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シルバーの戦い
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まるで光が爆発したようで、ジムもまた、何も見えなくなっていた。
「キャシー、どこだ!」
目を擦り、ジムは両手を前に探るようにして叫ぶ。
「ここよ!」
キャシーの声が聞こえる。ジムはそちらに手を伸ばす。指先に、キャシーの指先を感じ、ジムはがっしりと、キャシーの手を握りしめた。
「目が見えない!」
高い叫び声はアルニのようだ。
「ねえ、どこ? みんなどこにいるの?」
どん、とジムの肩に柔らかなアルニの身体がぶつかってくる。アルニは小さな悲鳴をあげ、夢中になってしがみついてくる。
じりじりとジムは心覚えの記憶を頼りに、後退した。背中が壁につくのを感じ、大きく息を吐く。
やっと網膜に焼きついた斑点が薄れ、ジムは狂おしく、辺りを見回した。キャシーとアルニは青ざめた顔で、ジムの腕にしがみついていた。
立方体の内部は、戦いの真っ最中だった。
原型と〝種族〟の侵攻部隊は、壁面の光の爆発でお互い一瞬、視覚を奪われ、うろうろとさ迷い歩いている。
そのうち視界が戻ってくると、目の前に敵を認め、てんでんばらばらの状態で武器を射ちあったり、あるいは取っ組み合いを始めたりしている。それには統制というものは何もなく、目に付いたら即、戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
壁面は先ほどのような光の爆発は収まったようだが、それでも狂騒的ともいえる光の模様が絶え間なく映し出されている。
壇の上のフリント教授はこの騒ぎの中で、しきりと「やめろ! やめろ!」と叫んでいる。
だが、大声で叫び合う戦闘状態の中では、誰も耳を傾けようとはしない。ただ口がぱくぱくと動いているのが見えるだけだ。
足を何かが掴むのを感じ、視線を下げると、そこにはヘロヘロがガタガタ震えながら、ジムのブーツにしがみついている。
「ヘロヘロ! 無事だったか!」
ヘロヘロはジムを見上げ「うううう!」と言葉にならない唸り声を上げる。
「ぼ、僕、こんなの、苦手なんだよ……」
ヘロヘロの顔色はレモン色から、真っ白になっていた。頭のホイップ・アンテナがびりびりと震えている。
怖ろしい雄叫びに、ジムは顔を上げた。
見ると、シルバーが怒りの表情物凄く、阿修羅のように拳を振り上げ、足を蹴り上げ、当たるを幸い暴れ回っている。
相手は原型だろうが〝種族〟だろうが、まるでお構いなしだ。シルバーは武器を持っているはずなのに、なぜか素手で戦っている。
誰かがレーザーを浴びせた。だが、それはシルバーの衣服を焦がすだけで、まるで平気だ。遂にシルバーの衣服に火が着いた。
ぼっ、と音を立て、シルバーの全身に炎が回った。しかしシルバーは熱さというものを感じないのか、逆に怒りが燃え上がったかのようだ。
ぐっとシルバーは出口を睨みつけた。その視線の先に《弾頭》があった。
シルバーは炎を上げたまま、出口に向かう。
「何をする気なのかしら?」とキャシーが呟く。
ジムはキャシーに叫んだ。
「追いかけよう! 何を企んでいるのか判らないけど、どっちにしろ、碌なことじゃなさそうだ!」
「うん」とキャシーは頷いた。走り出す二人に、アルニとヘロヘロは慌てて付き従う。
「キャシー、どこだ!」
目を擦り、ジムは両手を前に探るようにして叫ぶ。
「ここよ!」
キャシーの声が聞こえる。ジムはそちらに手を伸ばす。指先に、キャシーの指先を感じ、ジムはがっしりと、キャシーの手を握りしめた。
「目が見えない!」
高い叫び声はアルニのようだ。
「ねえ、どこ? みんなどこにいるの?」
どん、とジムの肩に柔らかなアルニの身体がぶつかってくる。アルニは小さな悲鳴をあげ、夢中になってしがみついてくる。
じりじりとジムは心覚えの記憶を頼りに、後退した。背中が壁につくのを感じ、大きく息を吐く。
やっと網膜に焼きついた斑点が薄れ、ジムは狂おしく、辺りを見回した。キャシーとアルニは青ざめた顔で、ジムの腕にしがみついていた。
立方体の内部は、戦いの真っ最中だった。
原型と〝種族〟の侵攻部隊は、壁面の光の爆発でお互い一瞬、視覚を奪われ、うろうろとさ迷い歩いている。
そのうち視界が戻ってくると、目の前に敵を認め、てんでんばらばらの状態で武器を射ちあったり、あるいは取っ組み合いを始めたりしている。それには統制というものは何もなく、目に付いたら即、戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
壁面は先ほどのような光の爆発は収まったようだが、それでも狂騒的ともいえる光の模様が絶え間なく映し出されている。
壇の上のフリント教授はこの騒ぎの中で、しきりと「やめろ! やめろ!」と叫んでいる。
だが、大声で叫び合う戦闘状態の中では、誰も耳を傾けようとはしない。ただ口がぱくぱくと動いているのが見えるだけだ。
足を何かが掴むのを感じ、視線を下げると、そこにはヘロヘロがガタガタ震えながら、ジムのブーツにしがみついている。
「ヘロヘロ! 無事だったか!」
ヘロヘロはジムを見上げ「うううう!」と言葉にならない唸り声を上げる。
「ぼ、僕、こんなの、苦手なんだよ……」
ヘロヘロの顔色はレモン色から、真っ白になっていた。頭のホイップ・アンテナがびりびりと震えている。
怖ろしい雄叫びに、ジムは顔を上げた。
見ると、シルバーが怒りの表情物凄く、阿修羅のように拳を振り上げ、足を蹴り上げ、当たるを幸い暴れ回っている。
相手は原型だろうが〝種族〟だろうが、まるでお構いなしだ。シルバーは武器を持っているはずなのに、なぜか素手で戦っている。
誰かがレーザーを浴びせた。だが、それはシルバーの衣服を焦がすだけで、まるで平気だ。遂にシルバーの衣服に火が着いた。
ぼっ、と音を立て、シルバーの全身に炎が回った。しかしシルバーは熱さというものを感じないのか、逆に怒りが燃え上がったかのようだ。
ぐっとシルバーは出口を睨みつけた。その視線の先に《弾頭》があった。
シルバーは炎を上げたまま、出口に向かう。
「何をする気なのかしら?」とキャシーが呟く。
ジムはキャシーに叫んだ。
「追いかけよう! 何を企んでいるのか判らないけど、どっちにしろ、碌なことじゃなさそうだ!」
「うん」とキャシーは頷いた。走り出す二人に、アルニとヘロヘロは慌てて付き従う。
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