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第一章
提案
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神山は肩をすくめ、説明を続けた。
「新たな規制で、キャラの頭身を五頭身以上にしなければなりません。先生のキャラは四頭身なので、規制に引っかかります。それと顔に対する瞳の大きさも、7・5パーセント以内に留めなければならない、とされているんです。先生のキャラは、どう見ても十パーセント以上ですから」
美登里は呆れかえり、天井を見上げた。
「どうすりゃいいのよ! 頭身を上げろって? 目を小さく描けって? 冗談じゃないわ! そんなのあたしのスタイルじゃないわ」
規制に沿ったキャラにしようとすれば、絵柄を変えなくてはならない。しかしマンガ家にとって絵柄を変えるということは、死活問題でもある。マンガ家が絵柄をほいほい変えるなど、できる相談ではない。
「あのう……それで相談なんですが……」
打って変わって、神山ががらりと口調を変え、話し掛けてきた。神山の態度に美登里は少し身構えた。
「何よ相談って」
机の向こうの神山は座り直し、何か重大な提案を切り出すような顔つきになった。
ははあ……、と美登里は思った。
多分、これからが本題なのだ。
「崎本先生、そんなに国内の規制が嫌ですか?」
神山は「国内」という言葉に、特に力をいれたようだった。美登里は「ふむ」と顎を引いた。
「神山さん、国内、ということは海外を考えろということ?」
神山は晴れ晴れとした表情を浮かべた。
「そうです! さすが察しがいい。アジアや、欧米では日本のマンガが大人気なんですぜ。先生のマンガだって、翻訳されているのはご存知でしょう?」
美登里は無言でうなずいた。確かに美登里のマンガは翻訳され、世界各地で読まれている。がそのことについては、翻訳の許可を与えただけで、あまり深くは関与していない。
「つまり国内は諦めて、海外向けに描けってこと?」
美登里の言葉に神山はうなずいた。
「そうです。海外へのセッティングは、すべてこっちでやりますから、先生はただ、新作を描いてくれればいいんです。先生の描きたいマンガを、思い切り制約なしに描けるチャンスですよ」
美登里は腕を組んだ。
腕を組むと、美登里の巨大な胸がぐいっと押し上げられ、神山はちょっと顔を赤らめた。
「でもねえ、せっかく描いても、国内で誰も読んでくれないのは……」
神山は美登里の胸から視線を「べりべりべり!」と音が出そうなくらい引き剥がし、急いで口を挟みこんだ。
「これは一時のことです! いつか元に戻れば、その時こそ、先生の描いたマンガを国内で発表できますって! その日まで、頑張りましょう!」
美登里は考え込んでいた。
「新たな規制で、キャラの頭身を五頭身以上にしなければなりません。先生のキャラは四頭身なので、規制に引っかかります。それと顔に対する瞳の大きさも、7・5パーセント以内に留めなければならない、とされているんです。先生のキャラは、どう見ても十パーセント以上ですから」
美登里は呆れかえり、天井を見上げた。
「どうすりゃいいのよ! 頭身を上げろって? 目を小さく描けって? 冗談じゃないわ! そんなのあたしのスタイルじゃないわ」
規制に沿ったキャラにしようとすれば、絵柄を変えなくてはならない。しかしマンガ家にとって絵柄を変えるということは、死活問題でもある。マンガ家が絵柄をほいほい変えるなど、できる相談ではない。
「あのう……それで相談なんですが……」
打って変わって、神山ががらりと口調を変え、話し掛けてきた。神山の態度に美登里は少し身構えた。
「何よ相談って」
机の向こうの神山は座り直し、何か重大な提案を切り出すような顔つきになった。
ははあ……、と美登里は思った。
多分、これからが本題なのだ。
「崎本先生、そんなに国内の規制が嫌ですか?」
神山は「国内」という言葉に、特に力をいれたようだった。美登里は「ふむ」と顎を引いた。
「神山さん、国内、ということは海外を考えろということ?」
神山は晴れ晴れとした表情を浮かべた。
「そうです! さすが察しがいい。アジアや、欧米では日本のマンガが大人気なんですぜ。先生のマンガだって、翻訳されているのはご存知でしょう?」
美登里は無言でうなずいた。確かに美登里のマンガは翻訳され、世界各地で読まれている。がそのことについては、翻訳の許可を与えただけで、あまり深くは関与していない。
「つまり国内は諦めて、海外向けに描けってこと?」
美登里の言葉に神山はうなずいた。
「そうです。海外へのセッティングは、すべてこっちでやりますから、先生はただ、新作を描いてくれればいいんです。先生の描きたいマンガを、思い切り制約なしに描けるチャンスですよ」
美登里は腕を組んだ。
腕を組むと、美登里の巨大な胸がぐいっと押し上げられ、神山はちょっと顔を赤らめた。
「でもねえ、せっかく描いても、国内で誰も読んでくれないのは……」
神山は美登里の胸から視線を「べりべりべり!」と音が出そうなくらい引き剥がし、急いで口を挟みこんだ。
「これは一時のことです! いつか元に戻れば、その時こそ、先生の描いたマンガを国内で発表できますって! その日まで、頑張りましょう!」
美登里は考え込んでいた。
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