267 / 279
山賊
6
しおりを挟む
ばあん! という銃声と、火薬の臭いにパックはわれにかえった。
わあっ、という喚声と共に、ドーデンの一味と兵士たちが入り混じり戦っている。
戦いはドーデン側の不利であった。なによりかれらには銃というのがない。一方的におしまくられ、かれらは岩場の片隅に追いつめられていた。
ジャギーが叫んでいた。
「パック! 村長を助けてくれ……」
村長?
そうか、ドーデンのことだ。かれは以前、村長をしていたと言っていた……。
パックはムカデのアクセルを踏んだ。兵士たちの集団に突っ込む。
背後をふりかえった兵士たちは一様にぎょっとした表情になる。突っ込んでくるムカデに、目が点になった。
がんがんとムカデの外板に兵士たちの甲冑があたって音を立てた。兵士たちを跳ね飛ばし、ムカデは立ちすくんでいるドーデンの前にやってくると、兵士たちの銃口からかばうように横にとまった。
「はやく! 今のうちに!」
ありがてえ! と、ドーデンは返事をする。
「お前ら、逃げるぞ!」
おう! と部下たちが応じ、全員が荷車にとりついた。あの騒ぎの中で、獲物を積み込んでいたらしい。がらがらと騒音を立て、荷車が動き出す。ドーデンたちの執着に、パックはあきれた。命があぶないこの瀬戸際に、獲物をあきらめない態度はある意味、立派といっていい。
兵士たちが一斉に銃を発射しだした。しかし銃弾はかつかつという乾いた音を立て、ムカデの外板にあたってむなしく弾かれる。
パックはドーデンたちを守るようにしてムカデを走らせた。荷車の背後にムカデを置き、岩場を離れる。
顔を真っ赤にさせ、部下たちは荷車の梶棒にとりついて走り続ける。絶対、あきらめないつもりだ。
このままでは疲れて停まってしまうのはあきらかである。
一行が切り立った崖の隙間に入ったとき、パックの頭にひらめいたものがあった。
ぐい! と操縦桿のハンドルを引く。
ぐっとムカデの頭が持ち上がった。
がつ! がつ! と音を立て、ムカデの六対の足先が岩の面につきたてられた。
ほぼ垂直の岩面を、ムカデはよじ登っていく。これがムカデの能力なのだ。
兵士たちはあっけにとられ、棒立ちになった。
パックはムカデの蒸気機関の出力をいっぱいにあげた。
がばり! と、ムカデの口のところにある楔形の牙を開く。そして目の前の岩を掴み、六対の足をふんばった。
しゅしゅしゅしゅ……と、白い蒸気がムカデの全身からわきあがった。
ぐぐぐぐ……。
押していく。
やがて
岩はゆらりと傾きはじめる。
ぐらり、と岩は岩場から離れていった。ごん、どすんと音を立て、岩の塊は岩場をころげ落ちていった。
わあ! と兵士たちはいっせいに飛びのいた。
ごろん、ごろんと音を立て、岩の塊が崖の隙間を埋めてしまった。
道はとざされた。
わあっ、という喚声と共に、ドーデンの一味と兵士たちが入り混じり戦っている。
戦いはドーデン側の不利であった。なによりかれらには銃というのがない。一方的におしまくられ、かれらは岩場の片隅に追いつめられていた。
ジャギーが叫んでいた。
「パック! 村長を助けてくれ……」
村長?
そうか、ドーデンのことだ。かれは以前、村長をしていたと言っていた……。
パックはムカデのアクセルを踏んだ。兵士たちの集団に突っ込む。
背後をふりかえった兵士たちは一様にぎょっとした表情になる。突っ込んでくるムカデに、目が点になった。
がんがんとムカデの外板に兵士たちの甲冑があたって音を立てた。兵士たちを跳ね飛ばし、ムカデは立ちすくんでいるドーデンの前にやってくると、兵士たちの銃口からかばうように横にとまった。
「はやく! 今のうちに!」
ありがてえ! と、ドーデンは返事をする。
「お前ら、逃げるぞ!」
おう! と部下たちが応じ、全員が荷車にとりついた。あの騒ぎの中で、獲物を積み込んでいたらしい。がらがらと騒音を立て、荷車が動き出す。ドーデンたちの執着に、パックはあきれた。命があぶないこの瀬戸際に、獲物をあきらめない態度はある意味、立派といっていい。
兵士たちが一斉に銃を発射しだした。しかし銃弾はかつかつという乾いた音を立て、ムカデの外板にあたってむなしく弾かれる。
パックはドーデンたちを守るようにしてムカデを走らせた。荷車の背後にムカデを置き、岩場を離れる。
顔を真っ赤にさせ、部下たちは荷車の梶棒にとりついて走り続ける。絶対、あきらめないつもりだ。
このままでは疲れて停まってしまうのはあきらかである。
一行が切り立った崖の隙間に入ったとき、パックの頭にひらめいたものがあった。
ぐい! と操縦桿のハンドルを引く。
ぐっとムカデの頭が持ち上がった。
がつ! がつ! と音を立て、ムカデの六対の足先が岩の面につきたてられた。
ほぼ垂直の岩面を、ムカデはよじ登っていく。これがムカデの能力なのだ。
兵士たちはあっけにとられ、棒立ちになった。
パックはムカデの蒸気機関の出力をいっぱいにあげた。
がばり! と、ムカデの口のところにある楔形の牙を開く。そして目の前の岩を掴み、六対の足をふんばった。
しゅしゅしゅしゅ……と、白い蒸気がムカデの全身からわきあがった。
ぐぐぐぐ……。
押していく。
やがて
岩はゆらりと傾きはじめる。
ぐらり、と岩は岩場から離れていった。ごん、どすんと音を立て、岩の塊は岩場をころげ落ちていった。
わあ! と兵士たちはいっせいに飛びのいた。
ごろん、ごろんと音を立て、岩の塊が崖の隙間を埋めてしまった。
道はとざされた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、王太子は彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるリクを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化した王太子がついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フレアと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
Gear-Theater(ギア・シアター)
小本 由卯
ファンタジー
ある事情により、幼い頃から一緒に暮らしている3人。
祖母譲りの工学技術を持つ女性、アンベル。
優れた身体能力を持つ青年、ノワルフ。
平凡だが冷静で素直な青年、ブランフド。
そして3人は、蒸気機関によって繁栄した街、オーロプラータへとやってきた。
そんな3人組と街の人々が織り成す物語。
※カクヨム、ノベルアップ+、ノベルバ同時掲載作品。
キャラクター紹介
【アンベル・マゼノン】
工業区の第4工房に在籍する女性で、幼い頃に祖母から
工学技術を学んだ。
穏やかな性格とその技術で仲間を支える第4工房のリーダー。
幼かった自分の運命を変えてくれた祖母と親友2人に
感謝しながら今を生きている。
甘党。
【ブランフド・ルノージュ】
工業区の第4工房に在籍する青年で、過去に起きた事故で
彷徨っていた所をアンベルに救われる。
平凡だが冷静で素直な性格で、頼りになる親友2人を誰よりも
尊敬しており、自分なりに全力で支えたいと思っている。
【ノワルフ・カーラッテ】
工業区の第4工房に在籍する青年。
幼い頃にブランフドと共にアンベルに救われて以来
一緒に暮らしている。
長身で優れた身体能力を持ち、仲間の為なら自己犠牲もいとわない
勇気と優しさの持ち主である。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる