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封魔の剣
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”念話”は最弱の魔法使いでさえ習得できる魔法である。
離れた土地に住むふたり、もしくはそれ以上の念話者は、念話の魔法で連絡しあうことができる。
距離にも関係なく、また時間にも縛られないこの魔法は、瞬時に、そして確実に遠く離れた土地を結ぶことができる。
だがこの魔法にはひとつ重大な欠点があった。
それは念話の魔法を習得すると、それ以外の魔法を習得できなくなるということだった。
どんなに魔法の”オーラ”が強く、その色彩が完璧であっても、いったん念話の魔法を学ぶと、ほかの魔法は一切習得できなくなる。
もちろん、それまで習得したほかの魔法を使うことはできるが、念話を習得した場合、あらたな魔法の習得は諦めなくてはならない。
理由は不明である。
この特性により、念話の魔法を習得するのは、最弱の魔法師の専売特許のようになってしまった。
それはそうだろう。
いったん、この魔法を学ぶとほかの魔法を身につけることはあきらめるしかない。
「あの、よろしいので?」
ゴルドンは念を押した。
男はうなずいた。
「わたしはすべての魔法を身につけている。唯一、習得していないのが念話の魔法だ。これを機会にぜひ習得したい」
さらりと言ってのけたが、すべての魔法の習得とは容易ならない発言である。
むろん、ゴルドンは男の言葉を信じた。
その”オーラ”が男の言葉を裏付けている。
「よろしければ、なぜ念話の魔法を習いたいのか伺いたいのですが」
男はうなずき、目を閉じた。
「わたしは魔王を倒したい。そのためにすべての魔法を身につけ、修行を重ねてきた」
ぶるっ、とゴルドンは身を震わせた。
男の言葉は真実を語っていた。
魔王がこの世界を支配してすでに数世紀。
ひとびとは魔王の恐怖におびえ、かつての繁栄は過去のものとなりつつある。
実際、このザザンの町も、数度の魔王の軍勢による攻撃をうけ、かろうじて持ちこたえているが、いつまでこの状態が続くか判らない。
過去、何人もの勇者があらわれ、魔王を倒さんと旅立った。が、それらの勇者はたれひとりとして帰還するものはなく、あいかわらず魔王のちからは世界のすみずみまで浸透している。
この男もまたそういった勇者のひとりであろうか。
男は目を見開いた。
「いままで何十人、あるいは何百人もの勇者が魔王を倒そうと立ち上がった。かれらはひとりとして成功していない。なぜか? それはみな単独で倒そうとしていたからだ。魔王を倒すにはひとりでは無理だ。おれは仲間を募ろうと思う」
「それでなぜ念話の魔法なのです?」
「仲間の覚悟を知りたいからだ。知っての通り、念話の魔法を身につけるとそれ以外の魔法の一切が習得できなくなる。だからそれなりの魔法のちからを身につけた魔法師たちは、念話の魔法を軽んじ、習おうとはしなかった。わたしはこの魔法を習い、世界のすみずみにあるギルドに連絡しようと思う。魔王を倒さんと思う者、すべからく念話の魔法を習得すべし、とな」
にやりと笑う。
「魔王を倒そうと決意した瞬間から、おのれの命はないものという覚悟が必要だ。だが、実際はどうだろう? 念話の魔法を習得すれば、ほかの魔法を身につけることが出来ないといって避けるのは、おのれの命を惜しむやつのやることだ。だから、わたしの仲間になる覚悟があれば、念話を身につけよと呼びかけるつもりなのだ。それに念話の魔法は馬鹿にしたものではない。おそらく、魔王との決戦に決定的な働きをすることになろう」
感動がゴルドンの全身を襲っていた。
いままで軽んじられた念話の魔法を、それほど重要視してくれた魔法師がいままでいただろうか?
念話の習得がはじまった。
離れた土地に住むふたり、もしくはそれ以上の念話者は、念話の魔法で連絡しあうことができる。
距離にも関係なく、また時間にも縛られないこの魔法は、瞬時に、そして確実に遠く離れた土地を結ぶことができる。
だがこの魔法にはひとつ重大な欠点があった。
それは念話の魔法を習得すると、それ以外の魔法を習得できなくなるということだった。
どんなに魔法の”オーラ”が強く、その色彩が完璧であっても、いったん念話の魔法を学ぶと、ほかの魔法は一切習得できなくなる。
もちろん、それまで習得したほかの魔法を使うことはできるが、念話を習得した場合、あらたな魔法の習得は諦めなくてはならない。
理由は不明である。
この特性により、念話の魔法を習得するのは、最弱の魔法師の専売特許のようになってしまった。
それはそうだろう。
いったん、この魔法を学ぶとほかの魔法を身につけることはあきらめるしかない。
「あの、よろしいので?」
ゴルドンは念を押した。
男はうなずいた。
「わたしはすべての魔法を身につけている。唯一、習得していないのが念話の魔法だ。これを機会にぜひ習得したい」
さらりと言ってのけたが、すべての魔法の習得とは容易ならない発言である。
むろん、ゴルドンは男の言葉を信じた。
その”オーラ”が男の言葉を裏付けている。
「よろしければ、なぜ念話の魔法を習いたいのか伺いたいのですが」
男はうなずき、目を閉じた。
「わたしは魔王を倒したい。そのためにすべての魔法を身につけ、修行を重ねてきた」
ぶるっ、とゴルドンは身を震わせた。
男の言葉は真実を語っていた。
魔王がこの世界を支配してすでに数世紀。
ひとびとは魔王の恐怖におびえ、かつての繁栄は過去のものとなりつつある。
実際、このザザンの町も、数度の魔王の軍勢による攻撃をうけ、かろうじて持ちこたえているが、いつまでこの状態が続くか判らない。
過去、何人もの勇者があらわれ、魔王を倒さんと旅立った。が、それらの勇者はたれひとりとして帰還するものはなく、あいかわらず魔王のちからは世界のすみずみまで浸透している。
この男もまたそういった勇者のひとりであろうか。
男は目を見開いた。
「いままで何十人、あるいは何百人もの勇者が魔王を倒そうと立ち上がった。かれらはひとりとして成功していない。なぜか? それはみな単独で倒そうとしていたからだ。魔王を倒すにはひとりでは無理だ。おれは仲間を募ろうと思う」
「それでなぜ念話の魔法なのです?」
「仲間の覚悟を知りたいからだ。知っての通り、念話の魔法を身につけるとそれ以外の魔法の一切が習得できなくなる。だからそれなりの魔法のちからを身につけた魔法師たちは、念話の魔法を軽んじ、習おうとはしなかった。わたしはこの魔法を習い、世界のすみずみにあるギルドに連絡しようと思う。魔王を倒さんと思う者、すべからく念話の魔法を習得すべし、とな」
にやりと笑う。
「魔王を倒そうと決意した瞬間から、おのれの命はないものという覚悟が必要だ。だが、実際はどうだろう? 念話の魔法を習得すれば、ほかの魔法を身につけることが出来ないといって避けるのは、おのれの命を惜しむやつのやることだ。だから、わたしの仲間になる覚悟があれば、念話を身につけよと呼びかけるつもりなのだ。それに念話の魔法は馬鹿にしたものではない。おそらく、魔王との決戦に決定的な働きをすることになろう」
感動がゴルドンの全身を襲っていた。
いままで軽んじられた念話の魔法を、それほど重要視してくれた魔法師がいままでいただろうか?
念話の習得がはじまった。
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