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宇宙に浮かぶ森
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「変ね……」
操縦室の副操縦席から宙森の格納庫を見渡し、原型の少女がぽつりと呟いた。
隣の主操縦席でシルバーは少女を見た。少女は真剣な表情で窓の外を見つめている。
「何が変なのだ?」
「原型の人間が、一人もいないわ」
少女の言葉にシルバーは身を乗り出し、窓に顔を近づけた。
「そうだな……ここにいるのは〝種族〟の連中ばかりだ。原型は一人もいない」
なぜだろう、とシルバーは内心で首を捻っていた。宇宙船が立ち寄るありとあらゆる宇宙港には、かならず原型の人間の姿を見ることができる。例外はない。
宙森の宇宙港管制官の指示で停泊エリアにシルバーは《弾頭》を着陸させ、入港手続きを待っている。
モニターにボーラン人の管理官が映る。最近では、こういった役人仕事は何でもかんでもボーラン人ばかりだ。四角四面で、規則以外のことは一ミリだって、はみ出そうとしない性格が向いているのだろう。
ボーラン人はキチキチと聞こえる声で話し出した。
「そちらの船籍、および船名を確認した。船主はシルバー。それに、同乗する原型の人間がいるな。名前は?」
シルバーは思わず少女を見た。少女は傷つけられた表情になる。
「シルバーさん、あたしの名前を知らないの? 知らないで乗せたの?」
「すまん……」
シルバーは口許をへの字に曲げた。なんてこった! こんなところで、原型の少女と言い合う羽目になるとは……!
「いい、シルバーさん。あたしはアルニって言うのよ。さあ、あのボーラン人に、あたしの名前を教えてあげなさいよ」
唯々諾々とシルバーは従った。ともかくここは、入港許可を貰うことが先決である。
手続きが済み、シルバーはアルニと名乗った少女と一緒に格納庫に降り立った。
アルニは気分を害している表情だ。降り立つと、さよならも言わず、さっさとゲートに向かって歩き去った。
見送ったシルバーは肩を竦め、それきり少女のことは念頭から消え去った。瞬間、思考は切り替わる。
ともかく無事、入港手続きは済んだ。
次にすべきことは決まっている。《呑竜》を探すのだ!
何としてでも〝伝説の星〟の星図を手に入れる。キャシーが隠している場所は、もう見当がついている。
にやりと、シルバーは笑いを浮かべた。
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「何が変なのだ?」
「原型の人間が、一人もいないわ」
少女の言葉にシルバーは身を乗り出し、窓に顔を近づけた。
「そうだな……ここにいるのは〝種族〟の連中ばかりだ。原型は一人もいない」
なぜだろう、とシルバーは内心で首を捻っていた。宇宙船が立ち寄るありとあらゆる宇宙港には、かならず原型の人間の姿を見ることができる。例外はない。
宙森の宇宙港管制官の指示で停泊エリアにシルバーは《弾頭》を着陸させ、入港手続きを待っている。
モニターにボーラン人の管理官が映る。最近では、こういった役人仕事は何でもかんでもボーラン人ばかりだ。四角四面で、規則以外のことは一ミリだって、はみ出そうとしない性格が向いているのだろう。
ボーラン人はキチキチと聞こえる声で話し出した。
「そちらの船籍、および船名を確認した。船主はシルバー。それに、同乗する原型の人間がいるな。名前は?」
シルバーは思わず少女を見た。少女は傷つけられた表情になる。
「シルバーさん、あたしの名前を知らないの? 知らないで乗せたの?」
「すまん……」
シルバーは口許をへの字に曲げた。なんてこった! こんなところで、原型の少女と言い合う羽目になるとは……!
「いい、シルバーさん。あたしはアルニって言うのよ。さあ、あのボーラン人に、あたしの名前を教えてあげなさいよ」
唯々諾々とシルバーは従った。ともかくここは、入港許可を貰うことが先決である。
手続きが済み、シルバーはアルニと名乗った少女と一緒に格納庫に降り立った。
アルニは気分を害している表情だ。降り立つと、さよならも言わず、さっさとゲートに向かって歩き去った。
見送ったシルバーは肩を竦め、それきり少女のことは念頭から消え去った。瞬間、思考は切り替わる。
ともかく無事、入港手続きは済んだ。
次にすべきことは決まっている。《呑竜》を探すのだ!
何としてでも〝伝説の星〟の星図を手に入れる。キャシーが隠している場所は、もう見当がついている。
にやりと、シルバーは笑いを浮かべた。
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