12 / 52
ミリィ
4
しおりを挟む
ミリィはそっと声をかけた。
「パック……」
びくり、と背中が動いた。
くるりとこちらを振り向き、少年の顔があらわになる。目を細め、扉の隙間からのぞくミリィの顔を見つめる。黒い髪の毛に、太い眉。ぎょろりとした大きな目の、まあハンサムとは言いがたい少年である。
「なんだ、ミリィか……」
つぶやくとまたこちらに背中を見せた。
ミリィはかっと顔に血が上るのを感じていた。
なんて言い草なの!
なんだ、ミリィか……ですって?
大股にミリィはパックの背中に近づいた。
「なにやってんの? お爺ちゃんが、あんたに用があるみたいよ」
「大佐が?」
つぶやいてパックは首をねじむけ、ミリィの顔を見上げた。ちょっと首をかしげる。
「もしかして、あれのことかい?」
ミリィは肩をすくめた。
「あたしにわかるわけ、ないじゃない。でも、お爺ちゃんがあんたに用があるといったら、あれしかないかもね」
ふうん、とパックはうなずいた。
「でも、あれに関しては、もうおれのやることないんだけどなあ。すっかり修理は終わっているし……」
「本当? いつの間にやったのよ?」
へへっ、とパックは笑った。
「ま、暇を見つけてね」
「とにかく、お爺ちゃんのところへ一緒にいかない? あたし、送ったげるから」
うーん、とパックは煮え切らない返事をする。ミリィはむらむらと腹が立ってきた。
「いったい、こんなところで何やってんのよ?」
彼女がシートに近づくと、なぜかパックはあわてた。
「あ、よせよ! まだ、誰にも見せるつもりはないんだ」
なんですって……、とミリィはシートの端を掴んだ。こうなったら、無理やりでも見せてもらおう!
とにかくパックがこんなところでこそこそしているのが腹立たしいのだ。ミリィはシートを掴み、思い切り引っ張った。
わあ! と、パックは悲鳴をあげた。
ばさり!
シートが引っ張られ、中のものがあらわになる。
それを見上げ、ミリィはぽかんと口を開けた。
「こ……これ……! なによ?」
「パック……」
びくり、と背中が動いた。
くるりとこちらを振り向き、少年の顔があらわになる。目を細め、扉の隙間からのぞくミリィの顔を見つめる。黒い髪の毛に、太い眉。ぎょろりとした大きな目の、まあハンサムとは言いがたい少年である。
「なんだ、ミリィか……」
つぶやくとまたこちらに背中を見せた。
ミリィはかっと顔に血が上るのを感じていた。
なんて言い草なの!
なんだ、ミリィか……ですって?
大股にミリィはパックの背中に近づいた。
「なにやってんの? お爺ちゃんが、あんたに用があるみたいよ」
「大佐が?」
つぶやいてパックは首をねじむけ、ミリィの顔を見上げた。ちょっと首をかしげる。
「もしかして、あれのことかい?」
ミリィは肩をすくめた。
「あたしにわかるわけ、ないじゃない。でも、お爺ちゃんがあんたに用があるといったら、あれしかないかもね」
ふうん、とパックはうなずいた。
「でも、あれに関しては、もうおれのやることないんだけどなあ。すっかり修理は終わっているし……」
「本当? いつの間にやったのよ?」
へへっ、とパックは笑った。
「ま、暇を見つけてね」
「とにかく、お爺ちゃんのところへ一緒にいかない? あたし、送ったげるから」
うーん、とパックは煮え切らない返事をする。ミリィはむらむらと腹が立ってきた。
「いったい、こんなところで何やってんのよ?」
彼女がシートに近づくと、なぜかパックはあわてた。
「あ、よせよ! まだ、誰にも見せるつもりはないんだ」
なんですって……、とミリィはシートの端を掴んだ。こうなったら、無理やりでも見せてもらおう!
とにかくパックがこんなところでこそこそしているのが腹立たしいのだ。ミリィはシートを掴み、思い切り引っ張った。
わあ! と、パックは悲鳴をあげた。
ばさり!
シートが引っ張られ、中のものがあらわになる。
それを見上げ、ミリィはぽかんと口を開けた。
「こ……これ……! なによ?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

秘密
阿波野治
児童書・童話
住友みのりは憂うつそうな顔をしている。心配した友人が事情を訊き出そうとすると、みのりはなぜか声を荒らげた。後ろの席からそれを見ていた香坂遥斗は、みのりが抱えている謎を知りたいと思い、彼女に近づこうとする。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
とじこめラビリンス
トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】
太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。
いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。
ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。
ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる