75 / 80
最終話 痛撃の最終チェック・納品!
5
しおりを挟む
組み上がったのは、巨大ロボットである!
そう、変形合体の、アニメでは御馴染みな、巨大ロボットだ! もちろん、デザインしたのは、市川本人だ。
デザインは『蒸汽帝国』の世界観に合わせ、ごつごつとして、リベットが剥き出しの、スチーム・パンク風にしている。
ロボットは、まだ起動せず、地面に横たわったままになっている。市川は惚れ惚れと、自分がデザインしたロボットを眺めていた。
市川がアニメーションを志した切っ掛けは、何と言っても、無数に制作されたロボット・アニメに魅せられたからだ。
男の子なら当然、ロボット・アニメを夢中になって視聴するのは当然である。
市川は、子供のころ、どうしてもアニメに登場するような、巨大ロボットに乗り組みたいという、夢を見ていた。子供時代を通りすぎ、幾らか現実を受け入れる年頃になっても、密かに、自分が巨大ロボットの操縦席に座る姿を想像していたのである。
だから、目の前の巨大ロボットには、操縦席がちゃんとある。しかも、五人分だ! ロボットは、全員が搭乗して操縦する方式になっている。上半身の、脇腹付近が搭乗口になっていて、小さなハッチがついている。
市川は、小躍りしながら、ロボットに近づいた。背後を振り返り、全員に乗り込むよう促した。
「さあ、やるぜ! 乗り込め!」
「やれやれ……」と、山田は苦笑しつつも、よっこらしょと太った体を押し上げ、ロボットの操縦席へと、よじ登る。ハッチの直径は、山田の腹ぎりぎりであった。
三村は無言で、するりと痩身をハッチに潜り込ませ、内部へと消えていった。
「何の因果か、まさか自分がロボットに乗り込むなんてなあ……」
新庄もぼやきつつ、山田と三村の後に続いた。新庄の後から市川はハッチを潜る。
窮屈な通路の両側に、各々が座る席がある。席は身体にぴったり密着する造りで、内側には分厚いクッションが装着されている。ロボットが歩いたり、戦ったりする時の震動から操縦者を保護するのが、役目である。
新庄と山田、三村の三人は、すでに自分の操縦席に納まっていて、ほとんど身動きが取れない状態だ。三人は天井を見上げる形で、地面からは横になっているが、ロボットが起動して起き上がれば、真っ直ぐ前を見る格好になる。
市川は通路から苦労して振り返り、ハッチの向こうから覗き込んでいる洋子を見た。
「おい、宮元さん。どうするんだい? 来るのか、来ないのか、決めてくれ!」
「この馬鹿らしい世界からおさらばできるなら、しょうがない。付き合うわよ!」
洋子は頭からハッチに潜り込む。が、ハッチに洋子の巨大な胸が突っかえてしまった。たちまち洋子は、顔を真っ赤に染めた。
「引っ掛かったじゃない! 市川君、なんとかしてっ!」
じたばたと両手を市川のほうへ突き出す。
市川は慌てて洋子の両手を掴み、渾身の力を込め、引っ張った。
「きつーいっ! 設定するとき、何で、もう少し広めに設定しておかないの?」
洋子は悲鳴を上げ、市川は困惑していた。
「まさか……宮元さんが引っ掛かるとは……思っても見なかった……ハッチは……山田さんの腹が通ればいいと……思ってたが……あんたの胸が……こんなに……でかいなんて! 糞、計算違いだ!」
息を切らせ、途切れ途切れに答える。本当に、洋子の胸は大きい! 何たって、山田の腹より大きいのだから……。
すでに操縦席に着いている山田、新庄、三村の三人は、ぴったりと全身が収まっていて、動けない。市川一人が、対処するしか他に方法はなかった。
足を通路の壁に突っ張り、市川は全身の力を振り絞り、悪戦苦闘する。
ずるずるっ! と、遂に洋子の上半身が滑り出した!
どどっ、と洋子の身体が押し出されるように通路に倒れこむ。洋子の身体の下に、市川は押し潰される。市川の顔に、洋子の胸がふんにゃりと押しつけられた。
「むむむむむむ!」
乳房に顔を思い切り埋め、市川は窒息して喘いだ。
息が全然できない!
はあっ、はあっと荒い息を上げ、洋子がようやく腕をついた。市川は、やっと洋子の胸から解放された。
ぷあーっ、と市川は空気を求め、大きく口を開けた。新鮮な空気が、どーっと肺に送り込まれる。
と、上から洋子の顔が、近々と覗き込むように接近していた。
洋子と市川の瞳は、まじまじと見詰め合っていた。
洋子の頬がぽーっ、と赤く染まる。
綺麗だ……と、市川は、なぜか思っていた。
洋子が目を閉じる。唇が近づく。洋子の息が、市川の顔に掛かっていた。
「来るぞっ! 二人とも、早く席に着いてくれっ!」
出し抜けに新庄の喚き声が響き渡り、二人は「はっ」と我に帰る。
そうだ、こんな場合じゃない!
