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ジムの打ち明け話
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「もともと超空間ワープを可能にする超空間ジェネレーターは原型の発明だって知っているかい?」
キャシーは「当然じゃないの」と頷いた。なにしろ超空間ジェネレーターは原型の人間しか操作できないのだ。操作できない物を、原型以外の〝種族〟が発明する訳がない。
「それなのに、有名な恒星間航路の宇宙船に原型の機長は一人もいない。いや、原型のパイロットさえ、一人もいないんだ! 〝種族〟たちは、原型の人間が操縦席に入るのを嫌がる。ジェネレーターを始動させるときは嫌々、招き入れるけどね、おれは、それが我慢できなかった」
ジムは記憶移植で宇宙パイロットの資格を取得した時のことを思い出した。
記憶移植の担当官は、気難しい顔つきをしたバリン人の技術者だった。どっしりとした身体つきで、無闇と勿体ぶった老人で、寿命は三百年を越えていそうだった。
バリン人は寿命を延ばすため遺伝子を改造し、外見はマダガスカル・ゾウガメのように分厚い皮膚に、どろりと濁った目をしていた。
「お前さん、原型だね? それなのに、どうしてパイロットの資格を欲しがる? 宇宙船に乗りたかったら、宇宙港へ行って、適当な船に乗り込んで船長に同乗させてくれるように頼めばいいのに」
原型は宇宙航路において、特別な地位を占めている。ジェネレーターを始動させるためには、原型の手がどうしても必要なのだ。
そのため、原型はあらゆる宇宙船においてフリー・パスだった。宇宙へ出かけたくなったら、原型は空きがありそうな宇宙船に出かけ、同乗を申し込む。
席に空きがあれば、即座に受理される。乗船料金は必要ない。その気になれば、ジムは洛陽宇宙港から、銀河系のどこへでも気楽に出かけられる身分であった。
バリン人の忠告に、ジムは首を振った。
「おれは、自分の手で宇宙船を操縦したいんだ! 料金は払っているはずだ。さっさと、おれの頭にパイロットの知識を入れろ!」
「お好きなように……」
バリン人の技術者は肩を竦め、ジムに記憶移植を施してくれた。
記憶が確かにジムの頭脳に移植されたか簡単な検査があって、晴れてジムは、パイロットの資格を取得した。その足でジムは、宇宙パイロット募集に応募したのだった。
「ところが……どの宇宙船の船長も、おれが原型だと知ると、断ってきた。宇宙パイロットに原型の人間を雇った前例はない、ってね。パイロットは〝種族〟のみが担う役目だとさ……!」
その時の悔しさを思い出し、ジムは拳を握りしめた。
もっとも、宇宙パイロットになれるのは〝種族〟のどれでも、というわけではない。たとえば芸術家として高名なミューズ人の宇宙パイロットはいないし、極端に低い重力の環境で暮らしているラップ人のパイロットもいない。ラップ人の骨格は、わずかの加速にも耐え切れないほどか細い。ラップ人が宇宙を旅するときは、特別性の低重力環境を再現した船室が用意される。
キャシーのように個人で宇宙船を所有している原型だけが、僅かな例外であった。
ジムの話がミューズ人のビーチャに結婚を申し込んだエピソードに移ると、いきなりキャシーは爆笑した。
「あんた、そんなんでプロポーズしたの? それで断られた。当ったり前よお! もう、本当に信じられない……」
つくづく呆れた、というようにキャシーは首を振り、くつくつと笑いを続けている。
かっとなって、ジムは叫んだ。
「おれのことは、もういいだろう? すっかりおれは自分のことを話したんだ。今度は君の番だ。どうしてシルバーは、君を追いかけているんだ?」
キャシーは静かな表情になった。
目を据え、話し出す。
「いいわ、話してあげる。なぜシルバーがあたしを……いや、《呑竜》を追いかけるか」
キャシーは「当然じゃないの」と頷いた。なにしろ超空間ジェネレーターは原型の人間しか操作できないのだ。操作できない物を、原型以外の〝種族〟が発明する訳がない。
「それなのに、有名な恒星間航路の宇宙船に原型の機長は一人もいない。いや、原型のパイロットさえ、一人もいないんだ! 〝種族〟たちは、原型の人間が操縦席に入るのを嫌がる。ジェネレーターを始動させるときは嫌々、招き入れるけどね、おれは、それが我慢できなかった」
ジムは記憶移植で宇宙パイロットの資格を取得した時のことを思い出した。
記憶移植の担当官は、気難しい顔つきをしたバリン人の技術者だった。どっしりとした身体つきで、無闇と勿体ぶった老人で、寿命は三百年を越えていそうだった。
バリン人は寿命を延ばすため遺伝子を改造し、外見はマダガスカル・ゾウガメのように分厚い皮膚に、どろりと濁った目をしていた。
「お前さん、原型だね? それなのに、どうしてパイロットの資格を欲しがる? 宇宙船に乗りたかったら、宇宙港へ行って、適当な船に乗り込んで船長に同乗させてくれるように頼めばいいのに」
原型は宇宙航路において、特別な地位を占めている。ジェネレーターを始動させるためには、原型の手がどうしても必要なのだ。
そのため、原型はあらゆる宇宙船においてフリー・パスだった。宇宙へ出かけたくなったら、原型は空きがありそうな宇宙船に出かけ、同乗を申し込む。
席に空きがあれば、即座に受理される。乗船料金は必要ない。その気になれば、ジムは洛陽宇宙港から、銀河系のどこへでも気楽に出かけられる身分であった。
バリン人の忠告に、ジムは首を振った。
「おれは、自分の手で宇宙船を操縦したいんだ! 料金は払っているはずだ。さっさと、おれの頭にパイロットの知識を入れろ!」
「お好きなように……」
バリン人の技術者は肩を竦め、ジムに記憶移植を施してくれた。
記憶が確かにジムの頭脳に移植されたか簡単な検査があって、晴れてジムは、パイロットの資格を取得した。その足でジムは、宇宙パイロット募集に応募したのだった。
「ところが……どの宇宙船の船長も、おれが原型だと知ると、断ってきた。宇宙パイロットに原型の人間を雇った前例はない、ってね。パイロットは〝種族〟のみが担う役目だとさ……!」
その時の悔しさを思い出し、ジムは拳を握りしめた。
もっとも、宇宙パイロットになれるのは〝種族〟のどれでも、というわけではない。たとえば芸術家として高名なミューズ人の宇宙パイロットはいないし、極端に低い重力の環境で暮らしているラップ人のパイロットもいない。ラップ人の骨格は、わずかの加速にも耐え切れないほどか細い。ラップ人が宇宙を旅するときは、特別性の低重力環境を再現した船室が用意される。
キャシーのように個人で宇宙船を所有している原型だけが、僅かな例外であった。
ジムの話がミューズ人のビーチャに結婚を申し込んだエピソードに移ると、いきなりキャシーは爆笑した。
「あんた、そんなんでプロポーズしたの? それで断られた。当ったり前よお! もう、本当に信じられない……」
つくづく呆れた、というようにキャシーは首を振り、くつくつと笑いを続けている。
かっとなって、ジムは叫んだ。
「おれのことは、もういいだろう? すっかりおれは自分のことを話したんだ。今度は君の番だ。どうしてシルバーは、君を追いかけているんだ?」
キャシーは静かな表情になった。
目を据え、話し出す。
「いいわ、話してあげる。なぜシルバーがあたしを……いや、《呑竜》を追いかけるか」
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