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伝説の星
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予想通り、月の表面には生命の欠片も見当たらず、荒涼とした岩の眺望が広がっているだけだった。
淡々とした眺めに、ジムはついに欠伸を漏らしていた。
「どこまでも、おんなじ眺めだなあ! 右を見ても、左を見ても、岩、岩ばかり……。なーんにも変わったところなんか、ありゃしない……」
「そうでもないわ」
隣のキャシーが前方を見つめ、ぐいとばかりに身を乗り出す。腕を伸ばし、指さす。
「あれを見て御覧なさいよ」
「何だ?」
ジムはキャシーの指差した方向を見た。
平坦な岩の荒野に、ぽつんと小さく何かが太陽の光を反射している。反射の具合から推測して、金属製のようだ。ヘロヘロが手元のコンソールを操作し、モニターに映し出す。
幾つかの機械の残骸が残されていた。
四角張った台座に、針金細工のような脚がついた原始的な宇宙船の一部分。平原に立てられた一本の旗。それらは真空の中、頼りなげに地面に長い影を落としていた。
「あそこに着陸してみるか……」
ジムが操縦桿を握りしめたその時、出し抜けに艦内スピーカーを通し、命令口調の声が聞こえてきた。その声は、男とも女ともつかない中性的なものだった。
「それ以上の接近を禁じる! ここは人類の遺産であり、未来永劫に亘って保存されるべき、聖なる場所なのである!」
ついで《弾頭》の艦体が、がくんと宇宙空間の一点に固定された。ジムは瞬間的に、これが牽引ビームによるものであることを悟っていた。
その場にいた原型の人々の間から、恐怖の叫び声が上がっていた。
ジムは怒りをこめ、立ち上がった。スピーカーを見上げ、怒鳴る。
「誰だ! なぜ禁じられた場所だなんて言うんだ? ビーコンを発信していたのは、あんたじゃないのか?」
声がまた返ってくる。今度は先ほどのような高圧的な調子はなく、穏やかといっていい声音だった。
「失礼した……。そちらが強引に着陸をしようとしたので、非常手段を採らざるを得なかった。いかにもビーコンを送信しているのは、こちらだ。あなたがたは遥々、ここまで来られたのだから教授の客人と考えていいのだろうな?」
キャシーが叫んだ。
「それ、フリント教授のこと?」
「そうだ。ここはフリント教授の秘密を隠した場所である。今、入り口を開ける。そこから進入してもらいたい」
それだけ言うと、声はぷつっと一方的に接続を切ってしまった。慌ててキャシーが「ちょっと待って、聞きたいことが……」と言いかけたが、返答はない。
立ち上がりかけたのをまた座席に腰を下ろす。
頭を振って「訳が判らない」といった顔つきで、ジムを見た。ジムもまた同様で、キャシーを見て頷いた。
ヘロヘロが前方の地面を見て叫んだ。
「見ろよ! あれが入り口じゃないか?」
ヘロヘロの指差した地面がぱっくりと二つに割れ、内部に宇宙船の格納庫らしき場所が顕わになる。
ジムは操縦桿を試した。ちゃんと自由に動く。牽引ビームはなくなっている!
「よし、何が何だか知らないが、向こうが来いというなら行ってみようじゃないか!」
《弾頭》は入り口へと向かう。
淡々とした眺めに、ジムはついに欠伸を漏らしていた。
「どこまでも、おんなじ眺めだなあ! 右を見ても、左を見ても、岩、岩ばかり……。なーんにも変わったところなんか、ありゃしない……」
「そうでもないわ」
隣のキャシーが前方を見つめ、ぐいとばかりに身を乗り出す。腕を伸ばし、指さす。
「あれを見て御覧なさいよ」
「何だ?」
ジムはキャシーの指差した方向を見た。
平坦な岩の荒野に、ぽつんと小さく何かが太陽の光を反射している。反射の具合から推測して、金属製のようだ。ヘロヘロが手元のコンソールを操作し、モニターに映し出す。
幾つかの機械の残骸が残されていた。
四角張った台座に、針金細工のような脚がついた原始的な宇宙船の一部分。平原に立てられた一本の旗。それらは真空の中、頼りなげに地面に長い影を落としていた。
「あそこに着陸してみるか……」
ジムが操縦桿を握りしめたその時、出し抜けに艦内スピーカーを通し、命令口調の声が聞こえてきた。その声は、男とも女ともつかない中性的なものだった。
「それ以上の接近を禁じる! ここは人類の遺産であり、未来永劫に亘って保存されるべき、聖なる場所なのである!」
ついで《弾頭》の艦体が、がくんと宇宙空間の一点に固定された。ジムは瞬間的に、これが牽引ビームによるものであることを悟っていた。
その場にいた原型の人々の間から、恐怖の叫び声が上がっていた。
ジムは怒りをこめ、立ち上がった。スピーカーを見上げ、怒鳴る。
「誰だ! なぜ禁じられた場所だなんて言うんだ? ビーコンを発信していたのは、あんたじゃないのか?」
声がまた返ってくる。今度は先ほどのような高圧的な調子はなく、穏やかといっていい声音だった。
「失礼した……。そちらが強引に着陸をしようとしたので、非常手段を採らざるを得なかった。いかにもビーコンを送信しているのは、こちらだ。あなたがたは遥々、ここまで来られたのだから教授の客人と考えていいのだろうな?」
キャシーが叫んだ。
「それ、フリント教授のこと?」
「そうだ。ここはフリント教授の秘密を隠した場所である。今、入り口を開ける。そこから進入してもらいたい」
それだけ言うと、声はぷつっと一方的に接続を切ってしまった。慌ててキャシーが「ちょっと待って、聞きたいことが……」と言いかけたが、返答はない。
立ち上がりかけたのをまた座席に腰を下ろす。
頭を振って「訳が判らない」といった顔つきで、ジムを見た。ジムもまた同様で、キャシーを見て頷いた。
ヘロヘロが前方の地面を見て叫んだ。
「見ろよ! あれが入り口じゃないか?」
ヘロヘロの指差した地面がぱっくりと二つに割れ、内部に宇宙船の格納庫らしき場所が顕わになる。
ジムは操縦桿を試した。ちゃんと自由に動く。牽引ビームはなくなっている!
「よし、何が何だか知らないが、向こうが来いというなら行ってみようじゃないか!」
《弾頭》は入り口へと向かう。
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