スラップ・スティック・タウン

万卜人

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 ぱしんっ!
 
 パックの頬でミリィの平手が乾いた音をたてる。ミリィは爆発した。
「馬鹿っ! なんだってあんなもの、作ったのよっ! 人に心配ばかりかけて……」
 怒鳴り声は最後に涙声に変わっていた。ミリィの顔がくしゃくしゃにゆがみ、やがて大声で泣いていた。
 
 あーん、あーん!
 
 泣きじゃくっているミリィに、パックは困った顔をしていた。こんなミリィを見るのははじめてである。
 地面にひろがったパラシュートが持ち上がり、ごそごそと三人の男女が顔を出した。
 キャリー一味だ。
 三人はあたりを見回し、じぶんたちが地面に這いつくばっているのを確認して喜びの表情をあらわした。
「姐御! あっしら、助かったんですぜ!」
「本当? 本当かい?」
「間違いねえ! ほら、あっしらちゃんと地面に立っているでしょう?」
 そう言うとジェイクは地面を踏みしめ、タップを踊っていた。
 ウッドもそのながい顔をほころばせている。
 キャリーはおそるおそる立ち上がった。
「ああ、本当だ。あたしら、助かったんだ」
 がちゃり、とキャリーの手首で金属の音がした。
 目を落とすと、彼女の手首に手錠がかけられていた。
 目を上げると署長の目と合った。
「やあ、ブロンド・キャリーだな?」
 署長は目じりにしわを見せ、にたりと笑っていた。
「もう、年貢の納め時だな」
 そう言うと、手早くジェイク、ウッドの手首にも手錠をかけ、その端を鎖でつなぎ、手に持った。
 がくり、と三人はうなだれていた。
「さあ、来るんだ!」
 ぐい、と鎖を引っ張り、署長はじぶんのパトカーへ三人を連行していた。
 そのパトカーを人型のロボットがのぞきこんでいる。あれは、大佐が召し使いとして使用しているヘロヘロというロボットだ。
 なにをしているのだろう?
 署長は眉をひそめていると、いきなりヘロヘロは助手席に顔をつっこみ、プラスチック・ケースを手にしていた。
 あっ、と署長は声をあげていた。
 ヘロヘロはケースをひねくっていると、それを開き中のタバコを指に挟んでいた。
 ぼうぜんとしている署長の目の前で、ヘロヘロはタバコの先に火をつけていた。一服吸い付けると、頭のてっぺんから煙を吐き出した。
 ヘロヘロは首をかしげていた。
 見つめている署長と目があった。
「人間がこれを吸うのを見て、うまいのかどうか知りたかったんでやす。あんまり、うめえもんじゃねえだすな!」
 そう言うとヘロヘロは肩をすくめた。
 それを見た署長の肩が震えている。
 くすくすと笑いがもれていた。
 署長はわははは……と、哄笑していた。
 キャリーはあっけにとられていた。署長は笑い続けている。
 天を仰ぐ署長の目が見開かれていた。
 署長の高笑いがとまり、ぼうぜんとなにかを見上げている。
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