……」
萩野谷が桃華に囁いた。
「同じ場面でC3POが入り口を通過するために言うセリフだ。さて通じるか?」
萩野谷の言葉が終わる前に、巨大な扉が、静々と内側に開き始めた。萩野谷と良太は顔を見合わせ「やったね!」とばかりに満面の笑みを浮かべて頷き合った。
二人の様子を見て、桃華は「オタクは面倒臭い」と心底思った。単に訪問するだけで、お互いのオタク知識を確認し合わなければ一歩も進めないのではないか?
開いた扉を通り過ぎ、四人は室内に踏み込んだ。
目が暗さに慣れると同時に、桃華を除く三人は歓声を上げた。
「おおっ! 凄え!」
と、これは萩野谷の声。
「ビョーキよ! この家の主人は、完全におビョーキなのよ!」
腐女子の牧野が捲し立てた。
中学生の良太は、最初に歓声を上げたまま完全に茫然としていた。
桃華は良太に話し掛けた。
「何が凄いのよ? ちょっと変わっている内装だけど」
良太は呆れたように桃華を見た。
「君、〝スター・ウォーズ〟を観ていないのか?」
良太のタメ口に、ちょっとムッとなったが、堪えて、桃華は首を横に振った。見かけが小中学生に見えるため、良太はついつい桃華に対し、同世代のような口調になる。
「ここはスター・ウォーズのデス・スター内部そっくりに作ってあるんだ。まるで映画のセットみたいだ……」
説明する良太はうっとりとなっていた。
全体に金属質の壁に、床は光沢のある同じく黒々とした材質だった。壁には間隔を置いて白く光る照明を配置し、メカニックな雰囲気を放っている。
スター・ウォーズという映画を知らなくとも、この家の中がひどく金をかけ凝った作りになっていることは、桃華には判った。
廊下の一方には、デス・スターにミレミアム・ファルコン号が強制着陸されたハンガー・デッキが再現されていた。もちろんミニチュアではあるが、巧みな遠近感の再現により、迫真のセットとなっていた。
ハンガー・デッキに着陸したミレミアム・ファルコン号の周りには、帝国のストーム・トルーパーが、真っ白な装甲を身に着け、ずらりと整列している。無論、ミニチュアではあるが、精巧な作りで、まるで本物のデッキを覗きこんでいるように見えた。
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