宇宙狂時代~SF宝島~

万卜人

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ジムの打ち明け話

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《鉄槌》の格納庫から一隻の宇宙巡洋艦クルーザーがするすると発進した。
 宇宙船は鋭く尖った船首を持つ、見るからに性能の高そうな巡洋艦である。巡洋艦には《弾頭ウオー・ヘッド》という艦名がついている。
 乗り込んでいるのはシルバーと、もう一人は原型の部下である。部下といっても、あの晩餐会で踊っていた一人で、ジェネレーターを始動させるため必要だからシルバーが乗り込ませているだけである。本来、数百人の要員を必要とする巡洋艦であるが、シルバーは一人で操船するため、ほとんどの部分を自動に任せていた。
 原型は十代後半の少女で、シルバーの隣の副操縦席で退屈そうに欠伸を堪えている。
「ねえ、シルバーさん。まだ超空間ジャンプをしないの? あたしの役目は、ボタンを押すだけでしょ。さっさと終わらせて、船室へ戻りたいわ……」
 シルバーは不機嫌に唸った。
「まだだ! 《呑竜》の航跡を調べ、あいつらがどの星系へジャンプしたか決定してからになる。しばらく黙ってろ!」
「はあい……!」
 少女は詰まらなそうに生返事をする。
 シルバーはコンソールのスイッチを忙しく操作し、《呑竜》のジャンプ先を突き止めようと必死だった。
 自分でやるのは久しぶりで勝手が違い、焦っていた。
《鉄槌》の艦橋で部下に命じて《呑竜》の行き先を突き止めることをシルバーは諦めていた。
 シュレーディンガー航法を続けている《呑竜》のジャンプ先を予測するのは、部下たちには一切できなくなっている。シルバーのように執念に突き動かされていないため、強い確信を持って機器を操作できないからだ。
 必要なのは、揺ぎない確信であり、シルバーには、それがあった。しかし《鉄槌》の艦橋にいるかぎり、部下たちのあやふやな態度にシルバーの確信が影響される。
 それで、この《弾頭》に乗り込み、自ら捜索の任に乗り込んだのである。観測者が一人きりなら、シュレーディンガー航法の影響を最小限に抑えられる。
 重力波検出器が《呑竜》の超空間フィールドの重力場の影響を感知する。シルバーは手早く計算を終え、算出結果に満足の笑みを浮かべた。
 確率分布は《呑竜》が十光年ほど離れた星系にジャンプしたことを示していた。
 随分と近い。
 おそらく《呑竜》は燃料が残り少なくなっているのだ。それで、燃料を補給するために大慌てでジャンプしたのだろう。
 シルバーは少女に命じた。
「ジャンプの用意だ! 超空間ジェネレーターのスイッチを入れろ!」
「合点承知の介でござい!」
 妙な返答をして、少女はスイッチを入れた。
 シルバーの乗り込んだ《弾頭》は、超空間に消えた。
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