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第二十章 悪役令嬢VS悪役令嬢!?

115本目

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「ご機嫌ようアーリャ様」

「ご機嫌よう」

「アーリャ様、ご機嫌よう……新作のスィーツとても美味しかったです」

「ご機嫌よう……お口に合って何よりでした」

 新学期、わたしの年齢も一つ上がって大人のレディに一歩近づいた。今は校舎に向かう広い通路で顔見知りの貴族令嬢達と挨拶しながらゆっくりと歩いている。

「アーリャさん、ご機嫌よう」

「ご機嫌よう、良い春休みは過ごせましたか?」

「あら、ベスさんにヘレナさん。ご機嫌よう……お休みは領都のお仕事で終わってしまいました」

「「まぁ」」

 去年同じクラスだった仲良しのお友達と楽しくお話ししながらの一時……今この時点でわたしは悪役令嬢じゃ無いのです。願わくばこの時間が長く続くと良いんだけどね。

「あら、あなたは成り上がり男爵家のアーリャさんじゃありませんか」

「……ご機嫌ようセーラーさん、それでは失礼します」

 朝から会いたくない人と会っちゃったよ。変に絡まれるのも嫌なのでわたし達はささっとその場を去ろうとする……

「ちょっと、何を立ち去ろうとしているの! 男爵家が無礼だわ!! 私は子爵家の令嬢なのよ!!」

 ……しかし、回り込まれた。

 面倒くさいよ~相変わらず爵位マウントを取ってくる子だよね。面倒だけど悪役令嬢をやるって決めたからにはちゃんと対応しないと。わたしは透かさず孔雀の扇をバッと開く。

「あら奇遇ですね……わたしアルダーク家はこの度、伯爵の位を王国から承りました」

「なっ!? そんなの嘘よ!!」

「嘘をつく必要性など感じませんね、お疑いでしたらお調べになられたら?」

 領地の運営のついでに捕らえた大量の間諜スパイ。そこからもたらされる情報は大いに王国へ貢献する物だった。その功績に子爵を飛び越えてアルダーク家は伯爵となったのでした。

「まぁ、そうでしたのアーリャさ……いえ、アーリャ様」

「嫌だわ、学院では身分は関係ないですよ。それにわたし達はお友達でしょう? 今まで通りに呼んで下さい」

「アーリャさん……嬉しいわ」

 わたしの身分が変わった事に二人とも態度を変えようとしていたけれど、変わらずなかよく出来そうで良かった。そのままわたし達は三人仲良く校舎へ向かったのでした……呆然と立っているセーラーさんを置いて。


「また皆さんと一緒のクラスで嬉しいです」

「私もよ……きっと楽しい一年になりそう」

「本当ですね。とても楽しみです」

 裏工作は抜かりないよ。もちろん生徒達の成績もあるけれど授業態度や色々なデータを元に教師陣に働き掛けて仲の良いお友達は一緒のクラスになるようにしたのでした。そしてその結果……

「やぁ、アーリャ。久しぶりだな、元気にしていたか?」

「マクシス様!! はい、いまとっても元気になりました!!」

 ……まーくんと一緒のクラスなのです!! やったね!! これから一年は素敵なものになるに違いないよ。ううん、一年とは言わず卒業するまで一緒のクラスになるように頑張っちゃうもんね。あわよくば卒業後も一緒に入れるように……それはつまり……やだ~も~!

「どうしたんですかアーリャさん、頬を押さえてクネクネされて?」

「身体の調子が悪いの?」

「な、なんでもないです。調子はとても良いですよ」

「そうか、新学期一日目は良いスタートを切りたいからな」

 あぶないあぶない、思わず二人のラブラブ新婚生活にまで想像が及びそうになったよ。まぁ、これは前世からのルーティーンだからしょうがないよね。
 わたし達は教室へ入ると見知った顔の生徒も何人かいる。互いに挨拶をしながら春休み中の話題に花を咲かせた。

「そろそろ時間ですね。席に着きましょう」

 皆が指定された席に着くと……残念ながら隣はまーくんではなかった。その隣の席は誰もいない。むむむ、何とかしてあの席を確保出来ない物か考えていると担任の先生がやって来た。クラス担任の挨拶とこれからの予定などが簡単に説明された。すると、突然入り口の扉が開くと誰かが入ってきた……え? 学院長? 担任も知らないようで驚いている。

「驚かせてすまなかった。すまないが、急遽このクラスへ一人生徒が追加となる……入ってきなさい」

 学院長の合図と共に一人の女子生徒が教室に入ってきた……え? どういうこと?

「彼女は去年までは経済学部で勉学に励んでいたが、この春、侯爵家の養女となり貴族学部に編入することになった……自己紹介をなさい」

「初めまして皆様……この度、侯爵であるフォートゥレイ家の養女となりましたキャレルと申します」



 な、なんですってーーーーーっっっっ!!!??
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