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スイート・ホーム
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フラッシュのような眩しい光の爆発に、ジムはぎゅっと目を閉じていた。
恐る恐る薄目を開け、強烈な光に目を慣らしていく。
ぴちゅぴちゅぴちゅ……と、小鳥の声が聞こえてくる。一面の緑、ここは森の中だ。
宇宙船の中に、森?
全長五十キロにもなろうかという巨大な小惑星である。その小惑星に艦橋や、超空間ジェネレーター、無反動スラスターを備え付けた戦艦であるから、森の一つくらい内部を刳りぬいた中に存在してもおかしくはない。
それにしても、予想もしなかった光景にジムは驚いた。
空は、ぎらぎらとした光に覆われている。壁面が発光しているのだろう。太陽は見えないが、昼間の光を再現していることは直感で分かる。
隣でヘロヘロが、ぽかんと口を開けていた。
「凄いや……」
ジムの耳は微かな水音を捉えていた。水音に誘われて歩いていくと、森の中に小川が流れているのが判る。
覗き込むと、日差しに銀鱗がきらりと光り、小魚がつんつんと小石についた苔を突っついている情景が見えた。
ジムはずっと首都洛陽シティで育ってきた。だから、こんな自然を目の当たりにするのは初めてである。
振り仰ぐと、圧し掛かるような大木が聳え、枝を四方に伸ばして空からの光りを一杯に受けている。緑の葉むらの裏側がエメラルド・グリーンに光っている。
さっと枝から枝へ目にも止まらぬ速さで小動物が走っていく。
栗鼠だ……。
子供のころにホロ図鑑でしか見た記憶のない動物である。動きがあまりに素早く、はっきりとは見定めることはできないが、確かに栗鼠だ。
歩いていくと、唐突に前方の視界が開ける。森を抜けたのである。
日差しに揺れる金色の穂、麦畑だ!
なだらかな草原と、糸杉の小道。典型的な田舎の風景である。遠景に山脈が迫り、ここが小惑星の内部であることを忘れさせる。
ジムの目は丘の上に建つ、小さな家を認めていた。赤い屋根瓦、白い壁。切妻屋根には、風見鶏が付いていた。
と、ヘロヘロがとととと……と、足を速めた。
「どうしたヘロヘロ!」
「キャシーだ! 近くにいる!」
ヘロヘロは叫び返した。
恐る恐る薄目を開け、強烈な光に目を慣らしていく。
ぴちゅぴちゅぴちゅ……と、小鳥の声が聞こえてくる。一面の緑、ここは森の中だ。
宇宙船の中に、森?
全長五十キロにもなろうかという巨大な小惑星である。その小惑星に艦橋や、超空間ジェネレーター、無反動スラスターを備え付けた戦艦であるから、森の一つくらい内部を刳りぬいた中に存在してもおかしくはない。
それにしても、予想もしなかった光景にジムは驚いた。
空は、ぎらぎらとした光に覆われている。壁面が発光しているのだろう。太陽は見えないが、昼間の光を再現していることは直感で分かる。
隣でヘロヘロが、ぽかんと口を開けていた。
「凄いや……」
ジムの耳は微かな水音を捉えていた。水音に誘われて歩いていくと、森の中に小川が流れているのが判る。
覗き込むと、日差しに銀鱗がきらりと光り、小魚がつんつんと小石についた苔を突っついている情景が見えた。
ジムはずっと首都洛陽シティで育ってきた。だから、こんな自然を目の当たりにするのは初めてである。
振り仰ぐと、圧し掛かるような大木が聳え、枝を四方に伸ばして空からの光りを一杯に受けている。緑の葉むらの裏側がエメラルド・グリーンに光っている。
さっと枝から枝へ目にも止まらぬ速さで小動物が走っていく。
栗鼠だ……。
子供のころにホロ図鑑でしか見た記憶のない動物である。動きがあまりに素早く、はっきりとは見定めることはできないが、確かに栗鼠だ。
歩いていくと、唐突に前方の視界が開ける。森を抜けたのである。
日差しに揺れる金色の穂、麦畑だ!
なだらかな草原と、糸杉の小道。典型的な田舎の風景である。遠景に山脈が迫り、ここが小惑星の内部であることを忘れさせる。
ジムの目は丘の上に建つ、小さな家を認めていた。赤い屋根瓦、白い壁。切妻屋根には、風見鶏が付いていた。
と、ヘロヘロがとととと……と、足を速めた。
「どうしたヘロヘロ!」
「キャシーだ! 近くにいる!」
ヘロヘロは叫び返した。
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