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帝国
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人々が散った後、ひとりの少女が残っていた。
マントを肩からはねあげ、羽の飾りをつけた帽子を小粋に横に被っている。
輝くような金髪に、澄んだブルーの瞳。
その唇は面白そうにかすかに上向いていた。
「ねえ、あんた!」
え……? と、パックは顔を上げた。
少女と目が合う。
「ねえ、あんたのことよ! あんたの名前、なんていうの?」
パックはちょっとむっとなった。
「なんだい、人に物を尋ねるときは……」
「自分からってね。判った、判った。あたしサンディっていうのよ。あんたの名前は?」
「パック……」
思わず答えてしまう。
「ああそう、パックっていうんだ。ね、パック。あんたの横にいる女の子。いったい正体は何なの?」
パックはマリアを見た。
「彼女はマリアっていうんだ。ロボットだ」
「ロボット? 何それ」
「人間と同じように行動する、機械人形さ」
へえ、とサンディの目がおおきくなった。
ひらり、とムカデに乗り込み、パックの近くにやってくる。
わ、とパックは上体をそらせた。
それくらいサンディは近々と顔をよせてくる。
「すごぉい……本当に機械なんだ! ね、もっとよく見せてよ!」
これはマリアに言っているのだ。
マリアはちょっと小首をかしげた。
そのマリアの手をとり、サンディは興奮していた。
「暖かいのね。機械なのに、どうして?」
マリアが答える。
「わたしは蒸気の力で動いているからです。蒸気の熱で、暖かいのでしょう」
サンディの頬が紅潮した。
「喋れるのね!」
マリアがうなずく。
「ね、パック。あんたがさっき言っていた、空を飛ぶ白球ってなんなの? 事情がありそうじゃない。あたしに話してくれない」
パックはとまどっていた。この少女は、どういうわけか人に命令することに慣れているようで、パックが断るなど頭から考えていないみたいだ。
まあいいか、あれだけいた人々の中で彼女ほど興味を示してくれた相手はいないし。
パックはロロ村で起きた事件を話しはじめた。ところどころサンディが質問をはさみこむ。その質問のしかたが当を得ていて、パックはいつしか彼女に語ることがあの事件について頭の中を整理することに気づいた。
いったいこの少女はなんだろう?
話し終えると、サンディと名乗った少女は腕を組んだ。
「信じられない話しね。でも、このマリアってロボットの女の子がいるんだもの。信じざるを得ないわ。その魔法って、いまもこの空中にあるのかしら?」
「それはニコラ博士に聞いてみないと判らないけど、マリアがこうして動いているんだから、そうなんだろうね」
サンディはぱちん、と両手を打ち合わせた。
「決めた! あたし、あんたと一緒にそのミリィって女の子を探す手伝いをしてあげる」
ふえっ、とパックはのけぞった。
「な、なんだってえ?」
マントを肩からはねあげ、羽の飾りをつけた帽子を小粋に横に被っている。
輝くような金髪に、澄んだブルーの瞳。
その唇は面白そうにかすかに上向いていた。
「ねえ、あんた!」
え……? と、パックは顔を上げた。
少女と目が合う。
「ねえ、あんたのことよ! あんたの名前、なんていうの?」
パックはちょっとむっとなった。
「なんだい、人に物を尋ねるときは……」
「自分からってね。判った、判った。あたしサンディっていうのよ。あんたの名前は?」
「パック……」
思わず答えてしまう。
「ああそう、パックっていうんだ。ね、パック。あんたの横にいる女の子。いったい正体は何なの?」
パックはマリアを見た。
「彼女はマリアっていうんだ。ロボットだ」
「ロボット? 何それ」
「人間と同じように行動する、機械人形さ」
へえ、とサンディの目がおおきくなった。
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わ、とパックは上体をそらせた。
それくらいサンディは近々と顔をよせてくる。
「すごぉい……本当に機械なんだ! ね、もっとよく見せてよ!」
これはマリアに言っているのだ。
マリアはちょっと小首をかしげた。
そのマリアの手をとり、サンディは興奮していた。
「暖かいのね。機械なのに、どうして?」
マリアが答える。
「わたしは蒸気の力で動いているからです。蒸気の熱で、暖かいのでしょう」
サンディの頬が紅潮した。
「喋れるのね!」
マリアがうなずく。
「ね、パック。あんたがさっき言っていた、空を飛ぶ白球ってなんなの? 事情がありそうじゃない。あたしに話してくれない」
パックはとまどっていた。この少女は、どういうわけか人に命令することに慣れているようで、パックが断るなど頭から考えていないみたいだ。
まあいいか、あれだけいた人々の中で彼女ほど興味を示してくれた相手はいないし。
パックはロロ村で起きた事件を話しはじめた。ところどころサンディが質問をはさみこむ。その質問のしかたが当を得ていて、パックはいつしか彼女に語ることがあの事件について頭の中を整理することに気づいた。
いったいこの少女はなんだろう?
話し終えると、サンディと名乗った少女は腕を組んだ。
「信じられない話しね。でも、このマリアってロボットの女の子がいるんだもの。信じざるを得ないわ。その魔法って、いまもこの空中にあるのかしら?」
「それはニコラ博士に聞いてみないと判らないけど、マリアがこうして動いているんだから、そうなんだろうね」
サンディはぱちん、と両手を打ち合わせた。
「決めた! あたし、あんたと一緒にそのミリィって女の子を探す手伝いをしてあげる」
ふえっ、とパックはのけぞった。
「な、なんだってえ?」
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