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第六章
変化
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映像の美少女を、僕は知っている。
佐々木藍里。僕が「蒸汽帝国」というゲームで作成したパートナーキャラだ。彼女の姿を見た瞬間、僕の脳裏に、藍里の記憶が奔流のように蘇ってきた。
ゲームで僕と戦う藍里。
僕に向かって微笑む藍里。
そうだ! 僕が忘れていたのは、藍里の存在なんだ!
それだけでなく、僕はすっかり昨日の出来事を逐一、思い出していた。そんな僕に、朱美は質問した。
「誰なんだ、こいつは?」
僕は朱美に向き直ると、藍里について説明を始めた。
朱美は僕の説明に「ふんふん」と何度も頷きながら聞き入った。普通なら「ゲームのキャラが現実世界に飛び出した」という説明を一笑のもとに否定するところだったが、朱美は一切僕の説明を遮ることなく、最後まで聞き入った。
「不思議なことだな……」
朱美は腕組みをして考え込んだ。
「確かにこの藍里とかいう女は、流可男のゲームのパートナーなんだろう。お前の説明には矛盾はない。問題はお前だけじゃなく、クラスの連中も藍里の存在を忘れているということだ。流可男、今朝お前が登校した時、クラスの連中は藍里について何も質問しなかったんだろう?」
朱美の言葉に僕は虚を突かれていた。
そうだ、藍里の存在を忘れていたのは僕だけじゃなかった!
茫然となっている僕を無視して、朱美は言葉を続けた。
「佐々木藍里がなぜ現実世界に存在したかについては棚上げにして、オイラの関心は別にある」
朱美の眼光が鋭さを増した。
ぐいっと腕を上げ、僕を指さした。
「流可男は、オイラの薬の影響で、体質が劇的に変化した。キモオタで肥満児、近眼のお前が、今じゃどうだ? 昨日のお前と同じとは、誰も思わないだろう!」
「そ、そうだね……それで?」
僕はじりじりと後退した。
朱美の眼光に不吉な予感を感じたからだ。
にったあ! と朱美の唇が大きく笑いの形に歪んだ。
「もう一度、同じ実験を敢行する! 流可男、お前手伝え!」
「何だって!」
僕は悲鳴を上げた。
「嫌だ! あの薬をもう一度注射するなんて、断固として拒否する!」
朱美は僕の拒否の言葉に、ポカンと口を開けた。
「何言っているんだ? 誰が流可男に薬を注射するって言った?」
僕の頭が一瞬、空白になった。
「それじゃ、誰に注射するんだ?」
朱美は胸を張った。
「決まってる! それはオイラだ!」
僕はぼんやりと朱美の言葉を繰り返した。
「薬を注射するのは、朱美だって?」
朱美はニタニタ笑いを続けふんぞり返った。
「当たり前だろう! 貴重な薬を、何で流可男なんかに二度も使えるか! 流可男の変化で、薬の効能がはっきりした。どうやらオイラの開発した薬は、被験者に劇的な変化をもたらすらしい。それは筋力の倍増だ! もしオイラがこの薬を注射したらどうなると思う?」
朱美の言葉に、僕はぞっとなった。朱美は察するところ、あの薬の効能をはっきりとは分かっていなかったらしい。
佐々木藍里。僕が「蒸汽帝国」というゲームで作成したパートナーキャラだ。彼女の姿を見た瞬間、僕の脳裏に、藍里の記憶が奔流のように蘇ってきた。
ゲームで僕と戦う藍里。
僕に向かって微笑む藍里。
そうだ! 僕が忘れていたのは、藍里の存在なんだ!
それだけでなく、僕はすっかり昨日の出来事を逐一、思い出していた。そんな僕に、朱美は質問した。
「誰なんだ、こいつは?」
僕は朱美に向き直ると、藍里について説明を始めた。
朱美は僕の説明に「ふんふん」と何度も頷きながら聞き入った。普通なら「ゲームのキャラが現実世界に飛び出した」という説明を一笑のもとに否定するところだったが、朱美は一切僕の説明を遮ることなく、最後まで聞き入った。
「不思議なことだな……」
朱美は腕組みをして考え込んだ。
「確かにこの藍里とかいう女は、流可男のゲームのパートナーなんだろう。お前の説明には矛盾はない。問題はお前だけじゃなく、クラスの連中も藍里の存在を忘れているということだ。流可男、今朝お前が登校した時、クラスの連中は藍里について何も質問しなかったんだろう?」
朱美の言葉に僕は虚を突かれていた。
そうだ、藍里の存在を忘れていたのは僕だけじゃなかった!
茫然となっている僕を無視して、朱美は言葉を続けた。
「佐々木藍里がなぜ現実世界に存在したかについては棚上げにして、オイラの関心は別にある」
朱美の眼光が鋭さを増した。
ぐいっと腕を上げ、僕を指さした。
「流可男は、オイラの薬の影響で、体質が劇的に変化した。キモオタで肥満児、近眼のお前が、今じゃどうだ? 昨日のお前と同じとは、誰も思わないだろう!」
「そ、そうだね……それで?」
僕はじりじりと後退した。
朱美の眼光に不吉な予感を感じたからだ。
にったあ! と朱美の唇が大きく笑いの形に歪んだ。
「もう一度、同じ実験を敢行する! 流可男、お前手伝え!」
「何だって!」
僕は悲鳴を上げた。
「嫌だ! あの薬をもう一度注射するなんて、断固として拒否する!」
朱美は僕の拒否の言葉に、ポカンと口を開けた。
「何言っているんだ? 誰が流可男に薬を注射するって言った?」
僕の頭が一瞬、空白になった。
「それじゃ、誰に注射するんだ?」
朱美は胸を張った。
「決まってる! それはオイラだ!」
僕はぼんやりと朱美の言葉を繰り返した。
「薬を注射するのは、朱美だって?」
朱美はニタニタ笑いを続けふんぞり返った。
「当たり前だろう! 貴重な薬を、何で流可男なんかに二度も使えるか! 流可男の変化で、薬の効能がはっきりした。どうやらオイラの開発した薬は、被験者に劇的な変化をもたらすらしい。それは筋力の倍増だ! もしオイラがこの薬を注射したらどうなると思う?」
朱美の言葉に、僕はぞっとなった。朱美は察するところ、あの薬の効能をはっきりとは分かっていなかったらしい。
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