市川と洋子は、そそくさと起き上がり、各々の操縦席へ潜り込んだ。
そう、変形合体の、アニメでは御馴染みな、巨大ロボットだ! もちろん、デザインしたのは、市川本人だ。
デザインは『蒸汽帝国』の世界観に合わせ、ごつごつとして、リベットが剥き出しの、スチーム・パンク風にしている。
ロボットは、まだ起動せず、地面に横たわったままになっている。市川は惚れ惚れと、自分がデザインしたロボットを眺めていた。
市川がアニメーションを志した切っ掛けは、何と言っても、無数に制作されたロボット・アニメに魅せられたからだ。
男の子なら当然、ロボット・アニメを夢中になって視聴するのは当然である。
市川は、子供のころ、どうしてもアニメに登場するような、巨大ロボットに乗り組みたいという、夢を見ていた。子供時代を通りすぎ、幾らか現実を受け入れる年頃になっても、密かに、自分が巨大ロボットの操縦席に座る姿を想像していたのである。
だから、目の前の巨大ロボットには、操縦席がちゃんとある。しかも、五人分だ! ロボットは、全員が搭乗して操縦する方式になっている。上半身の、脇腹付近が搭乗口になっていて、小さなハッチがついている。
市川は、小躍りしながら、ロボットに近づいた。背後を振り返り、全員に乗り込むよう促した。
「さあ、やるぜ! 乗り込め!」
「やれやれ……」と、山田は苦笑しつつも、よっこらしょと太った体を押し上げ、ロボットの操縦席へと、よじ登る。ハッチの直径は、山田の腹ぎりぎりであった。
三村は無言で、するりと痩身をハッチに潜り込ませ、内部へと消えていった。
「何の因果か、まさか自分がロボットに乗り込むなんてなあ……」
新庄もぼやきつつ、山田と三村の後に続いた。新庄の後から市川はハッチを潜る。
窮屈な通路の両側に、各々が座る席がある。席は身体にぴったり密着する造りで、内側には分厚いクッションが装着されている。ロボットが歩いたり、戦ったりする時の震動から操縦者を保護するのが、役目である。
新庄と山田、三村の三人は、すでに自分の操縦席に納まっていて、ほとんど身動きが取れない状態だ。三人は天井を見上げる形で、地面からは横になっているが、ロボットが起動して起き上がれば、真っ直ぐ前を見る格好になる。
市川は通路から苦労して振り返り、ハッチの向こうから覗き込んでいる洋子を見た。
「おい、宮元さん。どうするんだい? 来るのか、来ないのか、決めてくれ!」
「この馬鹿らしい世界からおさらばできるなら、しょうがない。付き合うわよ!」
洋子は頭からハッチに潜り込む。が、ハッチに洋子の巨大な胸が突っかえてしまった。たちまち洋子は、顔を真っ赤に染めた。
「引っ掛かったじゃない! 市川君、なんとかしてっ!」
じたばたと両手を市川のほうへ突き出す。
市川は慌てて洋子の両手を掴み、渾身の力を込め、引っ張った。
「きつーいっ! 設定するとき、何で、もう少し広めに設定しておかないの?」
洋子は悲鳴を上げ、市川は困惑していた。
「まさか……宮元さんが引っ掛かるとは……思っても見なかった……ハッチは……山田さんの腹が通ればいいと……思ってたが……あんたの胸が……こんなに……でかいなんて! 糞、計算違いだ!」
息を切らせ、途切れ途切れに答える。本当に、洋子の胸は大きい! 何たって、山田の腹より大きいのだから……。
すでに操縦席に着いている山田、新庄、三村の三人は、ぴったりと全身が収まっていて、動けない。市川一人が、対処するしか他に方法はなかった。
足を通路の壁に突っ張り、市川は全身の力を振り絞り、悪戦苦闘する。
ずるずるっ! と、遂に洋子の上半身が滑り出した!
どどっ、と洋子の身体が押し出されるように通路に倒れこむ。洋子の身体の下に、市川は押し潰される。市川の顔に、洋子の胸がふんにゃりと押しつけられた。
「むむむむむむ!」
乳房に顔を思い切り埋め、市川は窒息して喘いだ。
息が全然できない!
はあっ、はあっと荒い息を上げ、洋子がようやく腕をついた。市川は、やっと洋子の胸から解放された。
ぷあーっ、と市川は空気を求め、大きく口を開けた。新鮮な空気が、どーっと肺に送り込まれる。
と、上から洋子の顔が、近々と覗き込むように接近していた。
洋子と市川の瞳は、まじまじと見詰め合っていた。
洋子の頬がぽーっ、と赤く染まる。
綺麗だ……と、市川は、なぜか思っていた。
洋子が目を閉じる。唇が近づく。洋子の息が、市川の顔に掛かっていた。
「来るぞっ! 二人とも、早く席に着いてくれっ!」
出し抜けに新庄の喚き声が響き渡り、二人は「はっ」と我に帰る。
そうだ、こんな場合じゃない!
市川と洋子は、そそくさと起き上がり、各々の操縦席へ潜り込んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる