96 / 107
シルバーの戦い
2
しおりを挟む
まるで光が爆発したようで、ジムもまた、何も見えなくなっていた。
「キャシー、どこだ!」
目を擦り、ジムは両手を前に探るようにして叫ぶ。
「ここよ!」
キャシーの声が聞こえる。ジムはそちらに手を伸ばす。指先に、キャシーの指先を感じ、ジムはがっしりと、キャシーの手を握りしめた。
「目が見えない!」
高い叫び声はアルニのようだ。
「ねえ、どこ? みんなどこにいるの?」
どん、とジムの肩に柔らかなアルニの身体がぶつかってくる。アルニは小さな悲鳴をあげ、夢中になってしがみついてくる。
じりじりとジムは心覚えの記憶を頼りに、後退した。背中が壁につくのを感じ、大きく息を吐く。
やっと網膜に焼きついた斑点が薄れ、ジムは狂おしく、辺りを見回した。キャシーとアルニは青ざめた顔で、ジムの腕にしがみついていた。
立方体の内部は、戦いの真っ最中だった。
原型と〝種族〟の侵攻部隊は、壁面の光の爆発でお互い一瞬、視覚を奪われ、うろうろとさ迷い歩いている。
そのうち視界が戻ってくると、目の前に敵を認め、てんでんばらばらの状態で武器を射ちあったり、あるいは取っ組み合いを始めたりしている。それには統制というものは何もなく、目に付いたら即、戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
壁面は先ほどのような光の爆発は収まったようだが、それでも狂騒的ともいえる光の模様が絶え間なく映し出されている。
壇の上のフリント教授はこの騒ぎの中で、しきりと「やめろ! やめろ!」と叫んでいる。
だが、大声で叫び合う戦闘状態の中では、誰も耳を傾けようとはしない。ただ口がぱくぱくと動いているのが見えるだけだ。
足を何かが掴むのを感じ、視線を下げると、そこにはヘロヘロがガタガタ震えながら、ジムのブーツにしがみついている。
「ヘロヘロ! 無事だったか!」
ヘロヘロはジムを見上げ「うううう!」と言葉にならない唸り声を上げる。
「ぼ、僕、こんなの、苦手なんだよ……」
ヘロヘロの顔色はレモン色から、真っ白になっていた。頭のホイップ・アンテナがびりびりと震えている。
怖ろしい雄叫びに、ジムは顔を上げた。
見ると、シルバーが怒りの表情物凄く、阿修羅のように拳を振り上げ、足を蹴り上げ、当たるを幸い暴れ回っている。
相手は原型だろうが〝種族〟だろうが、まるでお構いなしだ。シルバーは武器を持っているはずなのに、なぜか素手で戦っている。
誰かがレーザーを浴びせた。だが、それはシルバーの衣服を焦がすだけで、まるで平気だ。遂にシルバーの衣服に火が着いた。
ぼっ、と音を立て、シルバーの全身に炎が回った。しかしシルバーは熱さというものを感じないのか、逆に怒りが燃え上がったかのようだ。
ぐっとシルバーは出口を睨みつけた。その視線の先に《弾頭》があった。
シルバーは炎を上げたまま、出口に向かう。
「何をする気なのかしら?」とキャシーが呟く。
ジムはキャシーに叫んだ。
「追いかけよう! 何を企んでいるのか判らないけど、どっちにしろ、碌なことじゃなさそうだ!」
「うん」とキャシーは頷いた。走り出す二人に、アルニとヘロヘロは慌てて付き従う。
「キャシー、どこだ!」
目を擦り、ジムは両手を前に探るようにして叫ぶ。
「ここよ!」
キャシーの声が聞こえる。ジムはそちらに手を伸ばす。指先に、キャシーの指先を感じ、ジムはがっしりと、キャシーの手を握りしめた。
「目が見えない!」
高い叫び声はアルニのようだ。
「ねえ、どこ? みんなどこにいるの?」
どん、とジムの肩に柔らかなアルニの身体がぶつかってくる。アルニは小さな悲鳴をあげ、夢中になってしがみついてくる。
じりじりとジムは心覚えの記憶を頼りに、後退した。背中が壁につくのを感じ、大きく息を吐く。
やっと網膜に焼きついた斑点が薄れ、ジムは狂おしく、辺りを見回した。キャシーとアルニは青ざめた顔で、ジムの腕にしがみついていた。
立方体の内部は、戦いの真っ最中だった。
原型と〝種族〟の侵攻部隊は、壁面の光の爆発でお互い一瞬、視覚を奪われ、うろうろとさ迷い歩いている。
そのうち視界が戻ってくると、目の前に敵を認め、てんでんばらばらの状態で武器を射ちあったり、あるいは取っ組み合いを始めたりしている。それには統制というものは何もなく、目に付いたら即、戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
壁面は先ほどのような光の爆発は収まったようだが、それでも狂騒的ともいえる光の模様が絶え間なく映し出されている。
壇の上のフリント教授はこの騒ぎの中で、しきりと「やめろ! やめろ!」と叫んでいる。
だが、大声で叫び合う戦闘状態の中では、誰も耳を傾けようとはしない。ただ口がぱくぱくと動いているのが見えるだけだ。
足を何かが掴むのを感じ、視線を下げると、そこにはヘロヘロがガタガタ震えながら、ジムのブーツにしがみついている。
「ヘロヘロ! 無事だったか!」
ヘロヘロはジムを見上げ「うううう!」と言葉にならない唸り声を上げる。
「ぼ、僕、こんなの、苦手なんだよ……」
ヘロヘロの顔色はレモン色から、真っ白になっていた。頭のホイップ・アンテナがびりびりと震えている。
怖ろしい雄叫びに、ジムは顔を上げた。
見ると、シルバーが怒りの表情物凄く、阿修羅のように拳を振り上げ、足を蹴り上げ、当たるを幸い暴れ回っている。
相手は原型だろうが〝種族〟だろうが、まるでお構いなしだ。シルバーは武器を持っているはずなのに、なぜか素手で戦っている。
誰かがレーザーを浴びせた。だが、それはシルバーの衣服を焦がすだけで、まるで平気だ。遂にシルバーの衣服に火が着いた。
ぼっ、と音を立て、シルバーの全身に炎が回った。しかしシルバーは熱さというものを感じないのか、逆に怒りが燃え上がったかのようだ。
ぐっとシルバーは出口を睨みつけた。その視線の先に《弾頭》があった。
シルバーは炎を上げたまま、出口に向かう。
「何をする気なのかしら?」とキャシーが呟く。
ジムはキャシーに叫んだ。
「追いかけよう! 何を企んでいるのか判らないけど、どっちにしろ、碌なことじゃなさそうだ!」
「うん」とキャシーは頷いた。走り出す二人に、アルニとヘロヘロは慌てて付き従う。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
マスターブルー~完全版~
しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。
お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。
ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、
兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ
の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、
反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と
空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。
夜紅の憲兵姫
黒蝶
ライト文芸
烏合学園監査部…それは、生徒会役員とはまた別の権威を持った独立部署である。
その長たる高校部2年生の折原詩乃(おりはら しの)は忙しい毎日をおくっていた。
妹の穂乃(みの)を守るため、学生ながらバイトを複数掛け持ちしている。
…表向きはそういう学生だ。
「普通のものと変わらないと思うぞ。…使用用途以外は」
「あんな物騒なことになってるなんて、誰も思ってないでしょうからね…」
ちゃらい見た目の真面目な後輩の陽向。
暗い過去と後悔を抱えて生きる教師、室星。
普通の人間とは違う世界に干渉し、他の人々との出逢いや別れを繰り返しながら、詩乃は自分が信じた道を歩き続ける。
これは、ある少女を取り巻く世界の物語。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
海を見ていたソランジュ
夢織人
SF
アンジーは火星のパラダイス・シティーが運営するエリート養成学校の生徒。修業カリキュラムの一環で地球に来ていた。その頃、太陽系の星を統治していたのは、人間ではなく、人間の知能を遙かに越えたAIアンドロイドたちだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる