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翌日、パックは旅の用意を整えた。出発を前に、子供たちはマリアと別れなくてはならなくなって名残惜しそうだった。
ムカデの後ろにドーデンたちは荷車をつけてくれた。荷車にはいっぱいに薪が積まれている。ムカデの燃料にするためである。薪の山を見て、はたしてこれでどれほど距離をかせげるが、パックは不安だった。しかし石炭は北の大陸一帯では使用されておらず、燃料といえば薪しかない。
荷車にはほかに食料が詰め込まれた。長い旅に備え、固く焼きしめたビスケット、燻製の肉、乾燥させた果物などである。パックはその礼に、サンディからもらった装飾品を差し出したが、ドーデンたちはそれを断った。
「そんなもの貰ったところで、交換するところはないしな。それよりあんたが持っていたほうがいい。なにかのときに役立つだろう」
「しかしそれじゃ貰いっぱなしだし……」
「気にすんな! 第一、あの戦いでおれたちに味方してくれたんじゃねえか!」
ドーデンはにやっと笑った。
「それより旅の無事を祈っているぜ!」
ありがとう、とパックは答えた。なんだか、胸がいっぱいになってしまう。
さようなら……と、子供たちがマリアに向けて手をふった。ためらいがちにマリアも手をふり返す。
パックが操縦桿を倒すと、ムカデはしゅっ、しゅっと蒸汽を吐き出しながら動き出した。
がらごろと音を立て、荷車がムカデに引かれていく。洞窟の奥深くから、ムカデは岩山の外へと出て行った。
早朝である。
立ち並ぶ岩山の間から、朝日が弱々しい光をふりまいていた。
緯度が高いせいか、日差しは長く影を引いていた。パックは岩山の洞窟をふり向いた。
洞窟の穴からは、盗賊たちの一家が勢ぞろいして顔を出している。みな手をちぎれそうにふっていた。パックもおおきく右手をあげふり返していた。
「マリア、ミリィのいるところを教えてくれ!」
パックの言葉にマリアはうなずき、腕を上げ指さした。
「この方向です」
うん、とパックは返事をしてムカデをそちらへと向けた。
旅のはじまりである。
ムカデの後ろにドーデンたちは荷車をつけてくれた。荷車にはいっぱいに薪が積まれている。ムカデの燃料にするためである。薪の山を見て、はたしてこれでどれほど距離をかせげるが、パックは不安だった。しかし石炭は北の大陸一帯では使用されておらず、燃料といえば薪しかない。
荷車にはほかに食料が詰め込まれた。長い旅に備え、固く焼きしめたビスケット、燻製の肉、乾燥させた果物などである。パックはその礼に、サンディからもらった装飾品を差し出したが、ドーデンたちはそれを断った。
「そんなもの貰ったところで、交換するところはないしな。それよりあんたが持っていたほうがいい。なにかのときに役立つだろう」
「しかしそれじゃ貰いっぱなしだし……」
「気にすんな! 第一、あの戦いでおれたちに味方してくれたんじゃねえか!」
ドーデンはにやっと笑った。
「それより旅の無事を祈っているぜ!」
ありがとう、とパックは答えた。なんだか、胸がいっぱいになってしまう。
さようなら……と、子供たちがマリアに向けて手をふった。ためらいがちにマリアも手をふり返す。
パックが操縦桿を倒すと、ムカデはしゅっ、しゅっと蒸汽を吐き出しながら動き出した。
がらごろと音を立て、荷車がムカデに引かれていく。洞窟の奥深くから、ムカデは岩山の外へと出て行った。
早朝である。
立ち並ぶ岩山の間から、朝日が弱々しい光をふりまいていた。
緯度が高いせいか、日差しは長く影を引いていた。パックは岩山の洞窟をふり向いた。
洞窟の穴からは、盗賊たちの一家が勢ぞろいして顔を出している。みな手をちぎれそうにふっていた。パックもおおきく右手をあげふり返していた。
「マリア、ミリィのいるところを教えてくれ!」
パックの言葉にマリアはうなずき、腕を上げ指さした。
「この方向です」
うん、とパックは返事をしてムカデをそちらへと向けた。
旅のはじまりである。
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