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荒れ地
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くすくすと笑い声が聞こえてくる。
ふたりは背後を振り返った。
ヘロヘロが笑っている。
ふたりの注目をあび、ヘロヘロはおどけたような仕草で肩をすくめた。
「なにを馬鹿なことを! この荒れ地はエルフが作ったものだ!」
「なんですって?」
怒りに燃え、ケイは一歩前へ進み出た。
「出鱈目にもほどがあるわ! あたしたちエルフは昔っから森の番人、自然の守り手として……」
「そこが間違いだと言うのだ」
ヘロヘロの目は半眼に閉じられ、ひややかな口調になった。
「なんという自惚れだ! おれでさえそんな自慢はせんぞ! 教えてやろう。エルフの森には魔法がかけられていると言ったな? いったいどんな種類の魔法だ?」
「それは森を守るため……」
「そうだ。森の生き物を守るための魔法だ。だが不自然だとは思わないのか。森の生き物を守るということは、その生命力の源をほかから大量に、そして長期間奪うということなのだ」
ケイは絶句した。
「いいかな? エルフの娘さん。よく考えてみるが良い。わしはその昔、魔王として世界に君臨していたころある城をつくった。いま、ロロ村があるあたりにそびえていた城は、魔法による結界で守られ、難攻不落の砦だった。わしはその城を維持するため、大量の魔力を消費した。そして何が起きたか? 城の周りにはこのような荒野が広がったのだ。魔力の結界の外側ではありとあらゆる生命が絶たれ、毒地が点在するようになった。ここはわしがかつて作った魔王の城のあたりの光景とそっくりだ」
「そんな……」
ケイはぐらりとよろめいた。
「だがそうなのだ。わしは城を作り荒野を生み出した。だがそれが人間のせいだとは一度も思わなかったぞ。荒れ地を生み出したのは自分のせいであることは承知しておった。だがエルフはどうだ? このような荒れ地を生み出しておきながら、それを人間のせいにするとは、なんという思い上がりだ! お前らエルフこそ、自然の破壊者なのだ!」
ふたりは背後を振り返った。
ヘロヘロが笑っている。
ふたりの注目をあび、ヘロヘロはおどけたような仕草で肩をすくめた。
「なにを馬鹿なことを! この荒れ地はエルフが作ったものだ!」
「なんですって?」
怒りに燃え、ケイは一歩前へ進み出た。
「出鱈目にもほどがあるわ! あたしたちエルフは昔っから森の番人、自然の守り手として……」
「そこが間違いだと言うのだ」
ヘロヘロの目は半眼に閉じられ、ひややかな口調になった。
「なんという自惚れだ! おれでさえそんな自慢はせんぞ! 教えてやろう。エルフの森には魔法がかけられていると言ったな? いったいどんな種類の魔法だ?」
「それは森を守るため……」
「そうだ。森の生き物を守るための魔法だ。だが不自然だとは思わないのか。森の生き物を守るということは、その生命力の源をほかから大量に、そして長期間奪うということなのだ」
ケイは絶句した。
「いいかな? エルフの娘さん。よく考えてみるが良い。わしはその昔、魔王として世界に君臨していたころある城をつくった。いま、ロロ村があるあたりにそびえていた城は、魔法による結界で守られ、難攻不落の砦だった。わしはその城を維持するため、大量の魔力を消費した。そして何が起きたか? 城の周りにはこのような荒野が広がったのだ。魔力の結界の外側ではありとあらゆる生命が絶たれ、毒地が点在するようになった。ここはわしがかつて作った魔王の城のあたりの光景とそっくりだ」
「そんな……」
ケイはぐらりとよろめいた。
「だがそうなのだ。わしは城を作り荒野を生み出した。だがそれが人間のせいだとは一度も思わなかったぞ。荒れ地を生み出したのは自分のせいであることは承知しておった。だがエルフはどうだ? このような荒れ地を生み出しておきながら、それを人間のせいにするとは、なんという思い上がりだ! お前らエルフこそ、自然の破壊者なのだ!」
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