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第一章
連行
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一列に並んだ男女は、一人ずつそのプラスチックの下敷きを踏んでいった。全員目をつぶり、歯を食いしばって下敷きに足を載せた。
が、一人の若い男が下敷きに足を載せようとしたが、突然うずくまり、大声で叫んだ。
「出来ない! 僕には出来ない!」
泣き叫ぶ若い男を冷厳に見下ろし、赤田は厳しい声音で断罪した。
「決まりだ! そいつはロリコンだ! 連れて行け!」
詰襟の男が二人、若者の両脇を抱え上げた。若者は自分で立ち上がれず、ずるずると両足を引きずって連れていかれた。引きずられながらも「僕には出来ない、僕には出来ない」と繰り返しながら泣きじゃくっていた。
これが〝踏み萌絵〟検査だった。
考案したのは赤田で、ロリコンだったら絶対踏めそうにない絵柄を選定し、検査を実施したのだった。
泣きじゃくりながら連行される若者を、特攻服の男女が軽蔑の表情で見送った。特攻服たちは、連行される若者に向かって口々に罵声を浴びせかけた。
「死ね! このロリコン野郎!」
「お前なんか、一生社会に出てくるな!」
「痴漢野郎! この糞野郎!」
若者は社会的になんの犯罪も犯していない。単に、赤田の考案した〝踏み萌絵〟の検査を通過できなかった、というだけだ。しかしそれだけで十分だった。萌え絵を踏めない、ただそれだけで、ロリコン容疑は立証されたのである。
その後、数人の女性が〝踏みBL絵〟で腐女子だと判明し、連行された。この時代、ロリコンだけでなく、BL趣味も逮捕要件を満たす犯罪だった。ロリータ、BL、ショタなど異常嗜好とされる趣味は、総て反社会分子として社会から隔離された。
彼らの連行先は、東京から遥かに離れた海上の孤島に設立された監獄だった。
別名「ガッツ島」。
そこで強制労働を課せられ、社会復帰のため教育刑を受けさせられる。社会的に抹殺されるべきオタクを、正常なヤンキー、ツッパリにするため「ガッツを入れる」という目的の島だ。
赤田もガッツ島で教育刑を受け、すっかり人格が変容して戻ってきたのだった。戻ってきた時には、もとオタクの経験と知識を生かすロリコン捜査班の主任として辣腕を揮うようになっていた。
このようなもとオタクが転向し、ヤンキー、ツッパリに更生し、オタク弾圧者となることを〝オタ転び、ヤン起っき〟と呼ぶ。
燃え上がる焚火の明かりを受け、赤田の膨らんだ頬はてらてらと油光りしていた。
が、一人の若い男が下敷きに足を載せようとしたが、突然うずくまり、大声で叫んだ。
「出来ない! 僕には出来ない!」
泣き叫ぶ若い男を冷厳に見下ろし、赤田は厳しい声音で断罪した。
「決まりだ! そいつはロリコンだ! 連れて行け!」
詰襟の男が二人、若者の両脇を抱え上げた。若者は自分で立ち上がれず、ずるずると両足を引きずって連れていかれた。引きずられながらも「僕には出来ない、僕には出来ない」と繰り返しながら泣きじゃくっていた。
これが〝踏み萌絵〟検査だった。
考案したのは赤田で、ロリコンだったら絶対踏めそうにない絵柄を選定し、検査を実施したのだった。
泣きじゃくりながら連行される若者を、特攻服の男女が軽蔑の表情で見送った。特攻服たちは、連行される若者に向かって口々に罵声を浴びせかけた。
「死ね! このロリコン野郎!」
「お前なんか、一生社会に出てくるな!」
「痴漢野郎! この糞野郎!」
若者は社会的になんの犯罪も犯していない。単に、赤田の考案した〝踏み萌絵〟の検査を通過できなかった、というだけだ。しかしそれだけで十分だった。萌え絵を踏めない、ただそれだけで、ロリコン容疑は立証されたのである。
その後、数人の女性が〝踏みBL絵〟で腐女子だと判明し、連行された。この時代、ロリコンだけでなく、BL趣味も逮捕要件を満たす犯罪だった。ロリータ、BL、ショタなど異常嗜好とされる趣味は、総て反社会分子として社会から隔離された。
彼らの連行先は、東京から遥かに離れた海上の孤島に設立された監獄だった。
別名「ガッツ島」。
そこで強制労働を課せられ、社会復帰のため教育刑を受けさせられる。社会的に抹殺されるべきオタクを、正常なヤンキー、ツッパリにするため「ガッツを入れる」という目的の島だ。
赤田もガッツ島で教育刑を受け、すっかり人格が変容して戻ってきたのだった。戻ってきた時には、もとオタクの経験と知識を生かすロリコン捜査班の主任として辣腕を揮うようになっていた。
このようなもとオタクが転向し、ヤンキー、ツッパリに更生し、オタク弾圧者となることを〝オタ転び、ヤン起っき〟と呼ぶ。
燃え上がる焚火の明かりを受け、赤田の膨らんだ頬はてらてらと油光りしていた。
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