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対立
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ホルンの言葉にダルトは喜色を浮かべた。
ゆっくりと家の外へ出る。後にホルンが続いた。
パックもあわてて外へ出た。
背後の気配にふり返ると、マリアがぴったりとくっついて来ていた。両手の拳を握り締め、軽く前傾姿勢をとっている。彼女はパックにささやいた。
「あの男、危険ですわ! わたしがホルンさまをお守りしましょうか?」
「やめとけよ。父さんに任せておけ」
マリアはうなずき、背をまっすぐにさせ見守る態勢になった。
家の前庭に、ホルンとダルトは向き合って立っていた。
ダルトは手に棍棒を持っている。ホルンは何も持っていない。
「なにか持てよ。手ぶらで戦うつもりか?」
「おれはこれでいい。なにか持たないと戦えないというなら、勝手にすれば良いさ」
この言葉にダルトはあきらかに動揺したようだった。
ちょっと考えていたが、やがてにたりと笑いを浮かべた。
「そうか。そっちがそう出るなら、おれはかまわねえ。あとで泣き言いうなよ!」
そう言うと棍棒をぶるーん、ぶるーんと振り回す。
うおーっと叫ぶと襲いかかった。
ぶん、と空気を切り裂いて正面から襲い掛かる棍棒を、ホルンはちょっと身をそらしてよけた。それを予想していたのか、ダルトは振り回した勢いでそのまま円を描くと、棍棒を横殴りにしてくる。
さっとホルンは腰を引いてそれもかわす。
ぶん、ぶん、と音を立てて振り回される棍棒を、ホルンはただよけているだけだ。
どうするんだろう、とパックははらはらしていた。
棍棒を振り回すダルトの顔にじっとりと汗が浮かんできた。
その息が荒くなる。
「ち、畜生……よけるだけで、なにもしねえのかよ!」
焦っていた。
ホルンは黙ってよけているだけだ。
どん、と、とうとうダルトは棍棒を地面におろし、はあはあと肩で息をしていた。
ぐわぁり……、と棍棒を投げ出した。
「そうか、どうしても男らしく戦わないっていうなら……こうするまでだ!」
唇を噛みしめ、頭をさげて突進した。
ホルンはそれをステップしてよけると、さっと足を伸ばした。
足をからまれ、ダルトはおおきく両腕を振り回してよろけた。
あやうく転びそうになるところをふんばり、顔を真っ赤にして向き直った。
「野郎! どこまでも卑怯なやつだ!」
叫ぶと拳をかため、殴りかかる。
その拳をホルンは手の平で受け止め、さっと手首をひねった。
「痛てててて!」
ダルトは絶叫していた。
あっという間にかれの手首は背中側に廻され、ホルンの手によってひねり上げられていた。
「離せ! 離せよお!」
喚く。
「そうか、離してやろう」
ホルンはそう言うと、さっと掴んでいた手首を離すとその背中をぽん、と叩いた。
わっ、わっとダルトは腕を振り回しつつ、とんとんと片足をあげて前へと進んでいく。
そのさきに立ち木があった。
どん、と正面から立ち木に衝突する。
顔をまともに打ち付けていた。
「……!」
顔の真ん中に真っ赤な打ち身の跡をつけ、ダルトはふらふらと左右に身体を揺らしていたが、やがてどう、とばかりに仰向けに倒れてしまった。
白目をむいている。
ぱん、ぱん、と手を叩きホルンはサックを見た。
「どうするね? こいつは勝手に暴れて、勝手にのびちまった。わしの責任ではないよ。あんたが連れてきたのだから、あんたが連れ帰るべきじゃないかね」
サックは地団太を踏んで叫んだ。
「後悔することになるぞ! わしに逆らうとどうなるか……それでもいいのか!」
「お帰り願おう……出発のため忙しいんだ」
静かなホルンの言葉に、サックは怒り心頭に発していたが、やがて上目がちになって家から出て行った。
のびているダルトの横腹を蹴り上げる。
「起きろ! この役立たず!」
うぐ! とうめき声をあげ、ダルトは目を覚ました。
きょろきょろとあたりを見回していたが、ホルンの姿が目に入るとぎょっとなった。
