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プロローグ
覚悟
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戦いはいつも同じ形をとった、
圧制者と抵抗者、あるいは征服者と、被征服者。しかし指導者と妹たちは、いつの時でも、被弾圧側に立って戦っていた。
今、最後の戦いが迫っていた。
宇宙を終末へ導く〝虚無〟との戦いである。
最期の戦いには、一切の希望はなく、確実な敗北だけが待っていた。どのように終末を引き延ばそうとも、いずれ総ては〝虚無〟に呑み込まれようというのは、明らかだった。
指導者は静かに語りだした。
「皆も覚悟を決めているはずだが、もはや球殻を維持するだけのエネルギーは我々に残ってはいない。どのように頑張っても、僅か数億年で球殻は引き裂かれ、内部の生態系は破壊されるだろう。終末は近い。いや、すぐそこに迫っている!」
外側の〝虚無〟から笑いの波動が流れ、七つの妹たちを震わせた。
「〝虚無〟が笑っています!」
憤然としてフォンが叫んだ。
指導者は微塵も動揺を見せず、言葉を続けた。
「そこで我々は終末を受け入れ、次の宇宙に希望を託そうと思う」
衝撃が七つの妹を貫いた。
透明体のキーシャが興奮した様子で、激しく身震いをした。フォンの光を浴びたキーシャのあちこちから七色の反射光が煌めいた。
キーシャは激しいテレパシーを発した。
「それは……お兄様?」
キーシャの問い掛けに、指導者は力強く答えた。
「そうだ! 我々の最後のエネルギーを使って、次の宇宙の萌芽を残すのだ! 総てが〝虚無〟に呑まれた瞬間、時空はゼロになる。時もなく、空間もないその瞬間、次の宇宙が生まれるだろう。次に産まれた新たな宇宙で次の戦いが始まるのだ」
ルールーの葉が一斉にだらりと下を向いた。
フォンの光輝が一層、強まった。
グムの巨体がぶるぶると細かく震えた。
ノースの身体に埋め込まれた様々な表示装置が、複雑な模様を描く。
リームの半透明の身体色が、赤、黄色、緑、青と目まぐるしく変化した。
七つの存在の中で変化を見せなかったのは、ニュンだけだった。もっともニュンの実体というものはなく、空間それ自体に意識を転写しているためだ。ニュンの存在を知覚できるのは、妹たちだけだった。
ニュンは指導者に向かって、冷静に語りかけた。
「お兄様の仰る通りだと思います。どんなに我らがこの終末に逆らっても、いずれは破局を迎えるでしょう。その時になっては、もはや次の宇宙を産み出すこともできません。今、我々が対応策をとらなければ、機会は永遠に失われます……」
ニュンの言葉に、妹たちは覚悟を決めたようだった。全員、通常の状態に戻り、平静を取り戻した。
圧制者と抵抗者、あるいは征服者と、被征服者。しかし指導者と妹たちは、いつの時でも、被弾圧側に立って戦っていた。
今、最後の戦いが迫っていた。
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外側の〝虚無〟から笑いの波動が流れ、七つの妹たちを震わせた。
「〝虚無〟が笑っています!」
憤然としてフォンが叫んだ。
指導者は微塵も動揺を見せず、言葉を続けた。
「そこで我々は終末を受け入れ、次の宇宙に希望を託そうと思う」
衝撃が七つの妹を貫いた。
透明体のキーシャが興奮した様子で、激しく身震いをした。フォンの光を浴びたキーシャのあちこちから七色の反射光が煌めいた。
キーシャは激しいテレパシーを発した。
「それは……お兄様?」
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「そうだ! 我々の最後のエネルギーを使って、次の宇宙の萌芽を残すのだ! 総てが〝虚無〟に呑まれた瞬間、時空はゼロになる。時もなく、空間もないその瞬間、次の宇宙が生まれるだろう。次に産まれた新たな宇宙で次の戦いが始まるのだ」
ルールーの葉が一斉にだらりと下を向いた。
フォンの光輝が一層、強まった。
グムの巨体がぶるぶると細かく震えた。
ノースの身体に埋め込まれた様々な表示装置が、複雑な模様を描く。
リームの半透明の身体色が、赤、黄色、緑、青と目まぐるしく変化した。
七つの存在の中で変化を見せなかったのは、ニュンだけだった。もっともニュンの実体というものはなく、空間それ自体に意識を転写しているためだ。ニュンの存在を知覚できるのは、妹たちだけだった。
ニュンは指導者に向かって、冷静に語りかけた。
「お兄様の仰る通りだと思います。どんなに我らがこの終末に逆らっても、いずれは破局を迎えるでしょう。その時になっては、もはや次の宇宙を産み出すこともできません。今、我々が対応策をとらなければ、機会は永遠に失われます……」
ニュンの言葉に、妹たちは覚悟を決めたようだった。全員、通常の状態に戻り、平静を取り戻した。
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