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真鍮のマリア
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「よし、それでは始めるか!」
ニコラ博士は地下室をあちこち飛び回り、そこらのスイッチや、ボタンをつぎつぎと動かした。
蒸気のパイプを何本も金属の少女の身体に接続していく。
しゅうしゅう……ごとごと……。
地下室に生気が吹き込まれる。
送り込まれた蒸気が、少女の身体のあちこちから噴出し、白い湯気をあげている。
パックはニコラ博士に声をかけた。
「博士、それは?」
ニコラ博士は見慣れない装置を地下室へ持ち込んでいた。
「発電機じゃよ! この前の実験では電力という要素が抜けていた。あのロボットを始動させるためには、電力という要素が必要だと、研究の結果判ったんじゃ!」
博士はダイヤルを一杯にまわす。
ぴゅうぴゅうという不吉な音を立て、装置の天辺にある針金に、ばりばりという紫電が飛び交った。
それを見て、パックは背筋に寒気をおぼえた。
「だ、大丈夫ですか……」
「わしを信じろ!」
ニコラ博士は陽気に叫んだ。
蒸気圧が高まっていく。
パックは計器を覗き込み、つぎつぎと変化する指針を読み上げていった。
「圧力七十パーセント……八十パーセント……九十……博士! もうすぐ百です!」
「百五十パーセントまであげろ!」
「そ、そんな……無理ですよ!」
「いける! わしの計算では百五十七までは安全のはずなんじゃ!」
首を傾げつつ、それでもパックは博士の指示通り圧力をあげ続ける。
ごとごとごとごと……。
まるで地震のように地下室は揺れ始めた。
かたかたかた……。
台の上の金属製の少女像がこまかく振動し始めていた。金属の身体と台が触れ合う音が、かたかたという音を立てている。
ニコラ博士は目を一杯に見開いていた。
びゅーん……!
発電機の電力が上昇していた。
ぴしっ!
電光が飛び交い、地下室のむき出しの金属に紫電が放たれた。
ぱしっ!
ぱしっ!
ばりばりばりばりっ!
ふたりの髪の毛が静電気を受けたように逆立っている。緊張と興奮で、ふたりはそのことにまったく気づいていない。
ころはよし、とニコラ博士は、発電機から伸びているコードを掴んだ。
コードの先端には端子がついていた。
それを台の上に横たわっている少女に近づける。
おおきく息を吸い、博士は端子を少女の金属の肌にくっつけた。
びりびりびり!
「うおおおおっ!」
コードを掴んだまま博士は絶叫した。
数万ボルトの電流が流れ、そのショックで博士は跳ね飛ばされていた。
「博士っ!」
パックは叫んでいた。
博士は、白目を剥き、完全に気絶している。
ニコラ博士は地下室をあちこち飛び回り、そこらのスイッチや、ボタンをつぎつぎと動かした。
蒸気のパイプを何本も金属の少女の身体に接続していく。
しゅうしゅう……ごとごと……。
地下室に生気が吹き込まれる。
送り込まれた蒸気が、少女の身体のあちこちから噴出し、白い湯気をあげている。
パックはニコラ博士に声をかけた。
「博士、それは?」
ニコラ博士は見慣れない装置を地下室へ持ち込んでいた。
「発電機じゃよ! この前の実験では電力という要素が抜けていた。あのロボットを始動させるためには、電力という要素が必要だと、研究の結果判ったんじゃ!」
博士はダイヤルを一杯にまわす。
ぴゅうぴゅうという不吉な音を立て、装置の天辺にある針金に、ばりばりという紫電が飛び交った。
それを見て、パックは背筋に寒気をおぼえた。
「だ、大丈夫ですか……」
「わしを信じろ!」
ニコラ博士は陽気に叫んだ。
蒸気圧が高まっていく。
パックは計器を覗き込み、つぎつぎと変化する指針を読み上げていった。
「圧力七十パーセント……八十パーセント……九十……博士! もうすぐ百です!」
「百五十パーセントまであげろ!」
「そ、そんな……無理ですよ!」
「いける! わしの計算では百五十七までは安全のはずなんじゃ!」
首を傾げつつ、それでもパックは博士の指示通り圧力をあげ続ける。
ごとごとごとごと……。
まるで地震のように地下室は揺れ始めた。
かたかたかた……。
台の上の金属製の少女像がこまかく振動し始めていた。金属の身体と台が触れ合う音が、かたかたという音を立てている。
ニコラ博士は目を一杯に見開いていた。
びゅーん……!
発電機の電力が上昇していた。
ぴしっ!
電光が飛び交い、地下室のむき出しの金属に紫電が放たれた。
ぱしっ!
ぱしっ!
ばりばりばりばりっ!
ふたりの髪の毛が静電気を受けたように逆立っている。緊張と興奮で、ふたりはそのことにまったく気づいていない。
ころはよし、とニコラ博士は、発電機から伸びているコードを掴んだ。
コードの先端には端子がついていた。
それを台の上に横たわっている少女に近づける。
おおきく息を吸い、博士は端子を少女の金属の肌にくっつけた。
びりびりびり!
「うおおおおっ!」
コードを掴んだまま博士は絶叫した。
数万ボルトの電流が流れ、そのショックで博士は跳ね飛ばされていた。
「博士っ!」
パックは叫んでいた。
博士は、白目を剥き、完全に気絶している。
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