サックの怒りの表情にばつが悪そうな顔になると、のろのろと身を起こす。
ふたりは無言で歩き去った。
ゆっくりと家の外へ出る。後にホルンが続いた。
パックもあわてて外へ出た。
背後の気配にふり返ると、マリアがぴったりとくっついて来ていた。両手の拳を握り締め、軽く前傾姿勢をとっている。彼女はパックにささやいた。
「あの男、危険ですわ! わたしがホルンさまをお守りしましょうか?」
「やめとけよ。父さんに任せておけ」
マリアはうなずき、背をまっすぐにさせ見守る態勢になった。
家の前庭に、ホルンとダルトは向き合って立っていた。
ダルトは手に棍棒を持っている。ホルンは何も持っていない。
「なにか持てよ。手ぶらで戦うつもりか?」
「おれはこれでいい。なにか持たないと戦えないというなら、勝手にすれば良いさ」
この言葉にダルトはあきらかに動揺したようだった。
ちょっと考えていたが、やがてにたりと笑いを浮かべた。
「そうか。そっちがそう出るなら、おれはかまわねえ。あとで泣き言いうなよ!」
そう言うと棍棒をぶるーん、ぶるーんと振り回す。
うおーっと叫ぶと襲いかかった。
ぶん、と空気を切り裂いて正面から襲い掛かる棍棒を、ホルンはちょっと身をそらしてよけた。それを予想していたのか、ダルトは振り回した勢いでそのまま円を描くと、棍棒を横殴りにしてくる。
さっとホルンは腰を引いてそれもかわす。
ぶん、ぶん、と音を立てて振り回される棍棒を、ホルンはただよけているだけだ。
どうするんだろう、とパックははらはらしていた。
棍棒を振り回すダルトの顔にじっとりと汗が浮かんできた。
その息が荒くなる。
「ち、畜生……よけるだけで、なにもしねえのかよ!」
焦っていた。
ホルンは黙ってよけているだけだ。
どん、と、とうとうダルトは棍棒を地面におろし、はあはあと肩で息をしていた。
ぐわぁり……、と棍棒を投げ出した。
「そうか、どうしても男らしく戦わないっていうなら……こうするまでだ!」
唇を噛みしめ、頭をさげて突進した。
ホルンはそれをステップしてよけると、さっと足を伸ばした。
足をからまれ、ダルトはおおきく両腕を振り回してよろけた。
あやうく転びそうになるところをふんばり、顔を真っ赤にして向き直った。
「野郎! どこまでも卑怯なやつだ!」
叫ぶと拳をかため、殴りかかる。
その拳をホルンは手の平で受け止め、さっと手首をひねった。
「痛てててて!」
ダルトは絶叫していた。
あっという間にかれの手首は背中側に廻され、ホルンの手によってひねり上げられていた。
「離せ! 離せよお!」
喚く。
「そうか、離してやろう」
ホルンはそう言うと、さっと掴んでいた手首を離すとその背中をぽん、と叩いた。
わっ、わっとダルトは腕を振り回しつつ、とんとんと片足をあげて前へと進んでいく。
そのさきに立ち木があった。
どん、と正面から立ち木に衝突する。
顔をまともに打ち付けていた。
「……!」
顔の真ん中に真っ赤な打ち身の跡をつけ、ダルトはふらふらと左右に身体を揺らしていたが、やがてどう、とばかりに仰向けに倒れてしまった。
白目をむいている。
ぱん、ぱん、と手を叩きホルンはサックを見た。
「どうするね? こいつは勝手に暴れて、勝手にのびちまった。わしの責任ではないよ。あんたが連れてきたのだから、あんたが連れ帰るべきじゃないかね」
サックは地団太を踏んで叫んだ。
「後悔することになるぞ! わしに逆らうとどうなるか……それでもいいのか!」
「お帰り願おう……出発のため忙しいんだ」
静かなホルンの言葉に、サックは怒り心頭に発していたが、やがて上目がちになって家から出て行った。
のびているダルトの横腹を蹴り上げる。
「起きろ! この役立たず!」
うぐ! とうめき声をあげ、ダルトは目を覚ました。
きょろきょろとあたりを見回していたが、ホルンの姿が目に入るとぎょっとなった。
サックの怒りの表情にばつが悪そうな顔になると、のろのろと身を起こす。
ふたりは無言で歩き去った。
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